本と絵画とリベラルアーツ

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終了目前のハプスブルク展に行ってきました【感想】

東京・上野の国立西洋美術館で開催中(2020年1月26日(日)で終了)のハプスブルク展に行ってきました!

 

ずっと行きたいと思っていたのですがなかなか予定が合わず、今回なんとか時間を作り訪れることができました。

 

今回は絵画展の解説ではなく、純粋に感想について書いていきたいと思います。

 

ハプスブルク展に行ってきました

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展覧会の概要

まずは概要から

会場:国立西洋美術館(東京都)

開催期間: 2019/10/19(土) 〜 2020/01/26(日)

開館時間:9:30〜17:30(金・土曜日は20:00まで)

休館日:月曜日(この記事公開以降終了までなし)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

ハプスブルク展|600年にわたる帝国コレクションの歴史

 

 

感想

王家の展覧会のだけあって肖像画が多かったのですが、その中でもモデルや画家によって雰囲気がまったく違うのがとても面白かったです。

 

多くの人だかりが出来ていたのがベラスケスによる肖像画です。

マネに「画家の中の画家」とまで呼ばれていてたベラスケスは独特の背景表現によって人物にスポットが当たるような作品を得意としていました。

 

仰々しい装飾品や絵画のサイズに頼ることなく王の

威厳を表現していたのはさすがでした。

ベラスケスの描く人物には生々しさがあっていいですね。

 

*****

 

個人的に見入ってしまったのが展示の最後のブースに飾られていた、実質的に最後のオーストリア皇帝であるフランツ・ヨーゼフ1世の肖像です。

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ヴィクトール・シュタウファー「オーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の肖像」 1916年頃 ウィーン美術史美術館

老齢でありながら陸軍元帥の軍服を纏い絵画全体から覇気が感じられます。なんとなくBLEACHの山本総隊長を思い出しました。

 

やはり(実質的な)最後の皇帝というのが威厳を増しているのでしょうか。

今回の展示の中でもっとも凄みを感じた作品でした。

 

*****

 

ハプスブルク家の多くが神聖ローマ皇帝を務めていたこともあり宗教画やギリシア神話をモチーフにした作品も多くありました。

 

旧約聖書の一節に、預言者アブラハムが我が子を捧げるよう神に言われその信仰を試される場面があります。

今回の展示会にもその場面をモチーフにした作品があり「これがあの場面かあ」と感激しながら見ていたんですが、一方で「もっと知識があればこの感激を多くの作品で味わえるんだろうな」と自分の知識の薄さを惜しくも思いました。

 

やはり事前の学習は大切ですね。

 

*****

 

もうすぐ終了してしまうハプスブルク展ですが、世界史を代表する名家のコレクションを味わうことのできる貴重な機会です。

もし予定が特にないという人がいらっしゃいましたら、ぜひ足を運ぶことをお勧めします!

 

人物や豪華な品々など見てわかりやすい作品が多いので、普段見に行かないという人も楽しめると思いますよ!

 

 

 

模試の結果はどうみるのか正解か?【結果の見方を解説!】

前回模試の復習の仕方を解説しましたが

今回は模試を受けた後に帰ってくる「結果」の正しい見方を解説していきます!

 

模試の結果はどうみるのが正解か?

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偏差値や判定はメインじゃない 

結果が帰ってくるとまず目が行くのが偏差値や判定だと思います。

偏差値や判定の変化に一喜一憂している人も多いんじゃないでしょうか。

 

しかし、この偏差値や判定というのはメインではありません。たしかにこれらから得られる情報も多くありますが、偏差値や判定を受験校選びの1番の理由に持ってくるのはかなり危険なんです。

 

*****

 

偏差値というのは自分の位置を50を平均として相対的に評価したものです。 

偏差値が変わっていないと自分が成長していないような印象を受けてしまいますが、実はそうではありません。

 

受験生であれば、個々人が勉強しているかは別としても全体としては学力が上がっていっているはずです。

全体が上がっている中で自分の偏差値が変わらないということは、自分の成績が概ね全体の平均と同じくるいの水準で上がっていると言えます。  

 

*****

 

また判定というのは単なる確率でしかありません。(ただこの確率はかなり正確だと言われています)

A判定が合格率90%だとすれば、A判定100人のうち90人が受かり、10人が落ちます。逆にE判定が合格率10%であれば、E判定100人のうち10人が受かり、90人が落ちます。

 

ここで大切なのは、確率が何%であれ自分は合格か不合格かに振り分けられるということです。

合格率が50%だからといって、自分の半分が受かって半分が落ちるということはありません。対象を一人に絞れば受かるか落ちるかの2択です。

 

どうしてA判定が出たからといって、自分が合格の90人の方に入ってると言えるのでしょうか?

