オススメ度:★★☆☆☆
「カッコいい」かどうかを基準に生きる(p.42)
キム・ダスル『人生は気分が10割』
本書のエッセンス
・HSP向けの本
・「カッコいいか」を基準に生きる
・日本も韓国も悩みは同じ
HSP向けの本
韓国で有名なエッセイスト キム・ダスルによる、現代人がより行きやすくなるためのヒントをまとめた短編集。本書は韓国で2022年のベストセラーを記録している。
日本で近年HSP(過敏かつ繊細)というパーソナリティがよく知られるようになっている。この本の内容の多くはそんな気質の人向けに書かれており、日本でも売れている理由がわかると同時に、韓国においてもHSP気質の人が増えていることを伺いしれる。
周囲に過度に気を配ってしまい、人間関係でも気疲れしてしまっている人に寄り添うような文章は、そういった気質をもった人には刺さるのかもしれない。
私はどちらかと図太い性格でありHSPとはほど遠いため内容自体にあまり共感できなかった。
また元々この本の内容がInstagramに投稿されたものをまとめたという背景もあり、若干文体に「エモさ」が意識されている点が私にはあまり好みではなかった。
ではなぜこの本を手に取るに至ったかというと、この頃人生でほぼ初めての長期での鬱に近い状態であり、少しでもヒントがあればと書店で見つけたタイミングで藁にも掴む気持ちで即購入した。
「カッコよく」生きることを思い出させてくれた
先に述べた通り内容の9割は共感ができなかったが、いくつかのヒントは私が元々持っていた「強み」を思い出させてくれた。
「カッコいい」かどうかを基準に生きる(p.42)
アメリカの元海軍大将、ウィリアム・マクレイヴンも有名なスピーチで語っている。「世界を変えたいなら、ベッドメイキングから始めよう」。(p.216)
「やりたくないこと」から秒で終わらせる(p.242)
人生がうまくいく人に欠かせない3要素(p.248)
1. 小さな努力を重ねる
2. 根性がある
3. 根拠のない自信を持つ
思い返せば、私はこれらの内容をよく知っていたし、かつての自分は十分に実践できた。それゆえこれまでの人生のなかで自己を強く持てていたし、逆境の中でも心が折れることなくここまでやってこれた。
しかし仕事が忙しくなり、気持ちにゆとりがなくなってくると、いつのまにかこれらの重要な要素をおざなりにしてきてしまった。
これまでの人生うまくやってこれたのだから、多少おざなりにしてしてしまってもなんとかなると思っていた。
しかし実際にはみるみる成長は止まり、思うように結果を残さず、また自分に対する自信まで失うようになってしまった。
気付けば諦め癖がつき、どうせうまくいかない、及第点が取れればいい、誰かに助けてもらうなどと情けない、ほんとうに情けない根性なしに堕落していた。そして堕落した自分に気がついていながら、それもしょうがないなどと誤った自己肯定に甘えてしまっている。
つまり堕ちている慣れ、堕ちていることに対する感度を失ってしまっていたのだ。
怠惰にやって筋肉が衰えたボディビルダーが自分の鏡をみて驚愕するような、恐怖に似た衝撃がそこにはあった。この時初めて、自分自身を心の底から情けないと思った。
正直、メンタルの強度を失った今昔のように全力で「カッコよく」生きるのは難しいだろう。できなくなっている自分に不甲斐なさを感じる瞬間がこれから何度もあることもわかっている。
ただこのままの自分ではいたくないと思っているので、まずは朝のベッドメイキングから始めようと思った。