本と絵画とリベラルアーツ

※弊サイト上の商品紹介にはプロモーションが使用されています

【本の紹介】J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

オススメ度:★★★☆☆

それに、僕もいくらか休暇がほしかったし。神経がすり切れちまってたんだもの。ほんとだよ。(p.82)

 

J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

 

あらすじ

単位を落としペンシルヴァニアの高校を退学となったホールデン・コールフィールドは、地元であるニューヨークに帰ろうと決意する。

恩師からは耳にタコができるような説法を受け、ガールフレンドをルームメイトに取られ仕舞いには撲られ散々ながらニューヨークへ帰るがどこにも居場所がない。

クラブで年確され、齢増の女と踊り、幼馴染とのデートもうまくいかない。

ホールデンの"イカれた"日々が自叙の形で綴られている。

 

感想

読もう思って買っても、長い間積読となる本がある。なかには買ったことを忘れてしまう本もあれば、心のどこかにずっと引っかかっている本もある。

『ライ麦畑でつかまえて』は後者である、ずっと引っかかっていた作品の代表例である。学生時代にBOOKOFFで安売り(値引きされていたものがさらに値引きされていた)のを機に購入し、なるべく若いうちに読んだ方がよいだろうと手元に置いておいたが、ついに若くない年に差し掛かるまでそのままになっていた。

 

読んで思ったのは、自分が読んできた思春期をモチーフにした小説の要素を広く網羅しているなという驚きである。

先生とホールデンの会話でホールデンが面倒くさそうにする様子は『ぼくは勉強ができない』の時田秀美のようだったし、デートのシーンは『海がきこえる』を彷彿とさせる。また全体を貫くティーン特有の拗らせ具合は『グミ・チョコレート・パイン』を思い出した。

純粋な小説としての面白みだけでいえば上記の作品たちの方が上だと感じられるが、1951年にすできここまでの思春期の普遍的な面を書き表したと言う点で名作なのだろうと私は理解した。