本と絵画とリベラルアーツ

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本の紹介-文学・評論

【本屋大賞】瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

オススメ度:★★★★★★ 会うべき人に出会えるのが幸せなのは、夫婦や恋人だけじゃない。この曲を聴くと、それがよくわかる。(p.250) 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』 あらすじ 親の都合により、高校卒業までに苗字が3回変わり家族の形が7回変わってきた…

【ドキリとする小説】辻村深月『傲慢と善良』【ネタバレ注意】

オススメ度:★★★★★ 誰かに話を聞いてほしかった。慰めてほしかった。架くんとその女友達をひどいと言って、一緒に怒ってほしかった。(p.354) 辻村深月『傲慢と善良』 本書のエッセンス・「ドキリ」とさせられる小説・緻密な人物描写が秀逸 あらすじ 結婚披露…

【現実と空想のあいだ】芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』

オススメ度:★★★★☆ 芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』 本書のエッセンス・芥川の児童文学短編集・現実とファンタジーの間を楽しめる あらすじ 御釈迦様がご慈悲でたらした一筋の蜘蛛の糸にすがりつくカンダタと群がる無数の罪人らを通してエゴイズムをえがいた…

【プロレタリア文学】小林多喜二『蟹工船・党生活者』

オススメ度:★★★★★ 「おい、地獄さ行ぐんだで!」(p.8) 小林多喜二『蟹工船・党生活者』 本書のエッセンス・迫力ある地獄の描写・生々しいむき出しの資本主義が感じられる あらすじ<蟹工船> 漁船であり、工場でありそしてそのどちらの規制からも掻い潜ったド…

【スピーチの極意】原田マハ『本日は、お日柄もよく』

オススメ度:★★★☆☆ 不思議なことに、そのあとは、もう立ち止まらなかった。(p.95) 原田マハ『本日は、お日柄もよく』 本書のエッセンス・スピーチの極意・女性の王道サクセスストーリー あらすじ 老舗製菓メーカー「トウタカ製菓」の普通のOLである二ノ宮こ…

【第170回芥川賞受賞作】九段理江『東京都同情塔』

オススメ度:★★★★☆ 民主主義に未来を予測する力はない。未来を見ることはできない。私には未来が見える。(p.10) 九段理江『東京都同情塔』 あらすじ 舞台は現代の日本から少しだけ別れたパラレルワールドで近未来。 ザハ・ハディドの新国立競技場が建設され…

【本の紹介】J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

オススメ度:★★★☆☆ それに、僕もいくらか休暇がほしかったし。神経がすり切れちまってたんだもの。ほんとだよ。(p.82) J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』 あらすじ 単位を落としペンシルヴァニアの高校を退学となったホールデン・コールフィールド…

【芥川賞受賞作品】鈴木結生『ゲーテはすべてをいった』

オススメ度:★★★★☆ それは許されないことだった。今まで統一が学者として積み重ねてきたものを一遍に崩壊させかねないことだ。(p.93) 作者『ゲーテはすべてをいった』 あらすじ 独文学者・博把統一は自身の結婚記念日に娘に招待してもらった食事会で、偶然テ…

【本の紹介】町田そのこ『ドヴォルザークに染まるころ』

オススメ度:★★★★☆ 「お義母さん、ほら見て。クロコンドルの巣が焼けてます。だから、大丈夫。行きましょう」(p.171) 町田そのこ『ドヴォルザークに染まるころ』 本書のエッセンス・廃校前の最後の秋祭りが部隊・生々しい母親たちの会話と心情・他人からの印…

【普通なる人の使命について】角田光代『タラント』

オススメ度:★★★★☆ 挫折したら、そうしたらまた、ちいさな私たちの使命をさがそう。(p.551) 角田光代『タラント』 本書のエッセンス・発展途上国ボランティアにのめりこんだ学生時代のみのり・義足の祖父、不登校の甥、若きパラアスリート・点と点がつながり…

【新潮文庫の100冊】西加奈子『白いしるし』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★☆☆ そのダメージのたびに、私は体重を失い、動けなくなった。十代の頃のように、その土地から逃れることはしなかったが、魂が体から抜け、アフリカやヨーロッパや南極まで容易に飛んでいった。(p.22) 西加奈子『白いしるし』 本書のエッセン…

【オススメ】中村航『星に願いを、月に祈りを』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★★★ 〝いいかい? 君はいつの日か、君が本当に届けたい人に、本当に届けたい何かを届けるんだ〟 中村航『星に願いを、月に祈りを』 本書のエッセンス・青春夏小説・村上春樹:角田光代 = 2:8・夢と現実が同時にあるような読書体験 あらすじ …

【新潮文庫の100冊】角田光代『さがしもの』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★☆☆ 本を読まない人を好きなの?(p.73) 角田光代『さがしもの』 本書のエッセンス・本にまつわる短編集・本とのかかわりは人それぞれ・気軽な気持ちで楽しんで最後まで読める あらすじ 古本屋に持ち込むと「あんたこれ売っちゃうの?」と訊か…

【芥川賞受賞作】西村賢太『苦役列車』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★★★ 西村賢太『苦役列車』 本書のエッセンス・不条理な階級による差異が浮き彫りになっている・身体性を帯びた迫力ある文章 あらすじ 中学を卒業するとそのまま家を出て、19歳になる今日まで東京で日雇い労働者として生きる北町貫多。 プライ…

【青春小説の傑作】氷室冴子『海がきこえる』【感想】

オススメ度:★★★★☆ 「拓ってへんな人ね。どうして、そんなつまらんないこと知ってるの」(Ⅱp.308) 氷室冴子『海がきこえる』 本書のエッセンス・最高の青春小説・ワガママな里伽子が魅力的 鈴木敏夫とジブリ展にて 先日、横須賀美術館で開催されていた「鈴木…

