なんでせっかくの休みに本なんて読まなくてはいけないのか。
全国の学生の8割くらいはきっとこう思っているだろう。
夏休みの宿題の定番、読書感想文。
プリントやワークならば最悪答えを写していけば終わるが、読書感想文となるとそうはいかない。
大前提として、本を一冊読まなくてはいけない。
いや、それ以前に手ごろな本が家になければ図書館で借りるか、本屋まで買いに行く必要もある。セミしかよろこばないような炎天下のなか、冗談じゃない。この時点で半分くらいの人はげんなりする。ちなみにセミは夏の代表みたいな顔しておきながら、実際は暑さに弱いらしい。
いざ図書館や本屋にたどり着いても、今度は本選びが待っている。
一生かかっても読み切れない本の山から、読書感想文に向いていて、読みやすくて、それなりに面白いものを選ばなくてはならない。これでは心が折れるのも無理はない。
私は中学2年生の時、読書感想文の宿題に手を付けぬまま夏休みの最終日を迎え、苦肉の策として家に有ったプログラミングの本で感想文を書いて国語の教師に嫌われた。
この記事では塾講師の経験とこれまでの読書体験から、読書感想文向きで、読みやすい作品をピックアップした。選びやすいよう、読みやすさと読書感想の書きやすさについて5段階で評価してある。
またそれぞれのリンクから具体的な感想に飛べる。
読書感想文にオススメの作品7選
角田光代『キッドナップ・ツアー』
読みやすさ:★★★★★/書きやすさ:★★★☆☆
キッドナップとは誘拐のこと。つまりタイトルは「誘拐ツアー」。
タイトル通り、主人公である小学5年生のハルは、夏休みの初日にユウカイされてしまう。その犯人はなんとハルのお父さん。はじめはなんだかぎこちなかったハルとお父さんの関係が、ユウカイを通して次第に変化していく。夏休みにぴったりの作品。
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
読みやすさ:★★★★☆/書きやすさ:★★★★★
ブレイディみかこの息子である「ぼく」の中学生活の最初の1年半をえがいたエッセイ作品。日本にいるとなかなか自分が日本人であることを意識することは少ないが、海外に行けばイヤでもそれを意識させられる。差別や格差など、読書感想文が書きやすい作品になっている。
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
読みやすさ:★★★★★/書きやすさ:★★★★☆
学校に足が向かなくなってしまった中学生のまいは、初夏の1ヶ月ほどを"西の魔女"のもとで過ごし、魔女になる手ほどきを受ける。ファンタジーのようなタイトルだが、中身は誰しもが共感できる身近な物語。自分に自信が持てなくなってしまった人にぜひ読んでほしい作品。
湯本香樹実『夏の庭』
読みやすさ:★★★★☆/書きやすさ:★★★★★
小学6年の3人の少年たちが、「人が死ぬところが見たい」という純粋な好奇心から近くに住む独居老人を観察する。ひそかに観察していた3人だったが、ある日おじいさんに見つかってしまい、交流がはじまる…。中学生に1冊オススメするならこの本で決まり。
山田詠美『ぼくは勉強ができない』
読みやすさ:★★★★☆/書きやすさ:★★☆☆☆
勉強よりもっと大事なことがあるんじゃないか、学校ってなんだかおかしくないか。そう思う人にオススメの作品。バーで働く年上の女性と付き合っている高校生:時田秀美が素直に生きるさまを描いた作品。
恩田陸『蜜蜂と遠雷』
読みやすさ:★★★☆☆/書きやすさ:★★★☆☆
天才・鬼才がひしめくピアノコンクール。だれもが主役であり、誰かのライバルである舞台でドラマが生まれる。上下巻と他の本に比べると少し長いが、読み終わった後にはすばらしい映画を一本見終わったときのような感覚が残る。本屋大賞受賞作品。
宗田理『ぼくらの七日間戦争』
読みやすさ:★★★★☆/書きやすさ:★★★☆☆
ある夏休みを翌日に控えた暑い夏の日、東京の下町にある1年生のクラスの男子生徒全員が忽然と消えてしまった。大人たちは事故か誘拐かと困惑する。彼らはどこに消えたのであろうか。大人たちの心配をよそに、彼らはある場所に集まっていた。それは荒川の河川敷に放置されたある工場跡。彼らはその工場跡にバリケードをつくり、立てこもっていた!
そして彼らはそこを“解放区”と呼び、理不尽な大人たちに対し七日間にわたる戦いを繰り広げる。
ワクワク度合ならぶっちぎりの1位。ぜひ高校生になる前に読んでほしい作品。