逆にE判定だからといって、絶対落ちるというわけではないのです。

 

ではこの合格率をどうとらえたら良いかと言えば、合格した時のメリットとデメリットと掛け合わせて考えるのです。

 

つまり「合格率×合格のメリット」と「不合格率×デメリット」をそれぞれ考えて天秤にかけて考えましょう。

例えば、合格率が10%だが受かったらめちゃくちゃ嬉しい(100)、一方で受からなかったところで滑り止めがあるからそんなにデメリットはない(10)のだとしたら、

10%×100 > 90%×10

となるので、この受験はリスクをとって受験するのが正しいと言えます。

 

 

相対評価より絶対評価

さてここまで偏差値と判定の話をしてきましたが、ここでは最も重要な絶対評価の話をします。

 

受験で結果的に受かるかどうかは合格最低点を超えたかどうかで決まります。

偏差値がいくつであろうと、判定がなんであろうと合格点を下回れば落ちますし、上回れば受かります。

 

そしてこの合格点は過去の値が公表されていることが多いので、受験勉強の段階ではこの得点を超えるように目指していくことが基本になります。

 

一部の私立模試や国立模試を除いて、模試は本番に近い形で作られています。

模試でも同じ形式を解き、例年の合格最低点を目標に頑張っていきます。

 

相対評価がどれほどであるかより、絶対評価・絶対的な得点で合格最低点が取れるようにすることが受験の戦略として大切なのです。

 

 

 

時間をかけずに効率よく模試の復習をする方法【オススメ】

学校や塾で模試が終わったらしっかり復習するよう言われたことはありませんか??

 

私も学生時代このように模試の復習をするように言われていましたが、時間がかかるのとやり方がよく分からないという理由からあまりちゃんと取り組むことがありませんでした。

 

その後浪人時代に試行錯誤し、短時間で効率よく模試の復習するやり方を習得しました!

今回はその方法についてお話ししたいと思います。

 

短時間で効率よく模試の復習をする方法

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復習する目的

そもそも模試をなぜ受けるかということを考えてみましょう。

まず気になるのが偏差値や判定だと思いますが、これは主たる目的ではありません。

 

模試を受ける目的は、フィードバックを得て今後の勉強に活かしていくためです。 

普段の勉強だけでは実際にどれくらいの実力が付いているのか、守備範囲に穴がないかということに気づきにくいです。

そこで幅広い範囲から出題され、かつ以前の自分との比較を行うことのできる模試を受けることによって普段の勉強では得られない利得を享受するのです。

 

*****

 

これを踏まえた上で模試を復習する目的を考えていきます。

模試を受ける目的には大きく2つあります。それは

  1. 自分の苦手を知る
  2. 解けた / 解けなかった理由を分析する

です。一つずつ説明します。

 

 

まず1.自分の苦手を知るというのは、出題範囲の広い模試を通して自分の勉強が足りないところ、手がつけられてないところ、また問題の形式レベルで苦手なところを確認するということです。

 

同じことを問われていても選択だと分かるのに記述だと振るわないなど、模試を通して自分についてよく知ることができます。

 

出来なかったところは伸び代なので、自分でしっかりと把握しておきましょう。

 

 

次に解けた / 解けなかった理由を分析していきます。

取り組んだ問題の中は

①分かっていて解けた
②分かってて間違えた
③分からなかったけど解けた

④分からなくて解けなかった

の4つに分類することができます。

 

分類する時は大体でいいです。ここで時間を使うのはもったいないのでざっくり分けていきましょう。

 

模試を解いてる途中に分かってて答えたのか分からず答えたのか簡単にメモしておくとこの分類がだいぶ楽になります。

 

とりあえずこの4つに分類することで、圧倒的に効率よく復習ができるようになるのです。

それでは次の項で具体的な復習のやり方について解説していきます。

 

 

効率の良い復習のやり方

模試の範囲全てを復習しようとすれば膨大な時間がかかってしまいます。

特に国立志望の人の共通テスト模試なんかでは教科数が多く、まともに見返そうものなら1日じゃ確認しきれません。

 

