【NHKで話題】マルクス・ガブリエル『未来への大分岐』【感想・まとめ】

オススメ度:★★★★☆ 

 

目覚ましいスピードで技術革新・経済成長を遂げる世界。この世界はこれからどのような方向へ向かうのでしょうか。資本主義や民主主義はこのままのかたちでこれからも続くのでしょうか。

  

概要

NHK『欲望の資本主義』シリーズで話題の哲学者マルクス・ガブリエルを筆頭に、3人の学者による独自の社会観が語られている。

 

聞き手はカール・マルクスの研究をおこない経済思想を専門とする日本人教授。対談形式ではあるが聞き手に十分な見識があり、中身の詰まった内容となっている。

対談形式によって『時計の針が巻き戻るとき』よりも丁寧に話が進められており、「新実存主義とは何か」をざっくりとつかむのに向いている。 

『未来への大分岐』というタイトルどおり全体的に政治・経済の話が中心となっている。この本をストレスなく読むうえで、政治・経済、時事の最低限の知識はほしいところ。

 

 

相対主義批判

多様性の広がりとともに、相対主義も支持を伸ばしています。相対主義とは普遍的な概念など存在せず、人はそれぞれ異なる考え方を持ち、そのすべてを否定できないという考え方です。平たく言えば、みんな違ってみんな正解ということです。

 

ガブリエルは相対主義者を痛烈に批判しています。

 

 相対主義者は、違う場所の違う文化的条件のもとで生きている人のことを、自分とは全然異なった他者としてみなすようになる。究極的には、他者のことを人間ではない存在として、考えることになるのです。(p.152)

 

倫理的・政治的意味における価値(いわゆる人権)はすべてわたしたちが「人間であること」に基づいています。他者の非人間化は、その価値の否定に帰着します。

人を人として見なくなった人間は、他者を差別・排除・暴力することをいとわなくなってしまいます。すなわち、相対主義は普遍的価値を否定してしまうのです。

 

数学者の藤原正彦も著書のなかで相対主義を否定するような主張をしています。以下は『国家の品格』からの引用です。

 

美的感受性があれば、戦争がすべてを醜悪にしてしまうことを知っていますから、どんな理由があろうともためらいます。故郷を懐かしみ涙を流すようなひとは、他国の人々の同じ想いをもよく理解できますから、戦争を始めることをためらいます。(p.156)

 

相手も自分と同じ人間であることがわかっている、すなわち相手と自分は「同じ」であるという考え方は、相手に対する暴力を思いとどまらせます。これは相対主義とはまったく反対の考え方です。

 

注意したいのは、ガブリエルはすべてが同質であると主張しているわけではないということです。

ガブリエルの相対主義批判というのは、相対主義で考えるとすべての思想を等しく扱わなくてはならなくなる。すべての思想を等しく扱うということは、ヒトラーをも肯定することになる。しかしヒトラーは間違っている。この矛盾より相対主義は成り立たない、というの彼の主張です。

 

まとめると、相対主義は人を人として見なくなる危険性をはらんでいる。他者の非人間化は差別・排除・暴力を生む。これらをなくしていくためには「相手を人間としてみる」ことが重要なのです。

 

 

 

大学生のための成長できる《日本経済新聞》の読み方

大学生や就活生になると「日経新聞を読め」と言われるようになります。

 

まあ読んだ方がいいだろうと、とりあえず読んでみたものの「どこを読めばよいのかわからない」「一応読んではみたけれど内容が頭に残らない」という感想を持つ人がおおいんじゃないでしょうか。

 

実際日経新聞はほかの新聞と比べると骨太で、今まで経済にあまり触れてこなかった学生がいきなり読むにはやや敷居が高いところがあります。

 

では日経新聞を読むために経済を勉強しなおしたり、あるいはもっと他の簡単な新聞から読み始める必要があるかといえば、そんなことは全くありません。

しかし、新聞の特性をしっかり押さえて正しく読めば、事前知識がない学生でも日経新聞を読み理解することができます

 

