宅浪は失敗する。
多くの教師や親はそう言うと思います。
私も高校時代教師から散々聞かされました。
正確な数字があるわけではありませんが、現状宅浪は合格率が壊滅的です。
そもそも、浪人自体がそんなに成功率が高いものではありません。浪人すればとりあえず現役よりも成績が上がると考えている人もいるようですが、実際はそんなことはありません。
通説では、浪人の1/3が成績アップ、1/3が現役と変わらず、そしてもう1/3が現役時代よりも成績が落ちると言われています。気を抜けば成績が変わらないどころか、落ちてしまう心配まであるわけです。
予備校に通っている人は平均してこれよりはいい成績を出していると思いますので、宅浪はさらにひどいと考えられます。
確率だけ見れば、大手の予備校に通うのが最も有名大学への合格率が高いのは明らかです。塾の言うことをしっかりと聞き、言われたことちゃんとやってりゃそれなりに成績は上がります。それで成功した友達もたくさんいます。
これだけみると、宅浪がとても無謀でバカげた選択肢に見えます。素直に合格したいならばあれこれ考える前に予備校に通ってしまうのが賢明なのかもしれません。
ですが、私は塾に行かないことを選びました。
私の周りには予備校に通っていない人が多かったのも決める要因だったかもしれません。
これが予備校に通うよりいい選択だったかどうかはわかりません。もしかしたら予備校へ通っていたらもっと上の大学に受かっていたかもしれません。
あれこれ後から考えられることはたくさんありますが、総評として私は宅浪にとても満足しました。
宅浪のメリットやデメリットはいろんなサイトで語られていますが、今回は自分が実際に感じた宅浪の良さについて触れていきたいと思います。
予備校に行くか家で勉強するか悩んでいる受験生にはぜひ読んでもらいたいです。
お金がかからない
まず何と言っても目に見える一番の違いはお金のかかる額です。
予備校に通えば通年で80万以上、夏期や冬期の講習も含めると100万をゆうに超えてしまいます。これは国立大学の入学費が約28万円、授業料が約53万円なので、予備校に通った場合に一年にかかる額は国立大学に入った場合よりもずっと高いことになります。
金銭的事情から宅浪になっている人も多いかもしれません。
その点宅浪では、受験のためにかかるお金はテキスト代と模試代くらいになります。
他に通信教材などを使っていればこれに上乗せになりますが、それでも大手の予備校と比べると金額に大きな開きがあります。
私の場合は一浪の時に近所の自習室を借りていたので、それが一か月で1万円程度かかりました。
自習室ではまわりがみんな勉強しているので自然と集中でき、また席が確実に確保されているので席争いの心配もなくとても快適でした。調べてみると最近ではドリンク飲み放題がついている自習室もあるということなので、もし自宅以外で勉強する場所を確保したいという人は利用してみてはいかがでしょうか。
自分の実力を試せる
多くのサイトでも言及されている宅浪のメリットといえば時間が自由に使えるということでしょうか。
当然予備校に入れば自分の時間の一部を授業やテストのために制限されることになります。
自分にとって必要なテストや有意義な授業であれば問題ないですが、必ずしもためになるとは限りません。貴重な受験の時間を無駄なことに使うのは避けたいですよね。
そもそも、必要な授業であっても自分の都合で時間を動かせないのは私にとってはマイナスポイントでした。
自分の時間を自分でコントロールできないのは人によってはそこそこの苦痛になります。
勉強の基本は、分からないところを見つけて克服することの繰り返しです。
分からないところを見つけるためには、授業を受けるよりもテキストを読んだ方が圧倒的に早いです。テキストでわからないとこを見つけ、分からないところだけを教えてもらうのが最も効率的です。
分かるところをいつまでもやっていてはしょうがありません。
予備校の授業ではそこまで個別的には対処できないので、必然的に無駄が生まれることになります。
この点では映像授業がとても強みを発揮します。
