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本と絵画の解説

【本の紹介】村上春樹『ノルウェイの森』【あらすじと感想】

オススメ度:☆☆☆☆☆☆

発行部数上下巻合わせ1000万部越えの村上春樹の大ベストセラーです。

心が壊れる崖っぷちを生き、交わる人たちの姿に胸がいっぱいになりました。読み終わった後しばらく世界から出られずぼーっとしていました。

 

この本をオススメしたい人

・20歳前後の人
・秋の夜長に所在ない人

 

村上春樹『ノルウェイの森』

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)

 

 著者:村上春樹(1949~)

早稲田大学卒。1979年『風の歌を聞け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1987年の『ノルウェイの森』が大ベストセラーに。主な作品に『海辺のカフカ』『1Q84』等。

 

あらすじ

ハンブルク空港に着陸した飛行機の中で、37歳の僕は聞こえてきたビートルズの「ノルウェイの森」にひどく狼狽した。やがて僕は徐々に薄らいでいた学生時代のことを思い出し始めた。

 

1968年、僕は18のときに神戸から東京に出てきて学生寮で暮らしながら大学に通っていた。その年の5月のある日、僕は中央線の中で直子に出会った。直子は僕の親友キヅキの幼馴染で、キヅキの恋人だった。キヅキは高校三年生の5月、僕とビリヤードをやった晩に理由も分からないまま自殺してしまった。

僕は直子とデートを重ね、彼女の20歳の誕生日に寝た。その直後直子は突如アパートを引き払い、姿を消した。 彼女は精神を病み京都の療養所で生活を送るようになっていた。

 

僕が大学の講義の後レストランで食事をしていると、見覚えのない女の子が話しかけてきた。彼女は名前を緑と言い、講義のノートを見せてほしいとのことだった。僕は緑と段々と親しくなっていく。彼女もまた複雑な事情を抱えていた。

 

近しい人の消失・死や寂しさに揉まれながら、いかにして僕は生きる活路を見出していくのか。

 

 

感想

上巻を読んだ時点での感想としてはなんだか薄暗い雰囲気が流れているなと思いました。(村上龍よりは波があるなと感じました。)

僕はどこか晴れない、自分が何者かわからないような中で日常生活を送っているようです。登場人物も何もかも話しているようだけど、ちっとも風通しが良くなくて、自分でも気付いていない本当のことがまだあるように思えます。

 

僕は直子と緑、どちらのことも好きでした。辛い中でも気丈に振る舞う緑には愛らしさと居心地の良さを感じ、一方でキヅキの死という鎖でつながれた直子とも離れられずにいました。普通であればただの三角関係になっていたところを、彼らの背に死や不幸を背負わせることで事態は複雑化していきます。

 

物語が進むにつれ気持ちは複雑に絡み合い、雰囲気もどんよりと重くなっていきます。誰が悪いわけでもなく、時に利他的に時にわがままに振る舞う姿にはどれもこれも共感できました。人間は人のためにも自分のためにも生きられるのだと思いました。緑の素直で面倒くさいわがままも可愛いと思って読んでいました。

 

終盤に近づくと、まるで耐えられないような「僕」の気持ちの沈みに、読んでいる私も胸が苦しくなってきました。最後の最期でどうしようもなかった曇天が晴れると、今まで詰まっていたものがすっきりと消え、清々しい気持ちになりました。

 

村上春樹の作品を初めて読みましたが、文はとても読みやすく、ユーモアも満載でハルキストの気持ちがちょっとだけわかった気がします。

私は学生運動全盛の1969年という激動の年にたびたび惹かれています。1969年は宗田理『僕らの七日間戦争』(に出てくる親世代)や村上龍『69』にも出てきます。どこか冷めてしまったこの時代に、1969年という年は私にあこがれを感じさせるのです。