今回は日経新聞について、学生はどこに注目して読めばいいのか、そして読んだあとどう活かしていけばいいのかについてわかりやすく解説しました。


*今回は日本経済新聞の朝刊について扱います

*情報は2020年2月25日時点のものになります

大学生のための成長できる《日本経済新聞》の読み方

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日経新聞のどこを読めばよいのか

日経新聞はその日によって変わりますがおおよそ30~40の面で構成されています。もしこれを隅々まで読もうとすれば、それだけで半日が終わってしまうでしょう。

当然ながら大学生はこれを全て読む必要はありません。本当に必要なところだけを確実に取り入れていきましょう。

 

大学生が日経新聞を読むうえで見ていく欄は以下の通りです。

①MARKETS
②一面
③きょうのことば
④全見出し
⑤二・三面(総合面)

 

これらは大学生ならすべて読まなくてはならないというわけではなく、そのとき取れる時間に応じて数字の若い方から目を通していくとよいという意味合いで並べてあります。

これらに加えて好きな記事をいくつか読んでいくと平均的な読書スピードの人で1時間ほどで収まるようにつくってあります。

 

それでは次の項から一つ一つ解説していきます。

 

MARKETS

まず必ず毎日目を通すべきなのがMARKETSです。

MARKETSは一面の左下あたりに位置し、日経平均株価、日経アジア300、円・ドルの三つの指数が載っています(日曜・月曜は休み)。

 

日経平均株価には日本の経済状況がリアルタイムで現れます

悪いニュースがあれば下落しますし、逆に期待的な情報が流れたときには上昇します。

つまり、この欄は日本経済をもっとも端的に表しているのです。

 

しかし、いきなり日経平均株価を見たところで結局その数字がいいのか悪いのか、変動幅が大きいのか小さいのか判断できませんよね。

 

だからこそ、MARKETSは毎日目を通さなくてはならないのです。

 

毎日見ていると数字の動きがなんとなくわかってきます

「今日は動きが小さいな」「昨日は悪いニュースがあったから明日は大きく下がりそうだな」といった感覚が毎日見ているだけで自然と身についてきます。

 

もちろんその数字の本当の意味は経済学を学ばなくては正確にはとらえることはできません。

それでも平均株価を把握しておくことは、経済を肌で感じられるようになるための一歩になるはずです。

 

その日の記事を読んで、次の日の株価の上がり下がりを予想するのも経済感覚をとらえるいい練習になるでしょう。

 

一面

読まない人はいないと思いますが、興味のいかんに関係なく読むようにしましょう。

 

一面トップはその日のなかでプロが最も重要だと選んだ記事が載っています。日経新聞において重要かどうかの指針は、どれだけ経済に影響を与えるかということです。食事でいえばメインにあたりますので、これを取りこぼすわけにはいきません。必ず読みましょう。

 

日経新聞は基本的にその日から読み始めた人でも理解できるように書かれているので全く知らないという言葉は少ないと思いますが、中には聞いたことがない金融用語や海外の政策が出てくるかもしれません。

そういった新たなワードに出会ったときには是非自分で調べてみてください

 

一面に出てくるレベルの出来事というのは経済に大きな影響を及ぼす大きな出来事ですから、今後も繰り返し出てくることが多いです。場合によってはその日の別の記事の中で詳しく解説されていることもあります。

経済のトレンドを確実に追っていくためにも、わからない言葉や制度は積極的に調べていくようにしていきましょう。もし興味をもったときにはそれに関連する新書なんかにあたってみるのもオススメします。

 

 

きょうのことば

個人的にぜひおすすめしたいのが三面に掲載されている「きょうのことば」です。

 

「きょうのことば」ではその日のニュースから分かりにくい用語や新たなことばを簡潔説明してくれています。一面で出てきた用語が解説されていることが多く、特に新聞を読みはじめたばかりの人は読むことをおススメします。

 

 

全見出し

全ての記事に目を通すのは難しいですが、できれば見出しだけには目を通しておきましょう

新聞の見出しはよくできており、見出しを読むだけでも記事の中身をつかむことができます。

 

