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【競争は幸せか】ちきりん『ゆるく考えよう』

オススメ度:★★★☆☆

「自分の失敗なんか、自分以外で覚えている人はいない。だから自分が忘れたらそれで終わりだよ」(p.231)

 

ちきりん『ゆるく考えよう』

 

 本書のエッセンス
・常識や通念を特別視せず、フラットに考える
・自分の感覚が一番大切
・表現方法は言葉だけではない

 

感想

本書を読んだ第一の印象は、反自己啓発書的であるということである。

通常の自己啓発書はあるべき姿として、資本主義社会の勝者をあるべきとしてイメージし、勝つためのメンタリティと施策を授けようとする。競争に勝ち、英雄になることこそが正しい生き方であり、そこから逃げたり負けたものは「負け組」だと主張する。

 

しかし実際には誰もが勝者になれるわけではない。もっと言えば、勝者になれるかどうかはある程度あらかじめ決まっている。

このことから筆者であるちきりん氏は、勝てない競争を無理強いされることを不幸であると考えている。

諦めていないと、人は頑張りますから。無駄なのに……。(p.26)

 

誰もが努力すれば勝てるという幻想を植え付けられ、成長の名のもとに一生懸命働く。これは本当に幸せへの道なのだろうか。

勝てない競争から降り、現実的な道を選んだ方がラクであるというのが筆者の主張であり、この本の後半ではその具体的なアイデアがバラバラと綴られている。

アイデアには、経済的な面では固定費を下げるアドバイスや「逆張り」のススメなどがある。

 

***

 

特に印象的であったアイデアに「自分の表現方法」と出会うというものがあった。

誰しもが自分のことを理解してほしい、自分のことを自分で分かりたいという欲求を持っているが、誰もが自分らしく表現できるツールを持っているわけではない。表現されないことによる欲求不満はストレスとなり、幸せからは遠ざかっていく。

 

表現というと言語化が思いつくが、なにも言葉だけが表現方法ではない。

デザインや音楽、絵画や写真、新しいものだとプログラミングも表現方法の一つである。

 

自分のなかのモヤモヤをうまく伝えられないのはコミュニケーション能力が低いからではなく、もしかしたら自分らしい表現方法にまだ出会っていないからかもしれない。そう思うと気持ちが楽になるかもしれない。