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『インサイド・ヘッド』は全世代向け笑って泣ける映画

オススメ度:★★★★★

悪いけどライリーのことを幸せにしたいの

 

『インサイド・ヘッド』

 本書のエッセンス
・話の組み立て方が天才
・単純な笑いからシリアスなユーモアまで
・ヨロコビの人格設定が秀逸

 

あらすじ

人々の頭の中には様々な感情が共存している。

喜び、悲しみ、怒り。そしてそれらの感情は成長を経るごとに増え、複雑になっていく。

12歳のライリーの頭の中ではヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカという5つの感情がライリーを幸せにするために日々指令を出していた。

 

父の仕事の都合で12年間暮らしたミネソタからサンフランシスコへ家族で引っ越したライリー。新しい土地への不安やトラブル続きで心に負荷がかかるなか、感情のリーダーであるヨロコビはライリーのためには楽しい感情が最重要であると考えカナシミを遠ざけながら奮闘する。

しかしひょんなことからヨロコビとカナシミは感情の司令部から遠く離れた記憶の彼方に飛ばされてしまう。

ヨロコビとカナシミは司令部に戻ろうとあの手この手を使うが、2人がいなくなったライリーの心は少しずつ崩れてゆく。

 

感想

『インサイド・ヘッド2』を映画館で見て久々に1が見たいと思い、家族でケンタッキーをむさぼりながらディズニー+で見返した。

初めて見たときにはあまり心に残らなかったが、改めて見るとなぜ残らなかったのかが不思議なくらいの傑作であった。家族の前でなければ号泣していたと思う

 

話の組み立て方がとてつもなく上手い。

これはただ伏線を貼り、回収しているというだけではない。

伏線の貼り方が自然で、近年よくある「はいはい、ここが後で重要になるのね」といった余計な違和感を持たせない。このような違和感があると一気に覚めてしまうが(近年のピクサーだと『マイ・エレメント』がこの気があり残念だった)、このあたりが大変スマートである。

そしてそれら一つ一つの要素が全体のストーリーをきれいに組み立てており、笑いとも感動の両方に絶妙に作用している。ただうまいだけでなく鑑賞者の心をしっかり揺さぶり、「うまい映画」に陥らず「いい映画」になっている。

 

個別の話でいえば、ヨロコビの人格(?)設定が秀逸である。

ヨロコビはその名の通りライリーに嬉しい気持ちをもたらすために存在しているので、基本ポジティブでありどうすれば楽しくいられるかを常に考えている。利己主義に陥らず全体最適で物事を考えられ、ライリーのためなら努力も惜しまない。

これだけ書くとまるで完璧超人のような引用を受けるが、そんな彼女も完璧なわけではない。なかなかうまくいかない同僚のフォローにも段々と疲れの色を見せることもあるし、独善的な面もありときには行き過ぎた行動はときにグロテスクな方向に向かうこともある。ポジティブも万能でないことをこのようなかたちで示唆している。

この振れ幅が見る人に感情移入させる隙をつくり、彼女の成長を一緒に追体験することができる。

 

『インサイド・ヘッド』は全世代向けの笑って泣けるいい映画なので、もっとテレビ放送して広まってくれればいいなと思った。