見出しを毎日見るメリットとして、重要なニュースを興味をもって発見することができるということがあります。

 

毎日新聞の見出しをチェックしていると、大きくは報道されていないけれど、繰り返し掲載されているニュースに出会うことがあります。もし関心がなかったニュースだったとしても、繰り返し掲載されていることに気付いた時点では少し興味を引き付けられているといえます。

このような発見は非常に幸運です。今まで興味がなかったことがらに興味を持て、かつそのニュースは重要であるわけです。

 

見出しを毎日眺めることで自分の興味の領域を広げ、かつ重要なニュースを見つけることができるのです。

 

 

二・三面(総合面)

 今まで紹介した読むべき箇所からは少し重要度が下がりますが、二・三面も重要な要素がたくさん詰まっています。社説もこの面に載っています。

 

二・三面は総合面です。日経新聞の総合面は経済・政治のなかから大切なものをピックアップして解説してあります。一面の記事の詳細が解説されていることもあります。

 

もし時間が許すならば二・三面も一通り読んでおくと社会トレンドに強くなるでしょう。

 

 

おわりに

以上日本経済新聞を読むうえで留意すべきポイントを解説しました。

 

オンラインメディアが台頭してしばらくが経ちました。

オンラインメディアは情報のスピードや量、ニッチな分野の充実で紙媒体を凌駕しています。

 

一方で情報の選択が読者に大きく委ねられているオンラインメディアは情報バイアスを生み出してしまう危険性もはらんでいます。

質の高い情報を満遍なくひろっていくためにも、新聞を読む価値はまだまだ残っているのではないでしょうか。

 

日経新聞読むべき記事

①MARKETS
②一面
③きょうのことば
④全見出し
⑤二・三面(総合面)

 

 

ディズニーの「美女と野獣」はサイコパスだらけ!?

「美女と野獣」といえばディズニーを代表する名作の一つです。

1991年制作でありながらいまだに根強い人気を誇っています。2017年には実写化もなされ、こちらも大ヒットしました。

 

そんな「美女と野獣」ですが、ストーリーを冷静に見ていくと主要登場キャラクターがどれもサイコパスじみていることに気が付きます。

 

一体このおとぎ話のどこにそのような狂気的な要素があるのか解説していきたいとおもいます。

 

 

ディズニーの「美女と野獣」はサイコパスだらけ!?

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ベル

物語の主人公でディズニープリンセスのひとり。

天然で心優しい性格として描かれているが、ときにその天然さが度を越している。

恐怖におびえていたはずの野獣に歯向かってみたり、野獣に「絶対に入るな」と言われていた部屋に何度留められても好奇心から入っていってしまう。好奇心が強すぎて他の感情がバグっている。

 

オープニングテーマの「朝の風景」では町の人に"少し風変り"と紹介されているが、実際には単なる町のやばいやつのひとりなんじゃないだろうか。

 

 

野獣

この作品のプリンス。人を見かけで判断し、内面を見ようとしない傲慢な性格から魔女に野獣の姿に変えられてしまった。

 

野獣として長い時間を過ごしたためか看過できないレベルまでこじらせてしまっている。ベルを初めて晩餐に誘う際には「来たくれば来ればよい、まあ来なくてもいいけどな」と思春期の中学生のようなセリフを吐いた。(しかし来ないと怒る。)

後半はだいぶ人間らしくなったが、序盤のコミュ障っぷりは見ていて辛かった。

 

 

ガストン

町一番の美女であるベルとの婚約をもくろむ色男。

 

自信過剰でなんでも自分が思うようにならないと気が済まないという傲慢な性格をしている。人の家に勝手に上がり込み本の上に汚れた靴を乗せるなど横暴がとどまることを知らない。

 

男らしさを売りにしているくせに命乞いをしたあと隙を見て反撃するなど姑息な一面を持つ。男らしさ一貫性があればもう少しいい男だったのだけどもね。

 

 

モーリス(ベルの父親)

ベルの父親で、奇天烈な発明家。町の人からも変な人という評価を受けている。

 