そこでまずやるのが先に紹介した分類です。 

復習する箇所を選定するために、さっきの4つの分類に問題を分けていきます。

 

そして分け終わったら②分かってて間違えた問題と③分からなかったけど解けた問題を注力して復習していきます

 

なぜこの二つに注力していくかといえば、この二つは勉強のコスパが良いからです。

受験勉強の成果とは次その問題を解いた時に自力で解けるかどうかだと言えます。

 

①分かってて正解した問題はきっと次回も正解できますし、④分からなくて解けなかった問題はその場で軽く復習した程度ではできるようになりません。

 

一方で②分かってて間違えた問題は間違えた時に復習することで間違えたというインパクトから定着しやすくなりますし、③分からなかったけれど解けた問題はもう少しで分かるようなる可能性が高いですよね。

この部分を重点的に復習することで絶対的な実力や今後の点数を伸ばしていけます。

 

模試の復習をする際は、もう少しで分かりそうな問題に絞って復習することで、学習効果を効率よく得ることができるのです。

 

 

 

モツ入りつけ汁のつけ麺が美味しすぎた【グルメ】

先日、後輩からモツ入りつけ麺がめちゃくちゃ美味しいとの情報を貰ったので、フッ軽かまして二人で行ってきました。

 

行ってきたのが新宿にある「龍の家」というラーメン屋さんです!

駅からは歩いて10分弱くらいのところにあり、新宿にしては静かな通りにあります。ちょうど二郎 小滝橋通り店のそばのところに位置していました。

 

*****

 

着いたのが日曜日の午後7時半ごろで、だいたいこの時点で15人ほど並んでいました。学生など若い人が中心の印象です。

店の前に並び方のルールが書いてあり、それに沿って並びます。

食券は店員さんの指示を待ってから購入するようになっていました。

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40分ほど並んでカウンター席に通され、それから10分ほどでつけ麺が出てきました。 

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こちらがつけ麺モツの大盛り(1000円)になります。

つけ汁から豚骨焦がし醤油の芳ばしい香りが漂ってきて食欲をMAXまで刺激してきます。これは期待が膨らみます。

 

早速食べてみると香りの通りの味でめちゃくちゃ美味しかったです…!

今まで食べたつけ麺の中で一番美味しいんじゃないかというほどのレベルでした。あまりに美味しくて実際にうまいうまい言いながら食べていました笑

 

麺は細めで軽いのでどんどんと端が進みます。 

箸休めに無料のナムルをいただけるのもまたありがたいですね。これもまたおいしいです。

つけ汁も冷めてしまったら温め直してもらえます。

 

 

あっという間に完食すると、締めに店員さんがスープにお粥をいれてくれました。

濃い目のスープがお粥で少し優しくなり、ちょうどいい濃さに変わって行きます。

 

スープまで全て飲み干し、大満足で店を出ました。

 

*****

 

普段はなかなかラーメンなど紹介しないのですが、このつけ麺は規格外に美味しかったので紹介してみました。

濃い味付けが好きなラーメン好きならば絶対に満足できると思うので、新宿に遊びに行った際にはぜひ寄ってみてください!

 

 

「植物工場」をわかりやすく解説!【メリットから現状の課題まで】

この頃よく耳にすることの多くなった「植物工場」。

 

なんとなく工場で野菜を作っているというイメージはあっても、実際どんなものなのかはあまり知る機会がありませんよね。

 

今回はこれから普及が期待される「植物工場」について詳しく、わかりやすく解説していきます!

 

植物工場とは?

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「植物工場」とは植物の栽培を全て、もしくは一部を機械制御することで季節を問わずに計画的な植物・野菜の生産を可能にするシステムのことです。

通常は閉鎖的空間か半閉鎖的空間によって行われます。

 

なぜ今「植物工場」が注目されているのか

植物工場が注目される背景には異常気象による食料生産の不安定化、農業人口の減少、低い食料自給率が挙げられます。

 

特に昨今の異常気象は深刻で、2018年の農林水産被害は5600億円にも及びました。

政府はこの現状を受け一定の条件を満たした植物工場に対して補助金を出しています。

 

安全で安定した食料を供給する手段として、植物工場は注目されているのです。

 

