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【本の紹介】記事にしなかった本たち(2025年上半期)

 

記事にしなかった本たち(2025年上半期)

 

本を読んだ時にどれくらい豊かな感想を持てるかは、本の内容と自分自身の精神状態によって左右される。

面白かったり気が上向いているときにはとめどなく感想があふれてくるし、あまり刺さらなかったり気が乗っていないときには何も感想が出てこないこともある。

やはり読書体験としては感想がたくさん出てきたほうが楽しいけれど、常にその感想が出てくる状態をキープできるわけではない。気分によっては活字を読むのさえ苦しいときもある。

 

そんなわけで本ブログに感想まで載せられているのは読んだ本のほんの一部になってしまっている。ただ記事にできるほどの感想が生まれなかった本についても、まったく書き残さないのはもったいないと思い始めた。

メモがあまりに残っていないものについてはここに載せることもできなかったが、少しでも記載できそうな本についてはこの記事で供養してやろうと思う。

 

林望『節約を楽しむ』

オススメ度:★★★☆☆

書誌学者・林望が節約をテーマに私見をまとめたエッセイ。

自らを「筋金入りのへそ曲がり」と称し、キャッシュレスやらデジタル化やらで「便利」になる世の中に物申している。

基本為になるいいことが書いてあるが、時折堰を切ったように若者文化批判などがはじまるときがあり、その勢いに笑ってしまった。

 

山口周『人生の経営戦略』

オススメ度:★★★☆☆

ライフ・マネジメントにおける意思決定において、真に問題となるのは「勇気」でも「度胸」でもなく、「自分の居場所の趨勢についてどれだけ論理的に考え抜くか」という「思考の累積量」なのです。(p.135)

山口周氏による経営コンサルとしてのノウハウをライフプランに転用した本。

ゼロ成長社会では業界といったポジションにより成長率が異なってくるため、意識的にポジション取りをした上で未来への種まき(自己への投資)を行うべきという主張が印象に残った。

 

塚本亮『「すぐやる人」と「やれない人」の週間』

オススメ度:★★★★☆

「学習的無気力」という言葉を知れたことがこの本の最大の功績。

「学習的無気力」とは頑張ろうとする→うまくいかない→自信を無くす→うまくいかないのスパイラルによって慢性的に気力が失われている状態を指す。読みながらこの負のスパイラルは身に覚えがあるな強く感じて引き込まれた。

同時に神谷美恵子『生きがいについて』の以下の文章を思い出し、同じことを指しているんだろうなと思った。

自己に対するごまかしこそ生きがいに感を何よりも損なうものである。(p.40『生きがいについて』)

また

「いつか」はやってこない(p.36)

というフレーズもよかった。

 

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

オススメ度:★★★★☆

原題は『THE ART OF LOVING』である。

愛とは習得可能な技術であるという仮定のもと、なぜ「愛すること」は誤解されてきたのか、どうすれば習得可能であるかを説明した本。

愛から出発したトピックが社会全体への考察へと発展し、最後にはまた愛に帰着する構成が見事だった。全体が経済寄りの構造主義に近い思想で書かれていたのも受け取りやすかった。

特に商品経済下において我々の考え方がいかに「愛すること」を妨げているかの考察がきれいだった。

 

沢木耕太郎『キャラバンは進む 銀河を渡るⅠ, Ⅱ』

オススメ度:★★★★☆

『深夜特急』で知られる沢木耕太郎の短編エッセイ集。

沢木耕太郎と旅、スポーツ、ジャーナリズム、著名人との関係をうかがい知れる面白いエッセイ集だった。個人的には旅行の話が多めの前半が好きだった。

 

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

オススメ度:★★★☆☆

かつての大ベストセラー作品。

マネージャーに必要な素質として第一に「真摯さ」であることが挙げられていたことが印象的であった。同時に自分の働き方に「真摯さ」が備わっているかを突き付けられたような気がした。

 

リュドヴィック・スリマック『裸のネアンデルタール人』

オススメ度:★★★☆☆

人類のアナザーストーリーとしてのネアンデルタールというテーマはとても興味深く購入した。

面白いテーマあったが、全体の流れが他の学説や研究者の批判に終始しているところがあり、結局ネアンデルタール人とはどう言う存在なのかという「核心」に迫らない点が物足りないように感じた。

 

彬子女王『赤と青のガウン』

オススメ度:★★★★☆

彬子女王を身近に感じられ、また一院生としてイギリスで奮闘する姿が等身大に感じられるよかった。

スコーンのくだりを読んで実際に食べたくなり、銀座のカフェまで行ってしまった。

 

グレゴリー・J・グバー『透明マントのつくり方』

オススメ度:★★★★☆

不可視に関する人類の歩みが、科学とフィクションの両面から語られているところが新鮮で面白かった。また筆者自身が科学者でありオタクでもあることからどちらの面の記載も充実しており、読み応えがあった。

最終的に人類が不可視の技術に迫ったことで、その技術が津波や地震を回避する方法に応用しうる点に科学の面白みを感じられた。

 

芹沢桂『フィンランドは今日も平常運転』

オススメ度:★★★★☆

幸福度ランキング上位に常にランクインするフィンランド。そんなフィンランドで暮らす国際結婚の日本人女性によるエッセイ作品。

美化しすぎず卑下しすぎず、時にユーモラスに書かれとても読みやすかった。

初めて家に来たゲストにはすべての部屋を案内する不思議な文化や離婚が日常茶飯事な風潮など、これまで知らなかったフィンランド人の特性を知ることができた。

また日本人がサウナでよく言う「ととのう」を冷ややかに見ていたのが面白かった。現地では酔っ払いでもなければサウナがに急激に体を冷やすことはないらしい。

 

さくらももこ『憧れの魔法使い』

オススメ度:★★★★☆

さくらももこが子どもの時からずっと憧れて、弟子にして欲しいとまで思った絵本画家エロール・ル・カイン。そんな彼の生きた証をイギリスまで行って取材する紀行エッセイ。

しんみりとくるシーンでもしんみりで済まさないのがさくらももこらしくてよかった。