本と絵画とリベラルアーツ

本と絵画の解説

【本の紹介】えらいてんちょう「しょぼい起業で生きていく」

前回の冬に大学の近くの本屋で平積みされている「しょぼい起業で生きていく」を見つけました。筆者はえらいてんちょうさん。

 

不思議なタイトルと につられてついつい手を出しました。

そしてページをめくり、いきなり最初の部分で心を射抜かれました。

「朝起きて満員電車に乗って通勤するのが嫌だから就職せずに起業する」

そしてその考え方に共感できすぎてめちゃくちゃテンションあがりました。

 

なぜ嫌なことを昔から、周りがそうだからやらなくてはいけないのだろう。なぜ会社に勤めるのが当たり前みたいになっているのだろう。逃げるわけじゃなくて、他の選択肢として起業するのは選んではいけないのだろうか。大きなビジョンや高尚な理念がなければ起業してはいけないのだろうか。

常々モヤモヤと感じていました。

 

「しょぼい起業で生きていく」の中では、そういった現在の日本で生きにくいと感じている人に、資本主義のシステムの中にいながら今までとは違った生き方のヒントを与えてくれています。

 

この本で個人的にメモを取った4箇所についてまとめてみました。

 

生活の資本化

私たちは、生活していくためにお金を稼ぎ、その中から生活に必要なものを買い、またお金を稼ぐというサイクルの中に生きています。

 

稼ぐ→生活の順番は変わることがないので、生きていくためには一生この中で消耗し続けることになります。

 

「しょぼい起業で生きていく」では、これとは全く反対の生活→稼ぐという従来とは180度転回した発想で生きていきます。

 

生活で稼ぐとはどいうことでしょうか。

 

私たちは、生活を営んでいくなかで余剰を生み出したり、労働にあたる行動をしたりします。

具体的には、夕飯を自分たちで消費できる分より作りすぎたり、通勤で遠くまで移動したり、穴の空いた洋服を直したりします。

 

もし余った料理を人に売ってみたり、通勤のついでに人にものを届けたり、近所の人の服を直してみたらどうでしょうか。

これらは現在の料理人や運送、洋服リフォームとやっていることが同じなのです。

 

しかも元々は自分が必要な分にプラスαしているだけなので、コストも極めて小さくて済みます。

 

生活の資本化は原始的でありながら、極めて合理的な考え方なのです。

 

やりがいの三段階

 何年か前のドラマ「逃げ恥」ではガッキーがやりがい搾取を提起して一時期話題になりました。

やりがいという言葉を無理矢理押し付けて労働力を搾取する人間疎外に対する問題は、ブラック企業が蔓延する今の世の中ではなかなかセンシティブな話題です。

 

一方で、えらいてんちょうはこの本のなかで「やりがい」を質の違いから3つに分類し、正しいやりがい搾取と間違ったやりがい搾取があることを述べています。

 

まずやりがい搾取の第一段階は、友好関係を前提としたやりがいで他者が完全なる自由意志のもとでやりがい(得意なことややりたいこと)を提供してれる段階です。

イメージとしてはおせっかいな人でしょうか。仲人を率先して努めてくれたり、余った料理をいつも分けてくれるおとなりさんなんかがこれに当てはまります。

 

やりがい搾取の第二段階は、第一段階と同じように友好関係を前提とし、今度は依頼したことに対して応えてくれる関係です。

日曜大工が趣味の人に犬小屋をつくるのを頼んだり、着付けが得意な人が着付けを手伝ってくれたり、頭のいい人が勉強を教えてくれたりという場面です。

 

依頼してやってもらうわけですが、やってくれる本人はやったことにやりがいを感じて満足してくれるのでそこで対価が成り立っているわけです。

 

この本の中では、これらの2パターンのやりがい搾取を正しいやりがい搾取と定義しています。

 

一方で、友好関係もないままに得意だから、できそうだからという理由だけで無理矢理ものを頼んでやってもらおうという人がいます。

ツイッターなんかでもイラストをあげているひとに無料でイラストを描くように頼んだり、将来役に立つから、苦労は買ってでもするべきだから、という理由で仕事をおしつける人がいます。

これは間違ったやりがい搾取です。

 

正しいやりがい搾取で人を動かすためには、友好関係が大前提なのです。

 

起業家に必要なもの

この本の後半1/3はPha氏と借金玉氏との対談になっています。

 

借金玉氏との対談のなかで、二人が起業家に必要なものを話し合い、共感している場面があります。

起業家に最も必要なものとは無から信用をつくり出す技術だといいます。

 

出資者がお金を出すか決める基準は、面白そうであることと信用があるかということです。

例えどんなに素晴らしいアイデアであっても信用がないところには出資されません。何もない人が信用を生み出すためには実績をつくり出すしかないのです。

 

この話のなかで、借金玉氏がむかし草むしりを依頼した相手がおおものになったというエピソードが出てきます。

この人もきっと初めは信用がなかったに違いありません。草むしりから始まった信用を雪玉を大きくするように大切に育てた結果、今の地位までたどり着いたのです。

 

何もない人はまずは体を張って、小さなことからでも信頼を得ることがアントレプレナーとしての第一歩となるのです。

 

またこの対談では起業家に必要な他の素質についても言及しています。

それは転ぶ前提でやるということです。そして転んでも死なないことが重要です。

 

無から何か始めようという人がなにかやればまず転びます。

しかし転ぶことにびっくりしてはいけません。転んで当たり前なのです。

 

転んで死なないためには転ぶことをあらかじめ想定しメンタルを守ることと、一回転んだら死んでしまうほどの投資をしないことです。

小さい子を公園に連れて行くのに綺麗で高価な絶対に汚してはいけない服を着せてしまえばオチが見えてしまいます。

 

小さなことから、転ぶ前提で、とりあえずやることが無から抜け出せる手段なのです。