植物工場の種類

植物工場には大きく分けて。

①完全閉鎖型
②太陽光併用型
の、2種類が存在します。
 
完全閉鎖型はみなさんがイメージする植物"工場"という感じで、大きな屋内で野菜がずらりと作られています。
完全に閉鎖した利点は光・気温・地温・液肥を完全にコントロールできることで、完全なる計画生産が可能になっています。
 
一方で太陽光併用型植物工場はビニール栽培の発展版のような形態で、一部天気の影響を受けます。
そのため生産の安定性に関しては完全閉鎖型には及びません。

 

養液栽培

植物工場で欠かせないのがこの「養液栽培」という技術です。

 

養液栽培とは、作物に必要な栄養素を水に溶かし肥料として作物に与えて栽培していく方法です。

土を使わずに栽培を行うことで土壌病害*や連作障害*を回避できます。また土を耕す必要がなくなったり、大規模化しやすくなるなど多くのメリットがあります。

 

植物工場ではこの「養液栽培」が主に用いられており、切っても切れない技術といえます。

 

*土壌病害…土を介して伝染する病気

*連作障害…同じ土壌で同じ植物を育て続けることで生育不良を起こすこと。土壌のバランスが崩れたり、その植物を好む菌や虫が増えてしまうことによって起こります。

 

植物工場のメリット・デメリット

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これからの成長が期待される植物工場ですが、メリットとデメリットの両方を持ち合わせています。

 

植物工場のメリット

植物工場のメリットとしては

  • 農薬に頼ることなく安全な食料を生産できる
  • 労働のマニュアル化が可能であるため働き手に高度な教育を要求する必要がない
  • 天候に左右されることなく安定して植物を生産することができる
  • 1年間に10作することも可能になり効率的な生産が可能になる
  • 自然環境に左右されないため場所を選ばず再現性が高い 

といったことが挙げられます。

 

これらのメリットは現在日本が抱える社会問題・食料問題と合致しており、これから植物工場が増えていくのは確実でしょう。

 

植物工場のデメリット

植物工場は多くの面で発展が期待されていますが、一方でデメリットも存在します。

植物工場最大のデメリットは2つのコストの大きさにあります。

 

まず一つ目は初期投資にかかるコストです。

植物工場は設備投資の段階で初期投資が巨額であり、個人がお金を出して植物工場を始めるというのは難しくなっています。

これから植物工場が建設されていくケースとしては、巨大資本の投下を行いスケールメリットによる限界費用の低減を目指す。またはクラウドファンディングにより設備投資資金を集め、同時に買い手を獲得するというのが一般的になるのではないでしょうか。

 

もう一つが原価に対する電気代が高いことです。

植物工場は機械が多く導入され(特に完全閉鎖型では)年中電力を止めることができないため照明を中心とする電気代が膨大になってしまいます。

ある工場では原価に対する電気代が4割にものぼり、産業として成立させていくためには電気代の抑制が不可欠です。

 

 

現状の課題と展望

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以上にあげた植物工場の特徴やメリット・デメリットを踏まえて、植物工場の課題をどのように克服し発展していくかを考えます。

 

電気代の抑制

デメリットで解説しました通り、植物工場の最大のデメリットであり参入障壁はコストの高さにあります。

特に利益率を下げてしまう電気代の大きさは今後植物工場を主流としていくためには絶対に解決したい問題であります。

 

今注目されているのは植物に当てる"光"の改良です。この光は植物の光合成を促すためのもので、生産物のクオリティを上げていくためには欠かすことのできない重要な要素となっています。

具体的には間欠照明*という照明を用いることによって、電気代を抑えようとする研究が行われています。

 

*間欠照明…点灯と消灯を繰り返して行う。電気代の抑制が期待されている。

 

「農業」との棲み分け

もう一つ考えなくてはいけないのが従来型の「農業」との棲み分けです。

 

現在植物工場はその生産物を直接企業に買ってもらうことによって成り立っています。

現段階ではまだまだ植物工場産の野菜の市場規模は小さく、既存の農業を破壊してしまう段階ではありませんが、将来的には既存農業と競合、あるいは破壊してしまう可能性があります。

 

急激な産業破壊は社会の不安定化を生みます。

規模が縮小しているとはいえ農業もまだまだ日本の重要な産業であることには変わりません。

社会不安を生むことなく、うまく植物工場が展開していく方法を考えなくてはならないのです。

 

 

 

