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【本の紹介】恩田陸『蜜蜂と遠雷』【感想】

オススメ度:☆☆☆☆☆

久々に恩田陸さんの小説を読んだ。

前に高校生の時に読んだ『夜のピクニック』以来、数年ぶりに読んだ。

 

www.artbook2020.com

 

調べてみると『寄るのピクニック』も『蜜蜂と遠雷』も本屋大賞を受賞した作品らしく、いいとこどりしてしまったなというもったいなさがある。どちらもとても面白かったので是非とも他の作品も読んでみたい。

 

 

あらすじ

舞台は優勝者がのちのコンクールで結果を残してきていることから、近年評価を伸ばしてきている芳ヶ江国際ピアノコンクール。 

 

5ヶ国で行われたオーディションのうち、パリ会場の審査員を担当していた嵯峨三枝子は突如現れた型破りな天才・風間塵に衝撃を受ける。彼は2ヶ月前に逝去した大物音楽家・ホフマンの愛弟子であった。

 

この年に行われた芳ヶ江国際ピアノコンクールには風間をはじめとし、消えた天才少女・栄伝亜夜やジュリアードの王子様と呼ばれるマサル・カルロス、そして妻子持ちのサラリーマン・高島明石が集い、さまざまなドラマが生み、交錯しながら最後には劇的な結末を迎えることとなる。

 

 

感想

≪恩田陸の真骨頂≫

恩田陸はなんといっても本全体の世界観、登場人物の世界観をそれぞれ創り出すのがうまい。またそれらを一つの世界に配置するときも、決して水彩絵の具に新しい色を落とした時のように濁り混ざることなく、それぞれの登場人物の世界観を保ったまま全体の調和が保たれている

 

登場人物それぞれの視点にドラマがあり、それらは同じ時間・空間で起こっていることながら全然違って見える。

 

登場人物の世界が交わるわずかな領域はまるでファンタジーで、そこに出てくるどの登場人物にも感情移入できるため物語の壮大さと物語に対する愛着が増していく。

 

 

≪浮かんでくるキャラクター像≫

恩田陸の作品を読んでいるとキャラクターの全体像がありありと浮かんでくる。まるで前から知っていたかのような、ずっとその人を知っているかのような気持ちにさえなってくる。

 

他の方とどこまでイメージを共有できるか分からないけれど、自分なりに浮かんできたイメージをまとめてみた。

 

風間塵:身長はやや低く、髪型は毛量の多い黒髪がところどころはねている。瞳は大きくキレイで、見ていると吸い込まれそうな色をしている。耳が大きい。普段は服に着られているような印象を受けるが、ピアノを弾いている間はその存在感から服も彼のために仕立て上げられたかのようにぴったりになる。寝起きがいい。

栄伝亜夜平均より少し高い身長に、一般人離れはしない程度にすらっとしたスタイル。髪はほんのり明るい黒で、腰ほどまで伸びたその髪は艶から若さを感じさせる。口元は軽くきゅっと閉まっている。気を抜くと猫背になりそうだが、基本的にはいい姿勢を保っている。赤いヒールと黒ドレスがよく似合う。化粧映えする顔。

 

マサル・カルロス王子様。高い身長でスタイル抜群。普段は愛想のいい笑い方をしているが一人の時や考え込んでいる時には年の割に貫録のある顔を見せる。手が大きく、指がきれい。一人の時間がないと耐えられない。

 

高島明石日本人にしては身長も高く、スタイルもいい方だが学生時代と比べるといくらか太った。大きくて厚みのある優しい手をしている。メガネ。落ち着いた緑や茶色など秋を思わせる色が好きで、服もこれらの色が多い。食べ物の好き嫌いは少ない方で特に焼き魚が好き。

 


映像だけでなく音楽さえ浮かんできて、まさに映画を見ているような感じだった。知らない曲は頭が勝手なクラシックを割り当てて流れていたが、もしもっとクラシックの知識があれば楽しめたのかなと思う。

さすがは本屋大賞らしく、誰が読んでも面白いと思える作品であった。

10月には映画も公開されるということで、そちらにも注目していきたい。