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【ビジネス書の定番】グロービス経営大学院『MBA クリティカル・シンキング』

オススメ度:★★★★☆

本当に思考能力を高めるためには、考える習慣を身につけ、日頃から訓練を続けていく必要がある。実際にやってみることこそが、「できる」につながるのだ。(p.15)

グロービス経営大学院『MBA クリティカル・シンキング』

 

 本書のエッセンス
・クリティカルシンキング=論理的思考の方法論 × 正しく考える姿勢
・方法論だけでなく姿勢も大事
・「最後の藁」に安易に飛びつかない

グロービス経営大学院による論理思考の定番テキスト。

本書の内容はざっくり[考える枠をつくる][論理展開を考える][分析する]の3ステップで進んでいく。

 

クリティカル・シンキングとは

そもそもクリティカル・シンキングとは何であろうか。

一般的にクリティカル・シンキングとは「批判的思考」と訳されることが多いが、グロービスの定義では「ビジネスパーソンが仕事を進めるうえで役立つこと」にフォーカスしている。

この前提をおさえた上で、クリティカル・シンキングとは「論理的思考の方法論」×「 正しく考える姿勢」だといえる。

論理的思考の方法論(テクニックやフレームワーク等)と正しく思考するための姿勢(心構え)を組み合わせることにより、ビジネスにおいて「物事を正しい方法で正しいレベルまで考える」ことを実現しようとしている。(p.8)

 

 

ピラミッド・ストラクチャー

考える目的・枠組みとその根拠を視覚化するツールの一つが「ピラミッド・ストラクチャー」である。

 

まずイシューから論点となるキーメッセージを引き出し、頂点の結果を記載する。

その次に何が言えれば[結果]を主張できるかという問いを立て、その問いの答えを[原因]を探していく。

見つかった[原因]を要素ごとにグルーピングし、原因①②③…を記載する。グルーピングの際には「それらの要素から上位の要素が言えるか?(解釈が正しいか)」を「So What?」という問いで精緻化する。

また逆に結果に対する原因が正しいかを確認するため「なぜそれが言えるか、それは本当か(Why?True?)」を繰り返しロジックを強固なものにしていく。

 

 

その他の思考術

演繹法・帰納法の落とし穴

思考パターンの基本として演繹法と帰納法がある。帰納法はいくつかの事象から法則を抽出し、演繹法は事象(原因)と法則から結果を導く。これら2つの思考パターンには関係性があり、帰納法で導かれた法則が演繹法によって利用・検証される。

演繹法・帰納法ともに有益な思考パターンであるが、その利用には注意点がある。

①間違った情報
②隠れた前提
③論理の飛躍
④ルールとケースのミスマッチ
⑤軽率な一般化
⑥不適切なサンプリング
②-④ 演繹法
⑤-⑥ 帰納法

 

最後の藁

「最後の藁」とは海外のことわざからきている。限界寸前まで疲弊したラクダに藁を乗せたところ、ラクダが倒れてしまった。人々はラクダを倒れた原因をここまでの疲労の蓄積ではなく、最後に藁を乗せたことだと考え非難したというものだ。

物事を原因を本質から考えず、トリガーにすべての原因があると考えてしまうという錯覚を示している。

 

このような錯覚は笑い話ではなく実際によくみられる。

例えばあることをきっかけに妻が起こりケンカが勃発した際、実際にはこれまでの我慢の積み重ねが原因であるにも関わらず、夫は「最後の藁」だけを原因だと考え齟齬が生まれるというのはあるあるだと思う。

 

ビジネスにおいても目の前の原因と思しきものにすぐに飛びつくのではなく、一度立ち止まって本質から原因を調査することが大切である。

 

仮説思考

思考過程においては常に事実が存在するわけではなく、とりわけ不確定要素に対する説は仮説となる。「良い仮説」をつくるためには、以下の要素を押さえておくことが重要である。

①経営に関する知識
②特異点を探知するセンス
③質の高い仮説を目指す志

 

***

 

思考の基礎が網羅的に学べる良本であった。他の思考方法論と併せて実践していくことで血肉としていきたい。