【本の紹介】湯本香樹実『夏の庭』【あらすじと感想】

オススメ度:★★★★★

中学生に本を紹介するとしたら絶対にこの本を入れるでしょう。

 

小学6年の3人の少年たちが「人が死ぬところが見たい」という純粋な好奇心から近くに住む独居老人を観察しだす、というところからストーリーが始まっていきます。

死をテーマにしていますが少年たちの一夏の思い出を描いた、爽やかで夏らしいストーリーとなっています。

 

あらすじ

ある夏の日、小学6年生の3人の少年たちが親戚の死をきっかけに死に興味を持ち始め、近くに住む今にも死にそうな独居老人の死ぬところを見ようと計画する。ひそかに観察を続けていたが、夏休みに入ったある日3人は老人に見つかってしまう。それでも少年たちは老人のもとに通い続ける。

 

顔見知りになっていった少年たちと老人は次第に交流を深めていく。また老人も活力を取り戻し元気になっていく。

少年たちは老人と過ごす中で今まで誰にも教えられてこなかったことや、経験してこなかったことをたくさん学んでいった。

 

夏の終わり頃、合宿から帰ってきた3人は息を引き取った老人を見つける。

老人は死んでしまったが少年たちの心に残り続け、彼らはそれぞれの道に進んでいった。

 

 

少年の心の変化

この話でもっとも変化があったのは主人公である少年たちじゃないでしょうか。

といっても、起きたのは価値観を180度変えてしまうような変化でも、何かに目覚めたような変化でもありません。

 

誰にでも起こりうる、しかし長い時間をかけてじわじわと浸透してくるような静かで確実な変化です

 

*****

 

もともとはいつも通りの学校・塾、多少の問題を抱えた家庭(何も問題のない家庭なんてないと思いますが)くらいしか接点を持たなかった少年たちが、今にも死にそうな独居老人というもっとも離れた世界の人間と触れ合います。

 

おじいさんとの交流の中で少年たちは丸々一個のスイカ、庭一面のコスモス、クマが好きそうなキイチゴの味など、これまでの生活の中では見ることのなかったものを見て、経験していきました。

 

はじめはただの老人だったおじいさんは、彼らにとってかけがいのない存在になっていきます。

元気になっていったおじいさんでしたが、少年が虫の知らせを受け戻ってきたときには安らかに息を引き取っていました。

 

*****

 

これらの経験を通じて得た気持ちやおじいさんの考え方は、おじいさんが死んでしまったあとに少年たちのこころの中に残り続けました。

 

死後もこころの中に残ったおじいさんの存在は少年たちのこころを広げ、またこころを豊かにしました。

 

3人の少年はおじいさんとの交流の中で成長していきました。

そしておじいさんの死は死が人の終わりでないことを明らかにし、おじいさんが少年たちに残していったものを強調しているのです。

 

 

老人の心の変化

少年たちが変わっていった一方で、老人のこころにも変化が起こりました。

 

*****

 

観察対象であるおじいさんは戦争に行ったことのある人です。おじいさんのいた部隊は厳しい戦いを余儀なくされ、食事もままらないほど苦しい状況にありました。

 

その環境の中で部隊は食料を手に入れるため近くの村を襲うことを決断します。村には女子供しかおらず、疲弊し切った部隊が襲撃するには格好の的でした。

襲うからには一人の生存者も残すわけにはいきません。もし途中でチャレンジがバレてしまえば、逆に襲われ部隊は壊滅してしまいます。

 

部隊が村を襲う中で、おじいさんは一人逃げる女を見つけました。おじいさんは必死に女を追いかけ、ついに殺してしまいます。そして死んだかどうか確認するために女を確認すると、女が妊婦だったことがわかりました。

2人分の命を奪ったと知ったのです。

 

戦争が終わり、おじいさんは日本に帰ってきましたが奥さんの待つ家には帰りませんでした。罪の意識から帰ることができなかったのです。

おじいさんはそれから独り者として、老を迎えるまで生きていたのでした。

 

*****

 

おじいさんはこの話を酷い雨の日に少年たちに語りました。

 

きっと今まで誰にも話すことなく、これからも墓場まで持って行こうと思っていたことでしょう。自分はもう社会から認められてはいけないと、何十年もひとりで抱え続けたこの事実でした。

 

しかし、少年の反応は意外なものでした

ずっと深刻だったはずのこの問題も受け取り、その上で老人を認めたのです。

こうして老人は初めて、人生を前向きなものとして考えられるようになったのです。

 