娘を思う気持ちはとても伝わってくるが、それを実行するにはポンコツすぎる。作中何一つ役に立っていない。

ベルの天然は父親譲りの模様。

 

*****

 

 物語で細かい部分を気にしたらきりがありませんが、たまに少し自分が物語の一住人だと考えてキャラクターたちを見ると意外な発見をすることがあります。

 

もし「美女と野獣」を見る機会があった際にはこのような点にも注目してみると面白いかもしれませんね。

Disney on CLASSIC Premiumへ行ってきました

Disney on CLASSIC Premiumへ行ってきました。

大好きな美女と野獣を題材に、予想を超えた演出も盛りだくさんで大満足の2時間40分でした!

 

 今回のDisney on CLASSIC Premiumは終わってしまいましたが、Disney on CLASSICと同じようにまた別の作品で開催されると思います。

 

今回のコンサートの内容と、シネマ・コンサートとDisney on CLASSIC Premiumの違いについてまとめました。

 

Disney on CLASSIC Premium

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シネマ・コンサートとDisney on CLASSIC Premiumの違い

2020年2月22日、23日にわたって行われたコンサートはDisney on CLASSIC Premiumといって、今まで開催されていたシネマ・コンサートよりも豪華なコンサートとなっていました!

 

私が以前見に行ったシネマ・コンサートで映画を上映しながらそこに本物のオーケストラが音楽をあてるというものでした。

今回のDisney on CLASSIC Premiumはさらにパワーアップして歌唱シーンは豪華キャストによる生歌、さらに生きる伝説であるアラン・メンケンによるトークセッションとメンケン演奏によるメドレーの披露などその内容は大変豪華なものとなっていました!

 

シネマ・コンサートはシンプルに曲のすばらしさとオーケストラの演奏を楽しむというで、Disney on CLASSIC Premiumはそのディズニー映画の曲を余すことなく楽しめるようにデザインされていました。

 

 

感想

めちゃくちゃ感動しました。ひさびさ感動して涙が出ました。

 

オーケストラはずっと好きなんですが、実はディズニーもかなり好きで多い年には100回/年ほど通っていました。特にディズニー音楽が好きで、今回のDisney on CLASSIC Premiumはとても楽しみにしていました。

 

上映の前のアラン・メンケンのトークセッションではメンケンが自身のメドレーを披露してくれました。

そのメドレーの中には歴代の名曲から近年の作品の楽曲、また東京ディズニーシーのアトラクションの曲まで含まれており、その素晴らしい演奏に引き付けられました。

エンターテイメントというのはこんなにも人の心にダイレクトに影響を与えるのかと衝撃を受けました。人生の方向が少し変わってしまうほどの、そんな圧倒的な演奏でした。

 

豪華俳優陣による生歌も圧巻で、テレビで見るクオリティを本番でそのまま出せるのはやはりプロなんだと思いました。

 

今回のコンサートを見て、本当に素晴らしいというものを本物のプロたちが本気で作るからこそ人を感動させることができるのだと強く思いました。

 

 

 

 

 

【絵画】マネ《皇帝マキシミリアンの処刑》なぜ皇帝は処刑されたか?

処刑というと極悪人に下されるものというイメージがありますが、世界史においてはしばしば国王や貴族も処刑の対象となりました。

 

処刑された貴族の中でも最も有名なのはフランスのマリーアントワネットじゃないでしょうか。彼女はオーストリア・ハプスブルク家の娘としてフランス王に嫁ぎましたが革命が起こってしまい、最後には夫とともにギロチンで処刑されました。

 

 

今回紹介するのはメキシコ皇帝マキシミリアン(マクシミリアン)の処刑を描いたマネの作品です。

この絵画を理解するうえで重要な時代背景についてわかりやすく解説しました

 

マネ《皇帝マキシミリアンの処刑》を理解するポイント

①なぜ皇帝マキシミリアンは処刑されたのか?
②マネらしい反骨的な表現

 

マネ《皇帝マキシミリアンの処刑》

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《皇帝マキシミリアンの処刑》 1869年 マンハイム市立美術館

