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【月300冊読む読書術】佐藤優『読書の技法』【感想】

オススメ度:★★★★★

「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。」

(p.58)

 

博覧強記で知られる元外交官の佐藤優氏。 月平均300冊、多い月には500冊もの本を読む佐藤氏はどのように本を読み、その内容を血肉に変えているのだろうか。この本では読み方から始まり、基礎知識の習得法や本の選び方までが語られている。

 

熟読・速読・超速読

この本のエッセンスはなんといっても熟読・速読・超速読という筆者独自の読み方であろう。すべての本を同じ読み方で読むのではなく、本の内容・目的に応じて三つの読み方を使い分けていく。ここでの速読とは一般的に言われている「流し読み」などのテクニックによるものではないことを注意しておく。

熟読…読書ノートをつくりながら3周かけてじっくり読む
速読…一冊30分で読み、その後30分かけて読書ノートを作成する
超速読…一冊5分でよむ

筆者はこの三つの方法を使い分けることで月に300冊もの本を読破している。具体的な内訳としては熟読(3, 4冊)、速読(50~60冊)、超速読(240冊~250冊)と圧倒的に超速読で処理している本の割合が多い。

たった5分しかかけない超速読では何も頭に残らないのではないかという心配があるが、実はこの超速読は十分な理解を目的として行うものではない。超速読の一番の目的は、じっくり読むべき本かどうかを見極めるという点にある。超速読で読むべきと判断された本は熟読、速読に回されることになる。

 

佐藤氏がこのような本の読み方をする背景には「時間が有限である」こと、彼が功利主義者であることがある。人が一生のうちに読める本の数は限られている。だからこそ私たちは本当に向かい合うべき本を厳選し、その本を読む効果が十分得られるよう熟読しなければならない。

『Think clearly』の著者であるロルフ・ドベリも同書のなかで生涯の中で熟読する本の数を決め、2,3度繰り返し読むことを推奨している。

 

目的意識をもって読む

この本でもっとも印象に残ったのは冒頭の引用にも紹介した

「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。」(p.58)

 という部分で、これは学術書を読むうえでの目的を端的に示されている。

 

もちろん読書には小説のように娯楽的な要素や勉強を想定しない楽しみ方もあるが(この点についても本書では触れられている。)、私が今目指している読書は知識を積み重ねていくための読書である。もし知識を蓄積するための読書であるならば、その知識を現実世界にいかしていかなくてはただの「物知り」になってしまう。

 

ただの「物知り」に陥らないためには目的意識をもって読書に臨むことが重要になる。本書でも速読する際の極意として目的意識を持つことが挙げられている。また本書では『詳説 政治・経済』を用いた勉強法が紹介されているが、この中でも

ビジネスパーソンの場合、テーマは仕事をする上で、現在もしくは将来必要なる事項がテーマとなる。今日のための外国語や歴史というような、動機があいまいなままだらだら学習することは時間と機会費用の無駄なのでやめた方がいい。(p.171)

目的意識をもって学ぶことの重要性が指摘されている。

ビジネスや勉強している際には目的意識を持つことは普通であるが、これが読書になるとついつい忘れがちになる。特に内容が難解になるについ「難しいことを知っている」という優越感ばかりが先行し、本来の意味を忘れてしまう。

 

 

私なりの読書ルーティン

本書の内容を踏まえて、私なりの読書法を考えてみた。この方法は今まで自分が実践してきた方法に佐藤氏の技法を加えて改良したものになる。完全に自分用につくったので一般性に欠ける部分があるかもしれない。

《私の読書ルーティン》
⓪読みたいテーマを考え、本を選ぶ 
①タイトル・前書き・目次・結論を読む
②その本を読む目的を考える
 →読書メモに書き込む
③目的を踏まえて本文を一読する  
 →気になった箇所・重要な箇所をコメントとともにメモする
  この時自分の意見だけでなく、前に読んだ本についても触れる
④メモした部分を再読する
 →さらにメモ・コメントする
⑤できあがったメモを再編し、ブログにまとめる
(⑥人に内容を話してみる)

 

昔から行われてきた読書という行為ひとつとっても、方法論を意識するかしないかでその効果は大きく変わってくる。もしあなたが今まで漫然と読書をしていたならば、ぜひこの本を読んで技法を学んでみてほしい。これらの技法を習得したあかつきには、今までよりワンランク、ツーランク上の読書体験ができるに違いない。