印象派の巨匠ルノワール。彼はその人生の中で人物に興味をもちその表現方法を研究し続けました。
今回はルノワールの印象派としてのキャリアの最盛期に描かれた「劇場にて(初めてのお出かけ)」について、その鑑賞のポイントをわかりやすく解説します!
ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」を鑑賞するポイント
・印象派としてのルノワール全盛期に描かれた
・題名は後からつけられた
・ルノワールらしい優しい人物描写
ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」
にぎやかな劇場の中で上品な召し物をまとった少女が何かを少し前のめりになりながら興味深そうに見つめています。
背景や二人の少女以外の人物が淡く描かれているため自然と少女に目が向かいます。
舞台の様子がわからない分、彼女が見ているもの、彼女が考えていることなど想像が膨らみます。舞台にくぎ付けになっている彼女の肩を叩いたら、ハッと我に返って振り向くんじゃないか、この絵を見ているとそんな気がしてくるのです。
鑑賞のポイント①:印象派としてのルノワール全盛期
ルノワールの画風は、大きく分けると生涯で3度変わったことが知られています。
②古典への傾倒(1880年代~90年頃)
③晩年(1890年代以降)
この絵が描かれたのはルノワールのなかで最も有名な印象派らしい時代の終わりごろにあたります。
自ら第二回印象派展を企画したり、ちょうど同じころにはルノワールの最高傑作とも名高い「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を制作するなど、まさに印象派として一番脂ののっている時期に「劇場にて(初めてのお出かけ)」は描かれました。
印象派としてのルノワールの作品を見るならば、この時期の作品を見るのが一番いいと思います。
鑑賞のポイント②:題名は後からつけられた
この「初めてのお出かけ」というタイトルは制作50年ほど経ちこの絵がオークションにかけられてた際に初めて用いられるようになりました。ルノワールが題名を残さなかったためそれまでは単に「劇場にて(at the theatre)」などと呼ばれていました。
今回は題名が後からつけられた作品なので、この絵を「初めてのお出かけ」とみるのが正解かはわかりません。
絵画に登場する人物に感情移入するのも絵画鑑賞の楽しみなので、余計な情報に惑わされることなくなるべくフラットな状況で鑑賞するのもいいかもしれませんね。
鑑賞のポイント③:優しい人物描写
印象派としてルノワールの作品で特徴的なのは人物を積極的に、それも楽しげな雰囲気や状況を描いたということです。
もともと印象派は光を含めた自然をそのまま描き出すということをコンセプトとしています。そのために筆触分割という光を表現する方法を生み出したり、自然界にない黒を使わないなどしていました。
モネやドガと同じ印象派のグループに属していたルノワールですが、彼にはほかの画家たちとは異なり、自然や背景よりも人物を重視していました。この傾向は彼のどの時代の作品を見てもわかると思います。
またその上でルノワールは絵画を描く上で大切にしていることがありました。それは、「見る人を楽しい気持ちにさせたい」というものです。
これらを体現するために「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に代表されるにぎやかな光景を描いたり、その人間への興味から晩年には女性の裸体に美を見出し多くの裸婦を描きました。
このように、印象派でありながら自然よりも人物に関心を持ち、「見る人を楽しませたい」というモットーから優しい人物描写が生まれたのです。ぜひルノワールの作品を鑑賞するときには人物に注目し見ていくことをお勧めします!
おわりに
いかがだったでしょうか。
このようにルノワールの作品を鑑賞する際には”人物”に注目するとより鑑賞を楽しめると思います。
ぜひ実際に美術館に足をはこび、ルノワール特有の「楽しさ」を味わってみてはいかがでしょうか。
今回紹介したルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」はロンドン・ナショナル・ギャラリー展で楽しむことができます!!
もし今回この作品に興味を持たれましたら実際に見てみることをおススメします!!
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
会場:国立西洋美術館(東京都)
開催期間: 2020/03/03(火) 〜 2020/06/14(日)
開館時間:9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)
休館日:月曜日(但し3/30、5/4は開館)
(詳しくは公式HPをご覧ください)
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