 

メキシコ皇帝マキシミリアンの誕生

まず初めに舞台となる1860年代の世界史を整理しておきましょう。

 

まずこの事件の核となるのはフランスの皇帝として君臨していたナポレオン3世です。

このナポレオン3世は俗にナポレオンと言われるナポレオン1世の甥っ子で、国民投票によって皇帝になった人物です。

 

当時のフランスは産業革命によって階級の変化が激しく、政治的に混乱していた時代でした。

ナポレオン3世はこのような状況の中で独裁政治を行うために国内に存在する勢力間の対立をうまく利用し、どの方面にもいい顔をする人気取り政策を行っていました。これをボナパルティズムといいます。

 

絶大な人気を手っ取り早く取る方法は戦争で勝つことです。

戦争は他国と自国の境界を強く意識させるため、ナショナリズムを高めるのに強く作用します。また戦争に勝てば国民は優越感に浸れ、彼らはその指導者である皇帝を支持するようになります。

 

このような理由からナポレオン3世は叔父のナポレオン1世と同様に多くの戦争を繰り返したのです。1850年代までは首をつっこんだ戦争のほとんどに成功し、彼の政治はうまくいっていたのですが1860年代に入ると様子が変わってきます。

 

1861年、ナポレオン3世は国家間の借金のトラブルを口実にメキシコ侵略に乗り出します。アメリカからすればヨーロッパの大国が大西洋を渡って侵略しに来るのはうっとしいことこの上ありませんでしたが、あいにくアメリカ史史上最大の内戦である南北戦争が勃発してしまったためメキシコまで手が回らなくなっていました。

 

この隙にフランスは進撃を続け、1863年に首都であるメキシコシティを陥落させました。ナポレオン3世はカトリックの君主国を打ち立てるべく、オーストリア皇帝の弟であったマキシミリアンを担ぎ上げてメキシコ皇帝として君臨させました

 

登場人物を整理すると以下のようになります。

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マキシミリアンの処刑

メキシコ皇帝となったマキシミリアンは国民のために精力的に働きましたが、メキシコ国民の大多数は彼を受け入れようとしませんでした。

 

当時メキシコ国内で最大勢力となっていたのは臨時大統領だったフアレス率いる革命軍でした。フアレスは自国を取り戻すべくフランス軍とゲリラ的な抵抗を続けていました。

さらにマキシミリアンには不幸なことにアメリカではリンカーンによって南北戦争が終結し、アメリカは目の上のたんこぶを取ろうとフランスに圧をかけ始めます。

 

風向きが変わり、不利な状況となったフランス・ナポレオン三世は財政の悪化もありメキシコから兵を引き上げを決定しました。この際マキシミリアンにも帝位を退くよう勧めたそうですが、マキシミリアンは理想主義の性格からこれを拒み、破滅へと突き進んでいきます。

 

そしてついに1867年6月、メキシコ軍に捕らえられたマキシミリアンは銃によって処刑が行われました。フランスに担ぎ上げられ、そして見捨てられたマキシミリアンの生涯はここで幕を閉じたのです。

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マキシミリアンの処刑後、本国フランスの皇帝ナポレオン3世の任期は急落していきました。

処刑から三年後、ナポレオン3世はプロイセン(ドイツ)との戦争中に捕虜となってしまい、これをきっかけに勃発したパリでの暴動により皇帝としての地位を失いました。

 

一方で国を取り戻したフアレスは絶対的な地位を確立し、心臓発作で死ぬまでメキシコ大統領であり続けました。今ではフアレスは「メキシコ建国の父」として紙幣の肖像画にもなっています。

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マネらしい反骨的な表現

ここまで絵画のバックグラウンドである歴史について触れてきましたが、この項では作者の面から絵画を解説していきます。

 

マネといえば絵画界の異端児として、社会に対してケンカを売るような作品をいくつも制作しています。有名な《オランピア》や《草上の昼食》は当時タブーであった人間の裸婦を描き大論争 を巻き起こしました。

 

www.artbook2020.com

 

