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【感想】『王様の剣』は作画がいい【ディズニー】

オススメ度:★★☆☆☆

1964年公開のディズニー長編作品。

 

イギリスのアーサー王伝説がもととなった作品で、少年アーサーが伝説の王様の剣を抜くまでを描いている。

『王様の剣』



感想

1964年、東京五輪が開催された年に公開されたディズニー映画。アーサー王伝説を元にした小説『永遠の王』の一部を原作として作られている。

私のこの映画のお気に入りポイントは、その絵柄・画風にある。

この映画と近い時期に作られたアニメーション映画には、『眠れる森の美女』、『101匹ワンチャン』、『ジャングルブック』、『おしゃれキャット』などがある。これらの映画は線が手書きのように多重になっていて、柔らかい印象を受ける。

私は小さい頃『101匹ワンチャン』が大好きで、無限ループで見ていた。そのため私の中のディズニー映画の絵柄のイメージはこの時期のものが印象深く、『王様の剣』も疑似的な思い出補正で懐かしく感じる。

またこの時期の作品の特徴的な点として、動物が多く登場することが挙げられる。『眠れる森の美女』のフクロウ、『101匹ワンチャン』のダルメシアン、『おしゃれキャット』のネコ、そして『王様の剣』では魔法使いが魔法で様々な動物に変身し、登場する。

 

最近のディズニー映画は動物であってもそれぞれに個性が与えられ、「ディズニーっぽい犬」を想像しろも言われても、人によって思い浮かべるものがまちまちだと思う。一方『王様の剣』を含む、ディズニー初期の動物たちの絵柄はだいぶ似通っている。多少の違いはあるが、最初の長編作品である『白雪姫』から、1970年代の『くまのプーさん』あたりまでこの傾向が見られる。おそらく目の描き方や身体の構造が共通していることが、全体的なイメージに統一感を与えているのだろう。

『王様の剣』に出てくる動物も「他で見た覚えあるなあ」というものが多々ある。例えば鳥のアルキメデスは『眠れる森の美女』のフクロウとよく似ているし、魔法使い同士の対決で出てくる動物は『ジャングルブック』の動物たちとよく似ている。

私はこの時期の動物の書き方が大好きで、また見たいなとずっと思っているが、すっかり立体感のある質感にシフトしてしまった今ではもう見られることはないだろう。

 

このように作画・絵柄については私の大変好みで素晴らしい作品であったが、ストーリーについては贔屓目に見てもイマイチだと感じた。特に起伏のない流れに、終わりもあっさりしていて拍子抜けした面が否めない。

良かったと思うのは、魔法使いのマーリンが自然主義(科学主義)という設定で、これは目新しさあって良かった。ヨーロッパの世界観を自然主義のアメリカ人が調理したらこうなるのかと納得させられた。

ただその設定も中途半端で、結局戦いは魔法で行ったり、科学の力があまり生かされていなかったのはもったいないなと感じた。

 

西洋の大ストーリーである「アーサー王物語」という素材がいかしきれていかないのが残念だったが、とにかく作画は好みでよかった。