本と絵画とリベラルアーツ

※弊サイト上の商品紹介にはプロモーションが使用されています

『白雪姫』

オススメ度:★★★★★

バラのように赤い唇、つややかな黒髪、その肌は雪の白さです

 

『白雪姫』

f:id:K_ArtforB:20220914010335j:image

 

あらすじ

ある国に自分が最も美しくなければ許せない女王がいた。女王は「魔法の鏡」に誰が一番美しいか問い、"それはあなたです"と言われることに満足していた。

しかしある日、「魔法の鏡」は"女王より美しい若い娘がいる"と言った。それは娘の白雪姫であった。激昂した女王は狩人に命じ白雪姫を殺そうとするが、狩人は白雪姫を殺すことができず、代わりに森の奥に逃がす。

白雪姫は森の動物たちに導かれ、小人の住む家を見つける。白雪姫はそこで幸せな時間を過ごすが、白雪姫がまだ生きていることを知った女王は醜い老婆の姿に化け、再び白雪姫を殺しにやってくる。

 

感想

子どもの頃、高い熱を出すと決まって見る怖い夢があった。真っ暗で狭いトンネルを抜けると、その先に怖い顔をした木のお化けが、道の脇に並んでこちらを睨んでいる。身体は台車のようなものに固定され、逃げることも出来ずひたすら怖い木の間を進み続ける。最後は恐怖に耐えきれなくなり気絶すると、汗をびっしょりとかいた現実で目を覚ます。

のちにこのシーンは映画『白雪姫』と、ディズニーのアトラクション『白雪姫と七人のこびと』の記憶が混ざってできていることが分かった。

 

白雪姫が狩人に追いまくられて森の中へ逃げるシーンは、今見てもかなり怖い。

白雪姫は恐怖から、暗い森の中で木々や動物が怪物に見えてしまいパニックに陥る。パニックになったことで更に更に空目する。最後は恐怖のあまり気を失ってしまう。

 

この森に対するイメージはドイツの森のイメージからきていると思われる。ドイツには「黒い森」を意味する、シュヴァルツヴァルトという大きな森がある。その名の通り密集する木々により森は黒く見え、中世のドイツ人たちはこの森に畏怖してきた。

こうした森のイメージはドイツ人の創作物にも影響を与えてきた。『赤ずきん』や『ヘンゼルとグレーテル』といったグリム童話でもそのイメージが確認できる。

『白雪姫』も原作はグリム童話であり、同様の森のイメージを継承していると考えられる。

ディズニーの森の描写がうますぎるので、小さい頃の自分がトラウマになったのも無理がないなと思う。

 

さて私がこの映画で最も衝撃を受けた点は、魔女の嫉妬の描き方である。

魔女は自分より娘の方が美しいと分かると、狩人に命じて娘を殺そうとする。それが失敗に終わると、今度は自らが醜い老婆の姿に変身し殺害を目論む。

自らが一番美しい存在になると言う目的のために白雪姫の殺害(手段)を企てたにも関わらず、手段を達成するために目的を見失ってしまっている。強い執着が人を盲目にする様がありありと描かれているところが最も印象的であった。