今回紹介している《皇帝マキシミリアンの処刑》もマネの反骨精神が垣間見える作品となっています。

 

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この二枚の絵を見比べてみると、兵士の服装に若干違いがあることがわかります。

これらは両方ともマネの描いた《皇帝マキシミリアンの処刑》で、左側が今回紹介しているマンハイム市立美術館に展示されている作品、右側がボストン美術館に展示されている左の作品より一年早く描かれた未完の試作になります。

 

この兵士の服装の違いは、兵士の所属する国の違いです。

左側の兵士はフランス軍、右側の兵士はメキシコ軍の服装で描かれているのです。

 

歴史の流れを思い出してみると、フランス軍は処刑の時には引き上げていますし、実際処刑を行ったのはメキシコ軍ですから歴史に即して描くならばこの作品の兵士はメキシコ軍の軍服で描かれるのが正確です。

 

しかしマキシミリアンがナポレオン3世の身勝手な野心の犠牲になったことにマネはひどく激怒し、あえて試作ではメキシコ軍で描いた兵士を、フランス軍による処刑に描き直すことで「マキシミリアンを殺したのはフランスだ」ということを強調したのです

 

このようにこの作品はマネの反骨精神がうかがえる作品でもあるのです。

 

おわりに

 今回のように絵画の中には歴史の一部を切り取ったものも多くあります。

歴史画を見るときには史実と作者の思想の両面を知ることでより絵画に近づくことができるのです!

 

今回のポイント

①皇帝マキシミリアンはナポレオン3世の政治的野心の犠牲となった
②マネはこのことに激怒し、作品に反骨心を盛り込んだ

 

 

マネについてやマネの他の作品はこちらから

www.artbook2020.com

 

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自分の機嫌は自分で取ろう

 気圧が低く気持ちが乗らない季節がやってきました。

 

冬は寒さのため換気も億劫になり、どんよりとした空気の中で長い時間を過ごしている人も多いんじゃないでしょうか。こうした毎日ではストレスがたまり、ついつい機嫌が悪くなってしまっている人も多いと思います。

 

今回は自分の機嫌を自分でとる重要性について話していきたいと思います。

 

自分の機嫌は自分で取ろう

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気持ちは伝播する

まず各自が自分で機嫌をとらなくてはならない理由として、気持ちが電波するということが挙げられます。

 

普段の生活で経験がある通り、楽しい空間にいれば人は楽しい気持ちになりますし、逆にしんみりした空気の中にいればしんみりとした気持ちになってきます。

このような極端な例に限らず、ちょっとした幸福感やピリピリ感というのが空間全体に伝播していくというのは覚えがあるんじゃないでしょうか。

 

人の気持ちは空間に流入し、そこにいる人たちのあいだでウイルスのようにあっちからこっちへと移っていきます。

ある組織や空間において自分の機嫌がとれない人間がいると、その組織の不機嫌の感染源となってしまいます。

 

例えばあなたの機嫌が悪くなったとして、自分でうまく自分の機嫌がとれないために誰か他人に自分の機嫌をとってもらおうとするとします。この時あなたの気持ちは誰かに伝播します。するとほかの誰かの機嫌や気分が悪くなり、その気持ちはほかの誰かへ伝わっていきます。

これを繰り返すとあなたの機嫌が直ったときに再びだれかの不機嫌を被ってしまうかもしれません。つまりあなたの不機嫌はあなたのもとへ帰ってくるのです。

 

インフルエンザと違って不機嫌に対する免疫はありません。自分でコントロールしようとしないかぎり何度でも不機嫌に行動や評価を阻害されることになってしますのです。

 

 

自分はプレイヤーであり、自分のコーチでもある

一流のテニスプレイヤーには一流のコーチが付いています。

 

コーチは常にプレイヤーに寄り添い、試合の途中メンタルがやられそうになったときにはあの手この手で鼓舞して、プレイヤーを最高のメンタル・コンディションでプレイできるように支えています。

このコーチのおかげで、プレイヤーは最高のパフォーマンスを発揮することができるのです。

 

