オススメ度:★★★★☆
やましいことを隠すときに、私たちは、「たくさん」「ちょっとだけ」「かなり」という言葉を使いますし、既得権益を守るときにも感情的な言葉を多用します。(p.20)
安藤広大『数値化の鬼』
この本はプレイヤーとしてのサラリーマンが「仕事ができる人」になるための思考法について解説したものである。
『数値化の鬼』というタイトルだけ見ると、何か数値絡みの特殊なスキルを伝授してくれるように思えるが、実際にはそうではなく、王道の思考法を論理的に解説した本となっている。
本書のエッセンス
・PDCAを回し成果に結びつく変数を見つける
・行動の絶対量が成長に結びつく
仕事ができる人
「仕事ができる人」になる方法論について語る前に、「仕事ができる人」とはどのような人か定義する必要がある。
ここでいう「仕事ができる人」とは、「評価者からの評価を得られる人」です。(p.74)
評価者つまり上司に評価される人材が「仕事ができる人」であると、筆者は定義付けている。
その人のスキルやコンピテンシーが「仕事ができること」につながっているかどうかは文脈によっている。そしてこの文脈とは上司が決めることであるから、評価者から評価される=仕事ができるという定義には違和感がないことが分かる。
では評価者から正当な評価を得るためにはどうしたらよいだろうか。
それは評価基準を定量的に定めて合意をとることである。
日本の多くの企業ではいまだに定性的な評価制度が残っており、評価結果に不満が残ることがしばしばある。
あらかじめ評価者と評価基準のすり合わせを行い、定量的に定めた基準によって機械的に評価が下されることで、お互いに不満のない評価制度を実現できる。
数値化の鬼となり成果を出す
評価制度が無事整えられたら、次は成果を出す番になる。
成果に結びつく要素は無数にあり、それぞれの要素がそれほど成果に寄与するかは事前にはわからない。
[成果] = β + α1[要素1] + α2[要素2] + ・・・
効率よく成果を上げるためには、より成果に結びつく要素(変数)を見つけ、そこにリソースを投下していく必要がある。
最も成果に結びつく変数を見つけるために有効な手段となるのは、何も目新しくないPDCAサイクルだ。
とにかくDo
PDCAサイクルのなかで、最も筆者が重視しているのがDoである。
試行回数こそが重要な変数を見つける確率を上げ、成長につながっていく。
数を増やすことが基本中の基本である。
したがって、目標となるKPIはDoの絶対量を増やすものであることが望ましい。
もし努力の方向が間違って入れば、上司にフィードバックをもらいながらCで軌道修正していけばよい。一度Plan設定をしたならば、まずはとにもかくにも走ることが重要である。
自身で目標を振り返るときにも、数値を基準とし感情を介入させてはいけない。
例えば目標が10回であり、達成できたのが8回だとしたらそれは未達である。自分なりにがんばったかどうかは達成には関係なく、2回分未達という事実だけがそこにある。
なぜ2回分未達だったのか分析し、次の行動につなげていくことで成長できる。
割合にこだわり出したら黄色信号
行動の絶対量ではなく、割合(成功率、達成率)を持ち出し始めたら黄色信号である。
成長のためには絶対量がかかせない。しかし、失敗したくない=成功率を上げたいという誘惑から行動量が減り、成長の鈍感に繋がっていく。
「数値化」にこだわることで現実を客観的に観測でき、健全にPDCAサイクルを回していくことができる。
数値はものごとを曖昧なままにすることを許さない。この意味で本書は『すごい言語化』と共通しているなと感じた。
数値にしろ言語化にしろ、わかったふりをせずに常に明確に物事をとらえられるようにしていきたいと感じた。