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【思考力を鍛える】赤羽雄二『ゼロ秒思考』【本の紹介】

オススメ度:★★★★★

そうした思考の「質」と「スピード」、双方の到達点が「ゼロ秒思考」だ。

ゼロ秒とは、すなわち、瞬時に状況を認識をし、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意思決定できることだ。(p.50)

 

赤羽雄二『ゼロ秒思考』

 

 本書のエッセンス
・思考を書き出すことで、思考が深化・高速化する。
・思考過程を書き出す=数学の途中式と同じ。書いた方がいい。

思考過程を外部化する

仕事をしていると、先輩や同僚に恐ろしく頭がいい人がいることに気付かされる。

急に変わった状況も瞬時に把握し、全体を考慮したうえで的確な判断を下す。

アカデミックな知力とも違う、ビジネスを進めるための頭の良さだ。

 

一方自分はと言われれば、時間をかけてじっくり考えることはできるが、瞬発的な思考という面ではあまり自身がない。前提条件が崩れるとうろたえ、「一度持ち帰ります」で時間を稼ぎ凌いでいる。

お世辞にも、あまりクレバーとは言えない。

 

本書の「はじめに」にこのような文章がある。

一生懸命考えているつもりで、実際は立ち止まっている、という人が意外に多い。

前に進まない。あるいは、空回りする。気になることがあると、頭がうまく働かず、考えがなかなか深くならない。考えようとしても、目の前の別の課題が目に浮かぶ。集中して考えることができない。行ったり来たりで結論も出せず、時間をかけても深掘りできず、堂々巡りすることになる。(はじめにより)

これを読み、まさに自分のことだと思った。

考えようとはしているが、実際には脳みそが空転するばかりで、解決への道を進められていない。時間だけがいたずらに過ぎ、画面のOneNoteは白紙のままである。

答えを出さなくてはと焦りから、さらに時間を費やす。多少の結論らしきものは出るが、明らかに時間に対するアウトプットとしてはお粗末だ。

 

この本は私のような人間に、後天的な思考力の向上のヒントを与えてくれる。それもそのトレーニングには高価な機材も法外な価格のNoteも常人離れした忍耐力も必要としていない。

 

やることは、脳内で考えている思考を思うままに紙に書き出すだけである。

ただ1日10分の時間とペンとA4のコピー用紙があればいい。

たとえこの本に書かれた内容を半年実践して効果が出なかったとしても、別に大したものを失うことはない。

 

実際の思考のトレーニング方法は以下に譲るが、簡単に言えば『ゼロ秒思考』のトレーニングとは、思考の途中式を書き出すことだと私は理解した。

数学の計算をするのに暗算をするのか途中式を書き出すのかではどれほど難易度が異なるかを私たちは知っている。途中式を繰り返し使って解いた計算は、やがて暗算でも問題なく解けるようになる。

それなのに、思考になると途端に"暗算"に済ませようとし、途中式の使用を誰に言われたわけでもないのに放棄する。実際には思考に途中式を使えばよいとこれまで誰も教えてくれなかった。

 

いやいや私は考えるときにメモをしているという人もいるかもしれない。

しかしメモと途中式は厳密には異なる。メモは多少考えた内容を忘れないように外部化するものだが、途中式は思考過程そのものを外部化する。メモが脳の保存能力を補うのに対し、途中式を書き出すことは考える領域自体を補う。

本書の中でも紙に書き出すことをメモと呼んでいるが、以上の理由から途中式と表現する方が正確だと思った。

 

思考のトレーニング法

「ゼロ秒思考」のトレーニングから得られるものは主に以下の通りである。

①モヤモヤしたストレスからの解放
②ハッキリと言語化する力
③思考の深化・高速化・空転の回避
 

まず自分のなかにあるモヤモヤした感情を紙に書き出すことで、人に悩みを相談した時以上に状況を客観化でき、とらえどころのなかった不安感・焦燥感から解放される。

さらにモヤモヤを文字情報に変換していくうちに的確な言葉選びができるようになり、言語化する力を鍛えられる。

言語化に自信がないという人は、先に小暮氏の『すごい言語化』を読むと、どのような状態になれば言語化できる状態といえるかを理解できる。

www.artbook2020.com

 

そして最大の効用が、思考の深化・高速化・空転の回避である。

思考過程を書き出すことで計算問題でいうところの途中式を書くのと同じ効果が得られる。途中式を書けば同じ計算を無意識に繰り返すことがなくなり、確実に先に進める。先に進めるので"暗算"で思考しているときよりも深い部分までたどり着ける。

また思考力が付くことで脳内で処理できる量が増え、高速化につながる。

 

書き方

書き方は極めてシンプルである。

A4の白紙に日にちと考えたい内容のタイトルを書き、あとは思うままに思考を書き出す。

メモは、タイトル、4〜6行の本文(各行20〜30字)、日付のすべてを1分以内に書く。頭に思い浮かぶまま、余計な事を考えずに書く。感じたままに書く。難しいことは何も考えない。構成も考えない。言葉も選ばず、ふと浮かんだままだ。(p.89)

内容を整理したり漏れがないかを考える必要はない。今頭に浮かんでくることをひたすらに書き出せばいい。

 

いつ書くか

まとめて書くのではなく、思いついたときなさっと書く。(p.107)

もう一つ大事なのは、メモは思いついたその場ですぐに書くことだ。寝る前にまとめて10ページではなく、原則、思いついたその瞬間だ。(p.114)

思いついたときに思考があふれるままに書き出す必要がある。そのためいつでもメモをとれるように、常に紙とペンを持っておく必要がある。

 

メモを深掘りする

書き出したメモからさらに発展して新たなメモをつくることで、より深いところまで思考を進めることができる。

メモを1ページ書き、本文の4〜6行をタイトルとして芋づる式にメモを書いていくと、考えが深まっていく。(p.166)

 

以上のシンプルなトレーニングにより思考は鍛えられ、境地である「ゼロ秒思考」を習得に近付いていく。

そうした思考の「質」と「スピード」、双方の到達点が「ゼロ秒思考」だ。

ゼロ秒とは、すなわち、瞬時に状況を認識をし、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意思決定できることだ。(p.50)

 

冒頭に述べたように、今の私は「ゼロ秒思考」からは程遠いところにいる。

これからこのトレーニングを積んでいき、どのように思考力が変化するか楽観的に注視していきたい。