私たちはトップアスリートではありませんが、それでもメンタルによって多少なりともパフォーマンスに変化が表れると思います。 やる気に満ちているときには仕事もはかどるでしょうし、イライラしているときには普段しないようなミスをしてしまうこともあるでしょう。

IQテストの開発者であるビネー教授も知能を支える三要素のなかに「熱意」を入れています。メンタルと成果にはそれなりに相関関係があるのです。

 

言うまでもなく自分のメンタル・機嫌を維持しておくのは重要な要素になってきます。

ではアスリートでない私たちのメンタルを支えてくれるのは一体誰なんでしょうか。常に私に寄り添い、高いパフォーマンスを保とうと努めてくれるのはどこの誰になるのでしょうか。

 

それは自分自身です。自分のためにも、他人のためにも自分の機嫌をとらなくてはいけないのは自分自身なのです。

 

そんなのは大人として当たり前だ、今更言及するまでもないと思うかもしれませんが、世の中には自分の機嫌が取れていない人が多くいます。とりわけ無意識のうちに他人を使って自分の機嫌をコントロールしようとしている人がかなりの数見受けられます。

 

たとえば他人の言動にイラっときたときについつい余計な一言を言ってはいませんか??あるいは優しくできたはずの場面で冷たく言い放ってしまうことはありませんか??

 

他人を大声で怒鳴りつけるなどは論外としても、普段の生活のなかでちょっとした嫌味やそれに準ずる行動をとってしまうということは相当意識していない限り往々にしてあるはずです。

 

こうした嫌味から出るマイナスの気持ちも組織の中を静かに伝播していきます。こうした静かなる負の感情がはびこる環境からは決していいものが生まれるとは思えません。

この負の連鎖を断ち切るには、各々が意識して自分の機嫌をとっていくしかないのです。

 

 

機嫌を取るためのコストを惜しまない

自分の機嫌を取るうえで重要なポイントは、自分の不機嫌を見くびらず機嫌をとるためのコストを惜しまないということです。

 

ある程度の大人になれば常に何かしらのストレスを抱えており、まったく気に障るものがないという環境はなかなかないと思います。その中で自分が不機嫌であることに徐々になれてしまい、メンタルがむしばまれていることに関して鈍感になっているひとが多いです。

そうした人は自分が多少機嫌が悪くとも「いつも通りだから」と気にとめず、結果としてマイナスのオーラを組織に流してしまっている可能性があります。

 

自分からしたら大したことないとしても、伝播した負の感情は組織の中で成長し、乗数効果が生まれてしまいます。

結果として、自分が予想したよりも多くの悪弊を生んでしまうことになるのです。

 

そうならないためにも、自分の機嫌の安定化は自分の最重要課題だととらえ、手をかけてやらねばなりません。

この時には決してコストを惜しんではいけないのです。もし機嫌が悪い時にラーメンが猛烈に食べたいと思ったならばたとえ遠くとも好きなラーメン屋まで足を運ぶのです。このときにカップラーメンで代用しようとすればストレスは切除しきれずに再び活動を始めるガンのようにまたあなたをむしばみ始めるでしょう。

 

機嫌が悪い時の自分は徹底的に甘やかすべきです

 

たとえ機嫌が悪い時にいくら甘やかしたところで、機嫌がいい時に厳しくして生産性を上げてやればいくらでもおつりがきます。

自分の機嫌くらいと安く見積もらないで、自分の機嫌は思う存分とってあげるようにしましょう。

 

 

今回は自分の機嫌をとる意義についてお話ししました。

もし自分のメンタルが弱っているのにいつも無理くり働かせているのであれば、たまには自分のことも可愛がってあげた方がいいかもしれませんね。

 

 

 

【絵画の解説】レンブラント《ベルシャザルの饗宴》【ロンドン・ナショナル・ギャラリー】

オランダ黄金期の画家であるレンブラントはさまざまなジャンルの絵画を手掛けたことで知られています。

 

今回は西洋絵画の王道、宗教画を扱っていきます。モチーフを知ることでぐっと作品を楽しめるようになります。 

この記事を読めば、 「ベルシャザルの饗宴」とは何なのか分かるようになります

 

「ベルシャザルの饗宴」とは?? 

