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【絵画の解説】ルノワール「ラ・グルヌイエール」【印象派の誕生】

今では絵画の人気ジャンルの一つとなっている印象派。やわらかな雰囲気は日本人と相性が良いようで、毎年多くの展覧会が開かれています。

 

今回紹介するルノワールの「ラ・グルヌイエール」は印象派の作品のなかでもターニングポイントとなった大事な作品でした。この作品が印象派にとってなぜ大切なのか、わかりやすく解説していきます。

 

ルノワール「ラ・グルヌイエール」を理解するポイント

・印象派の誕生
・ルノワールとモネの違い

 

ルノワール「ラ・グルヌイエール」は印象派の原点

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「ラ・グルヌイエール」 1869年 スウェーデン国立美術館

水面に映る美しい光。これはまさに印象派の特徴です。

ルノワール、モネらのちに印象派と呼ばれるグループは色を塗るのではなく、純色を並べて置く"筆触分割"という技法を編み出し自然の光を表現することに成功しました。

この作品は筆触分割を用いて描かれた最初期の作品とされ、印象派の誕生を意味してているのです。

 

自然の光を表現する

1868年から1869年にかけて、ルノワールとモネはラ・グルヌイエールを訪れ、二人はキャンバスを並べて同じ構図で作品を制作していました。ラ・グルヌイエールはパリ近郊の当時まだ新しかった行楽地で、夏には多くのパリジャン、パリジェンヌが優雅に楽しんでいました。

 

 この絵の特徴はなんといって水面に移った光が美しく表現されていることです。

これは印象派が求めている物でした。印象派のグループは目に見える自然をそのまま描くことにこだわり、一瞬のきらめきを絵画の閉じ込めようとしました。

このきらめきを表現するために、彼らは新しい画法を編み出します。

 

 

筆触分割

彼らが編み出した新しい技法を筆触分割といいます

従来の絵画はパレットの上で色を混ぜ、さまざまな色味を作り上げてきました。しかし色は混ぜれば混ぜるほど黒に近づき、合わされば合わさるだけ透明に近づいていく光を表現することは非常に困難でした。

 

光を表現するために編み出されたのが"筆触分割"による"視覚混合"で色を表現するというものです。

筆触分割とは色を混ぜて使うのではなくキャンバスの上に並置していく方法で、この方法で描かれた絵画は遠くからみた時人間の錯覚により色が合わさって見えます(視覚混合)。

こうして彼らは、色味を失うことなく色を混ぜて見せることに成功したのです。

 

 

印象派の誕生

「ラ・グルヌイエール」は筆触分割をつかって描かれた最初期の作品といわれています。印象派絵画最大の特徴である筆触分割の誕生は、印象派の誕生を意味します。

 

水面に反射する光がきらめくパリ郊外の美しい水浴場のほとりで、のちの巨匠たちが互いに影響を受け合いながら静かに印象派は生まれいきました。

 

 

ルノワールとモネの「ラ・グルヌイエール」

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モネ「ラ・グルヌイエール」 1869年 メトロポリタン美術館

 となりに並んで同じ構図で同じ場所を描いていたルノワールとモネでしたが、その作品を見比べてみるといくつか違いがあることが分かります。

 

人物に対する姿勢

まず最初の違いは人物の配置です。モネが人物を遠くに見える背景の一部として描いているのに対し、ルノワールは画面がより人物に寄っており、その服装まで細かく描かれています。

ルノワールは自然を重視する印象派のグループに属してはいましたが、どちらかと言えば関心は人物に向いていました。この考え方の違いはのちにルノワールが印象派から距離を取るようになったときの理由のひとつにもなりました。

 

黒の使用

もう一つの違いが黒の使用の有無です。印象派では自然を重視していたため、自然界に存在しない黒は使用しないのが一般的でした。

一方でもともと陶器の絵付け職人であったルノワールは黒が見る人に与える印象を理解しており、「黒は色の女王」と考えていました。その結果この絵画においてもモネが黒を避け暗い緑を使っているのに対し、ルノワールは人物の服装に黒を用いるという違いが生まれました。

 

 

おわりに

今や大人気である印象派も、最初は二枚の絵画から始まりました。

今回は印象派の原点である作品について紹介しました。ルノワールの他の作品についても別の記事で解説していきます。絵画を年代別、人物別に追っていくことで変化を楽しむのも面白いかもしれませんね。

 

 

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