オススメ度:★★★★☆
良い課題提出ができる人は、課題が与えられる前から、すでに何かしらその領域ないしはそのクリエイターについて何度も考えている。普段から、日常的に。(p.40)
菅付雅信『天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』
本書のエッセンス
・トップクリエイターは断続的にアウトプットを出す仕組みを持っている
・天才は良質なインプットによって生まれる→出力が枯渇しない
・天才は日常的に脳内試行している→出力が即座で出る
感想
有名雑誌の編集者等を経て長年クリエイティブ教育に携わっている菅付氏による、トップクリエイターを目指す人のための指南本。
トップクリエイターは天才だけに許された仕事ではなく、再現可能な形でつくることができることを例を挙げながら主張している。
想定読者はクリエイター志望者であるが、アウトプットが求められるすべての人に役立つ内容となっている。
筆者は多くのトップクリエイターと接する中で、天才の仕事が「ひらめき」ではなく、仕組みによって維持されていることに気がついた。
私がこれまで仕事をしてきた「天才」と称されるクリエイターたちは、(…中略…)どんな課題に対しても「ほぼ即答に近いかたち」でアイデアを出すことができるのを私は仕事の現場で目の当たりにしてきた。彼らは日々膨大にインプットし、膨大なアイデアの掛け算を頭の中で試しているからこそ、そんな芸当も可能になるのだ。(p.26)
つまり天才が常にクオリティの高いアウトプットを即座に出すことができるのは偶然ではなく、しかるべき仕組みを持っているからである。
その仕組みとは①大量のインプットと②日常的な脳内試行だという。
大量のインプット
新しいアイデアは、既存のアイデアの組み合わせによって生まれる。つまり既存のアイデアに対するインプットがなければ、新しいアイデアは生まれてこない。
断続的にアウトプットを出し続けるためには、インプットの方も続けなくてはいけない。すなわち大量のインプットこそがアウトプットを続けるための生命線となる。
大量にインプットをするにあたって制約となるのは「時間」である。寿命がある以上人間がインプットに使える時間は有限であり、この世のすべてをインプットすることは不可能である。
筆者はインプットの時間を確保するため、暇つぶしを止めるようにも勧告している。
暇つぶしを排除し、時間を切り詰めたうえでインプットをの質を上げるためには、インプットするものの取捨選択が必要となってくる。
ではどのように取捨選択を行い良質なインプットを実現するか。筆者は「いいもの」ではなく「すごいもの」をインプットせよと主張している。
筆者によれば「すごいもの」とは初登場時に賛否が分かれかつそれを乗り越える歴史的視点があるもの、または価値観を揺さぶるような問いを与えてくれるものだという。
筆者は本書の中で「すごいもの」の具体例として書籍や映画のリストを掲載している。この部分はクリエイター向けになっているので、そっち方面のキャリアの興味がある人は確認するとよいだろう。
②日常的な脳内試行
続いては即座にアウトプットを出すための習慣である。
筆者は自身が開催しているワークショップでの参加者の態度について、以下のような指摘をしている。
良い課題提出ができる人は、課題が与えられる前から、すでに何かしらその領域ないしはそのクリエイターについて何度も考えている。普段から、日常的に。(p.40)
即座に良質なアウトプットを出すことができる人というのは、アウトプットを求められてからよーいスタートで考え出しているわけではなく、それ以前の段階で脳内試行を完了させている。常日頃から考えているからこそ、すぐにハイクオリティなものを出すことができる。
事前に試行しておく態度はクリエイター以外の仕事においても全く共通している。
仕事の依頼がきたとき、またクライアントから質問が飛んできたとき、そこから調査してアウトプットを出すのでは遅すぎる。
将来的に関わってきそうなテーマについては事前にキャッチアップを進めておき、期がくるまで熟しておくのがどの業界においても共通するプロフェッショナルとしての姿勢である。
そういった意味でこの本の内容はクリエイター向けだけではなく、プロフェッショナルとして働く人すべてに有用だと言える。