ルノワール晩年の傑作「ピアノを弾く少女たち」(「ピアノに寄る少女たち」、「ピアノの前の少女たち」ともよばれる)。全体的に温かみのあるタッチと色彩で描かれいて、見ていると優しさが伝わってきます。
優しい絵画はどのようにして生まれたのでしょうか。今回は日本でも人気が高いこの作品の鑑賞のポイントを解説していきます。
「ピアノを弾く少女たち」を理解するポイント
・温かみのあるタッチはいかにして生まれたか
ルノワール「ピアノを弾く少女たち」の解説
ピアノの前で二人の少女が一緒に楽譜を眺めています。何気ない穏やかな日常を切り取ったようなこの絵には、見ていてほっとするような温かみを感じます。
この温かみのある独特な画風はルノワールの晩年の絵画の特徴でもあります。彼はどのようにしてぬくもりの感じられる画風を手に入れたのでしょうか。
印象派と古典への傾倒
ルノワールの画風は時代によって大きく3つに分けることが出来ます。
最初は最もよく知られている印象派としての時代です。この時代には鮮やかな色彩表現を身に付けました。
次が古典に影響を受けた時代です。ローマへ旅行したルノワールはラファエロや新古典主義のアングルに影響多大な影響を受けました。こうしてルノワールは印象派とはうって変わってハッキリとした輪郭を手に入れましたが、一方で画面にはどこか冷たさが表れるようになりました。
晩年の作風
これらの二つの時代を経て、ルノワールはこの「ピアノを弾く少女たち」を描いた晩年の作風を完成させました。この時代の作品は印象派の鮮やかさや温かさと、印象派には無かった質感を持った輪郭の筆遣いが見られます。
ルノワールは見る人が楽しく、喜ぶような作品を描きたいと考えていました。「ピアノを弾く少女たち」を見ていると純心な少女がピアノの練習をしている姿にほっこりしてきます。
印象派と古典、二つの時代を経てルノワールは温かみのある優しいタッチを完成させたのです。
ぜひ美術館でこの作品やルノワール晩年の作品を見るときには、印象派時代や古典傾倒時代の作品とタッチを比べてみてください。
ルノワールの画風についてはこちらでも詳しく解説しています。