有名講師の効果的な説明を、必要なところだけ享受することができます。
自宅で勉強しながら映像授業を利用すれば、好きな時間に質の高い説明を受けることができ最も効果的だと言えます。
また自分自身で勉強計画を立てることになるので、勉強の結果である学力の責任を完全に自分一人で負うことになります。
これは辛いことでもある一方で、自分の実力をいかんなく発揮できるということでもあります。
自分で志望校合格に向けた戦略を立て、定期的に問題点をフィードバックし、成果を上げていく。これをすべて一人でやるならば、その結果もすべてあなたの実力に間違いないのです。
ここでは学力だけでなく、自己マネジメント能力や自己分析力、忍耐力を問われます。
宅浪受験は、本当の自分の実力を試すことの出来る絶好のチャンスなのです。
人間関係に困らない
予備校のもう一つの問題点として、知り合い同士のなれ合いがあります。
友人はうまく付き合えれば切磋琢磨できる仲間になりますが、付き合う相手を間違えると堕落の入り口になりかねません。
私の先輩の通っていた予備校ではゲームセンターが流行して、集団で通い詰めるようになってしまったといいます。
中には親にせっかく出してもらった夏期講習の費用をすべて風俗に溶かしてしまったという人もいるそうです。
付き合う相手を選ばないと人生を棒に振ることににもなりかねません。
逆にもし予備校の中に知り合いがいないとしても、周りがわちゃわちゃしている中で、一人で食事をとり、それらを眺めているのもなかなか苦痛です。
一方で、浪人中の友人ということになると宅浪にも問題があります。
よほど一人が好きな人を除いて、長い期間誰とも会わないというのは精神衛生上不健全極まりないです。大多数の人は長期間友人と会わなければ次第に病んで行ってしまいます。
私は幸運なことに意志の強い宅浪仲間に恵まれていたので、気がめいることもありませんでしたが、宅浪する上で気を付ける点ではあります。
自分と語り合える時間が十分にある
私が思う宅浪で時間ができることの最大のメリットは、自分と語り合える時間が十分にあるということだと思います。
時間があれば、いろんなことを考えます。
今の勉強法は正しいのか、浪人する意味は本当にあったのか、宅浪でよかったのか、なぜ大学に行きたいのか、大学で何をしたいのか、大学を卒業した後何がしたいのか、自分の存在意義とはなんであろうか。
考えなくてはいけないけれど、時間がなければじっくり取り組むことができない命題と腰を据えて向き合う時間が生まれます。
この命題ひとつひとつと向き合っているうちに勉強へのモチベーションが上がるとともに、自分の人生というものも少しずつ見えるようになってきます。
自分の人生に責任を持たなくてはならないということに嫌でも気が付くようになります。
今私が大学でやっていることや、やろうとしていることの多くは宅浪時代に考えていたことです。
もし宅浪していなかったら今ほど大学で本を読んでいなかったでしょうし、勉強に熱心に取り組んでいなかったと思います。
現役で大学へ進んでしまっていたら適当なサークルで4年間酒を飲んで終わっていたかもしれません。
そういう意味でも、自分と向き合う時間をつくれた宅浪時代は自分の今までの人生の中でも有意義であったと言い切ることができます。
宅浪は確かにつらいです。
誘惑は多いですし、もし誘惑に負けたとしてもそれを咎める人は誰もいません。
全てが自己責任です。
勉強に身が入らず自己嫌悪に陥るときもあります。
それでも自分考えた戦略で自分の実力を上げ、困難を乗り越えていくことは必ず自分自身の力と自信になります。
予備校に黙ってしたがって行くのは簡単です。
しかしこの受験は誰のものなのでしょうか。
誰がやりたいと思い、誰のためにやるものなのでしょうか。
もちろん自分の意志で決断し予備校に行くも立派だと思います。
ただ、宅浪という選択肢が不利であるのは数字上だけのことであるということは認識していただけるとありがたいです。
一人でも多くの受験生が自分自身の人生に責任を持ち、自分自身で決断し、志望する大学に合格することを心より応援しています。