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【あらすじ】太宰治『人間失格』【オススメの本】

オススメ度:★★★★★

「世間というのは、君じゃないか」

太宰治の代表作の一つで累計で1000万部を超えるとされる大ベストセラー『人間失格』。

 

その死さえ軽く感じられるほどの堕落ぶりは共感できる人と、後味悪く感じる人に二分されると思います。

 

まだ読んでないという人は、是非あらすじだけでも読んでいってみてください!

 

太宰治『人間失格』

著者:太宰治(1909〜1948)

東京帝国大学仏文科中退。本名は津島修司。自殺未遂、麻薬中毒と破滅的な生活を送りながら作品を次々に執筆。1948年未完の『グッド・バイ』を残し愛人と玉川上水にて入水自殺した。

 

 

あらすじ

幼少期に性的虐待を受け性格の歪んでしまった葉蔵は、自分の気持ちも人間の二面性も理解できず道化を演じることでしか人間社会との関わることができなくなった。

 

学校へ上がった葉蔵は道化を続けることによって「尊敬」を集めてきたが、見下していた竹一という男に道化を見破られる。そして竹一は葉蔵に「お前はきっと、女に惚れられるよ」「お前は偉い絵描きになる」という二つの予言を残す。

 

葉蔵は都会に出て堀木という男に出会った。堀木は葉蔵に酒や煙草、淫売婦や左翼思想を教えた淪落した男だった。この人間の営みから外れた同士の付き合いは、以後長く続くことになる。

淫売婦と遊んでいるうちに葉蔵は女達者という匂いが付き纏い、不本意にもモテるようになる。葉蔵はカフェで知り合ったツネ子という女と入水自殺を図ったが、葉蔵だけが生き残ってしまった

 

その後は酒を飲み明かしながら女の家を転々とし、やがて「処女性」をもったヨシという年下の女と知り合う。葉蔵は「もう酒は辞める」と言い、彼女の処女性に何かを期待しヨシとの結婚を決めた。

 

ヨシと結婚してからも献身的な妻をよそに堀木と酒を飲んではつまらない時間を過ごす生活を送る。そんな中葉蔵はたまたまヨシが隠し持っていた薬を見つけ服毒自殺を図るが、未遂におわる

ある日ヨシが他の男と寝ているところを見つけてしまい、とてつもない恐怖に襲われる。耐えられなくなった葉蔵はモルヒネに頼るようになり、入院が決まる。

 

病棟に連れて行かれ、鍵を下ろされそこで初めて気づいた。自分は狂っていると思われていたのだと。すなわち、人間、失格。こうして悟った葉蔵は本当の廃人になってしまうのでした。

 

 

感想

死んだら終わりだとよく言われますが、この小説を読んでいると早く殺してくれとさえ思います。

 

この小説は「恥の多い人生を送ってきました…」という書き出しで始まります。

『人間失格』の主人公 葉蔵の自殺、すなわち自分への殺意の動機は憎しみでも厭世的なのでもなく「恥」でした。

 

恥ずかしいとき「穴があったら入りたい」とよく言いますが、葉蔵の恥はそんなものでは隠しきれません。「地獄があったら入りたい」と言わんばかりの、行為に対する恥に留まらぬ人生に対する恥でした。

 

この小説を読み、はたして自死を果たそうとしている人間に対して止めることが正しいのか分からなくなりました。もし金銭的に苦しいのならば支援することができますし、人間関係に疲れたならばどこか遠くに行くことで逃れることもできます。

 

しかし恥はそうはいきません

恥というのは自己に内在するものですから、どこへ逃げようともついてきますし、何か他のもので埋めることもできません。どこまでも自分の人生とともにあり続けます。

 

そんな生きることさえ耐えがたいような恥を抱えた人間を、どうやって救うことができましょうか。別にその人は死にたいんじゃないのでしょう。ただ自分の中にいつまでもあり続ける恥を無い物にしたいのです。

 

太宰治はこの作品を書いた後、次の作品(『グッド・バイ』)を完成させることなく自殺しました。太宰治の恥は、これをもって終わったのです。