①「ベルシャザルの饗宴」とは??
② バビロン捕囚と「ダニエル書」
③ 描かれている言葉の意味は

 

レンブラント《ベルシャザルの饗宴》

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《ベルシャザルの饗宴》 1635年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー

 

「ベルシャザルの饗宴」とは??

「ベルシャザルの饗宴」は旧約聖書「ダニエル書」5章に出てくるエピソードです。

*ベルシャザルの饗宴
新バビロニアの王子ベルシャザルはエルサレムの神殿を破壊、略奪した金銀の器を使って豪華な饗宴を開いていた。すると突然人間の手があらわれ、壁に文字を残していった。
多くの賢者が解読を試みたが失敗し、ユダヤ人のダニエルがこれを読み解いた。

 新バビロニアとは古代オリエント(現在のイラクあたり)に実際に存在した国で、「バビロン捕囚」(次項でくわしく説明)したことが特に有名です。

 

王子ベルシャザルは新バビロニア最後の王ナボニドゥスの子供で、首都であったバビロンの統治を任されていました。

 

 

バビロン捕囚と「ダニエル書」

「ダニエル書」は旧約聖書の一書で、主人公ダニエルがバビロン捕囚されてからの出来事が語られています。(ただし一部史実と異なる)

 

「バビロン捕囚」とはヘブライ人(ユダヤ人)の国であったユダ王国が新バビロニアのネブカドネザル2世に滅ぼされ、バビロニア地方に強制移住させられた出来事です。初めはすぐ戻れると楽観視していた捕囚民たちでしたが、実際には半世紀にもわたる暗い時代の幕開けになりました。

 

バビロン捕囚約50年後、新バビロニアがアケメネス朝ペルシアによって滅ぼされると、ついにユダヤ人たちは帰還することが許されました。こうしてつらい時代を乗り越え故郷にもどったユダヤ人たちはユダヤ教を確立します。

ユダヤ教はこのような経緯を経て成立したため、選民思想(ユダヤ人だけが神に救われる)がその特徴として色濃くでているのです。

 

 

描かれている言葉の意味は

さてこの絵画で描かれている文字はどのような意味なのでしょうか。

書き起こすとヘブライ語で「מנא מנא תקל ופרסין‬」(ヘブライ語は右から左に読む)となり、読みは「メネ、メネ、テケル、ウパルシン」となります。

 

意味は「神があなたの治世を数えて、これをその終りに至らせた。(メネ)あなたがはかりで量られて、その量の足りないことがあらわれた。(テケル)あなたの国が分かたれて、メデアとペルシャの人々に与えられる。(ぺルス)」、すなわち「神はあなたに王としての資格がもはやないと判断した、国はメディア・ペルシアの人々に分け与えられるだろう」という意味になります。この文章は「王の終わりを告げるメッセージ」なんですね。

 

その夜ベルシャザルは殺されてしまいました。

 

 

おわりに

聖書や歴史を知るとより絵画を楽しむことができます。

古代オリエントは固有名詞が多くわかりにくいですが、ロマンあふれる時代でもあります。もし勉強するならば高校世界史のテキストからがお勧めです。

 

まとめ

①「ベルシャザルの饗宴」とは旧約聖書「ダニエル書」のエピソード
②バビロン捕囚がユダヤ教に影響を与えた
③描かれている言葉の意味は「王の終わりを告げるメッセージ」

 

 

今回紹介したレンブラント《ベルシャザルの饗宴》はロンドン・ナショナル・ギャラリー展で楽しむことができます!!

もし今回この作品に興味を持たれましたら実際に見てみることをおススメします!!

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

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会場:国立西洋美術館(東京都)

開催期間: 2020/03/03(火) 〜 2020/06/14(日)

開館時間:9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)

休館日:月曜日(但し3/30、5/4は開館)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展|国立西洋美術館

 

 

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