【本好きならきっと共感できる】島田潤一郎『長い読書』

オススメ度:★★★★★ でも若い僕にとっては、文体こそがすべてだった。(p.69) 島田潤一郎『長い読書』 本書のエッセンス・読書好きの気持ちが見事に言語化されている・小説はつくり話だとバレてはいけない・好み過ぎる文体 感想 みすず書房といえば人文学書の…

【成瀬が帰ってきた】宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』

オススメ度:★★★★☆ 「わたし以上の適任者はいないと思ったからだ」(p.114) 宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』 本書のエッセンス・成瀬のカリスマで周囲が変わっていく話・前作同様、爽快さを感じられる読み味 あらすじ 北川みらいはときめき小学校に通う4年…

【本屋大賞受賞作】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』【最高の夏小説】

オススメ度:★★★★☆ 「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」(p.6) 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』 本書のエッセンス・『キケン』を彷彿とさせる青春夏小説・真っ直ぐな異端児・成瀬を内と外から描いている・全編通して爽やかな読み味 あらすじ …

【本の紹介】一條次郎『ざんねんなスパイ』

オススメ度:★★★★☆ 一條次郎『ざんねんなスパイ』 本書のエッセンス・ドタバタ劇系・73歳の実務未経験のスパイが市長暗殺を命じられる 感想 73歳でこれまで一度もミッションに呼ばれたことないスパイ・ルーキーが、二ホーン国のある市長の暗殺を命じられるが…

【本の紹介】太宰治『津軽』

オススメ度:★★★☆☆ いつ死ぬかわからんし、などと相手に興覚めさせるような事は言えなかった。(p.172) 太宰治『津軽』 本書のエッセンス・太宰の死の4年前に書かれた・故郷津軽をめぐる・真の目的は母代わりの"たけ"と人生の最後に会うこと たった一つの旅の…

【諦めかけたあなたへ】太宰治『走れメロス』【感想】

オススメ度:★★★★★ 私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!メロス。(p.177) 太宰治『走れメロス』 著者:太宰治(1909〜1948) 東京帝国大学仏文科中退。本名は津島修司。自殺未遂、麻薬中毒と破滅的な生活を送りながら作品を次々に執…

【本の紹介】太宰治『ヴィヨンの妻』

オススメ度:★★★★☆ 「僕はね、キザのようですけど、死にたくて、仕様が無いんです。生れた時から、死ぬことばかり考えたいたんだ。皆んなのためにも、死んだ方がいいんです。それはもう、たしかなんだ。それでいて、なかなか死なない。へんな、こわい神様み…

【本の紹介】村上春樹『女のいない男たち』

オススメ度:★★★☆☆ なされなかった質問と、与えられなかった回答。彼は火葬場で妻の骨を拾いながら、無言のうちに深くそのことを考えていた。(「ドライブ・マイ・カー」p.36) 村上春樹『女のいない男たち』 著者:村上春樹(1949~) 京都府京都市生れ。早稲田…

【芥川賞受賞作】市川沙央『ハンチバック』

オススメ度:★★★★☆ 市川沙央『ハンチバック』 あらすじ 私の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。 その不自由な身体ゆえ、社会から疎外され生きる私の社会との接点は、コタツ記事のライターの仕事と通信大学、そして親が遺してくれたグループ…

【本の紹介】大江健三郎『芽むしり仔撃ち』【あらすじ】

オススメ度:★★★★☆ 「いいか、お前のような奴は、子供の時分に締めころしたほうがいいんだ。出来ぞこないは小さい時にひねりつぶす。俺たちは百姓だ、悪い芽は始めにむしりとってしまう」(p.218) 大江健三郎『芽むしり仔撃ち』 あらすじ 第二次世界大戦の終…

【読書感想】辻村深月『家族シアター』【あらすじ】

オススメ度:★★★★☆ 辻村深月『家族シアター』 著者:辻村深月(1980~) 山梨県石和町生れ。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2018年に『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。ペンネームの「辻…

【あらすじ】ヘミングウェイ『老人と海』【感想】

オススメ度:★★★☆☆ 「あれを持ってくるんだった」そういうものはたくさんある、と老人は思った。だが、持ってこなかったんだよな、じいさん。ま、ない物を嘆いたところで仕方がない。あるもので何ができるかを考えるこった。(p.117) ヘミングウェイ『老人と…

【解説】村上春樹『1973年のピンボール』【感想】

オススメ度:★★★☆☆ しかしピンボール・マシーンはあなたを何処にも連れて行きはしない。リプレイ(再試行)のランプを灯すだけだ。リプレイ、リプレイ、リプレイ……、まるでピンボール・ゲームそのものがある永劫性を目指しているようにさえ思える。 村上春樹『…

【夏にオススメ】村上春樹『風の歌を聴け』【感想】

オススメ度:★★★★☆ 37度っていえば一人でじっとしてるより女の子と抱き合ってた方が涼しいくらいの温度だ。(p.55) 村上春樹『風の歌を聴け』 著者:村上春樹(1949~) 京都府京都市生れ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年『風の声を聴け』で群像新人賞を受賞…

安部公房『砂の女』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★★☆ 穴の中にいながら、すでに穴の外にいるかのようなものだった(p.261) 安部公房『砂の女』 著者:安部公房(1924~1993) 本名は安部公房(きみふさ)。東京府生れ。東京大学医学部卒業。誕生後すぐに家族で満州に渡り、旧成城高等学校(現成城…