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負けている台を選べば必ず勝てるのか?【メダルゲーム】

先日知り合いとの会話の中で「メダルゲームは長く続けていれば平均に収束するから、負けている(外れている)台を選んで遊べば必ず勝てる」という話がありました。たしかに感覚的にはもっともらしい主張ではありますが、統計学的には違和感を覚えました。というのも、一回一回の事象が独立しているとき、いくらそれまで負けていようともそのあと勝ちが続くとは言えないからです。

そこで今回は実際のところ負けている台を選べば勝てるのか、Rを用いてシミュレーションを行うことにしました。

 

負けている台を選べば必ず勝てるのか?

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今回のシミュレーションでは勝率が25%で、勝ったときの利得が3,負けたときの利得が1、期待値0としています。負けている台を選択し、台の累計利得が0になったところで打ち止めとします。

以下のグラフはある台を1000回打った時の累計の利得の推移を示しています。

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負けている台の選び方

まずこの仮説を検証するために、負けている台を選ばなくてはいけません。しかし設定によって「負け具合」は異なりますので、とりあえず1000×100回シミュレーションを行い、起こりうる負け具合を確認します。

この負け具合を小さく設定し過ぎると得られる利得が小さくなりますし、大きすぎるとそもそもその負け具合が発生しなくなってしまいます。

結果、連続1000回のうち最小値の分布は以下のようになりました。

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この結果より、-60であれば起こりうる水準と言えそうです。

 

いざ、シミュレーション

以上の結果を踏まえ、-60(緑線)になった時点でその台を打ち始め、0(灰色線)になったところで打つのを止め利得60を得ることを狙っていきます。

もし0に達しなかった場合は10000回まで行い、最終的な得点を利得として受け入れます。例えば、-60に達してから一度も0にもどることなく10000回目で-130までいった場合、得られる利得は-70になります。

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最終的に得られた利得は以下のヒストグラムのようになりました。数だけみると、-60→0に戻り狙い通り利得60を得られたことが多いことが分かります。

1000回のうち、一度も-60に達しなかった(打たなかった)のが272回、狙い通り利得60を得られたのが510回、負けたのが218回となりました。平均は+1.86でした。

勝率でいうと70.1%なので、まずまずという結果になりました。ただ平均利得に関して言えば0に近い数値です。これは勝ちの天井が60であるのに対し、負けは天井がないことが原因だと考えられます。

 

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負けてる台じゃない場合

シミュレーションの結果より、負けている台を選んだ場合7割程度の勝率になることが分かりました。しかしこれだけでは負けている台が良い台とは言えません。負けている台が優れていることを明らかにするためには、他の台との比較が必要になります。

そこで最後に台の得点が初期値のときにうちはじめ、利得60が得られた時点でやめるという戦略をシミュレーションしていきます。もし利得60が得られなかった場合は、さっきと同様に10000回で打ち止めとします。

 

結果は以下のようになりました。平均利得はやや負けている台を下回っていますが、勝率は74.9%と5%ほど負けている台の時を上回っています。

しっかりと検定をしたわけではありませんが、正直ほとんど変わらないといっていい水準だと思います。

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今回のシミュレーションはとてもシンプルな前提に基づいて行ったため、実際のゲームの設定とは乖離があると思われます。ですが、負けている台を選んだからといって、必ずその後勝つことができるという考えは誤りだとわかります。

もちろん大数の法則から試行回数を十分に増やせば期待値に収束することは確かですが、その回数は膨大です。ミクロのレベルでは事象同士は独立で無相関であることから、それまでの戦績とその後の戦績には関係がないと言えるでしょう。

 

結論としては、どの台を選んでも得られる利得は変わらないわけなので、自分が当たりそうだと感じた台を選べば(気分的に)良いのではないでしょうか。