このことを証明する象徴的な場面があります。

老人が河原で知り合ったアベックと談笑するシーンで、老人がこんなことを言いました。

 

「そんなに大事なら、いっしょになればいいじゃないか」

 

これは妻に対して罪の意識を少しでも拭いきれぬうちには決して出ることがないセリフです。老人は少年たちとの交流を通して、自分の人生を肯定できるようになったのでした。

 

 

感想

『夏の庭』はテーマが死にも関わらず全体を通して爽やかさを感じることのできる不思議な作品です。

 私が初めてこの本に出会ったのは高校1年生の時でした。もともと夏の空がいきいきと青い様子が好きな私はすぐにこの作品の雰囲気にハマりました。

 

経営コンサルタントの大前研一は「人が変わるのは時間配分・住む場所・付き合う人を変えるとき」だと主張しています。

この話は付き合う人を変えたときの話で、少年たちも老人も確実に変化が表れています。新しい人との交流が考え方を変え、こころを豊かにすることにつながっているのです。

自分をいい方向に導いてくれる人と出会うのは難しいですが、私もそんな人と出会えたらいいなとこの本を読みながら思いました。

 

 

【宅浪の思い出4】宅浪とセンター試験

今年でセンター試験も終わりを迎えます。

 

3年間もお世話になった(?)身としては懐かしいことやいろいろ思うことがあるのでこのような記事を書いてみました。

 

宅浪とセンター試験

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センター試験が終わる

共通一次から数えると40年以上に行われてきたセンター試験が今年で終わります。

 

親世代も受けてきた試験がここまで続いてきたと考えると、なかなか凄いことなんじゃないかなとも思います。

 

他にこんなに続いた国の試験あるかなと考えていたら、科挙を思い出しました。

科挙は6世紀末から20世紀初頭まで1300年間にわたり行われてきたそうです。多分一生越せないですね。

 

*****

 

この度のセンター試験廃止および共通テスト導入には個人的にかなり不信感があります。

確かにセンター試験は暗記を中心とする学習を促す傾向はありましたが、これはセンター試験の改良で対応できたんじゃないでしょうか。

 

各大学が受験生に求める技能があるならば各大学の2次試験に盛り込むべきで、国に負担をかけ民間企業に利益をもたらすようなやり方には賛同しかねます。

 

センター試験は上位大学が、受験生が自分の大学を受ける上で最低限の知識を持ち合わせているか確認できれば十分ではないでしょうか。

 

暗記を必要以上に忌避する姿勢にも疑問があります

確かに現代社会をみたときに考えられることが知っていることに優越することは分かります。

 

しかしそもそもものを知らずに思索することなどできるのでしょうか。思索が得意な人でものを知らないなんて人は見たことがありません。

知ったから考えられるようになるのであって、考えることだけを抽出して身につけさせようなんてもことは不可能なのです。

 

例を挙げるとすれば、世界史を世界近代システム論や唯物史観で見ようとしたするならば、これを使いこなせずためには事前に相当の世界史の知識があることが求められます。

前提が満たされているからこそ、これらの考え方を使って未知の事象についても考察できるのうになるのです。

 

*****

 

共通テストの導入に対してはいろいろ思うところもありますが、今回のメインは思い出話なのでそちらの話をしていきたいと思います。

ちなみに今回の話は2浪目、通算3回目のセンター試験の話になります。

 

 

1日目:文系科目

センター試験で緊張したことはこれまでの過去2年なかったのですが、2浪目のこのテストはかつてないほど緊張しました。

 

会場は家から近い大学だったので落ち着いて30分前くらいに着くように行くと、まだ人もそこまで集まっておらず寒い中立って待たされました。

 

天候にもよりますが、この季節(特にセンター試験の日)は寒いことが多いのであまり早く来ない方が身体のためかもしれません。

開場前はトイレにもいけないのでなかなか辛かったです。

 

*****

 

センターで一番焦ったのは問題を綴じているビニールの袋が全然開かなかったということです。

手が以上に乾燥していたのと緊張とで全然開かなくて焦りました。

 

特に対策のしようもありませんが、別に自分で開けられなくても開けてもらえるのでここで開かなくてもパニックに陥らないようにしておいた方がその後の試験のためです。

 

試験自体で覚えているのは世界史がよくできた手応えがあったことと、リスニングが絶望的に出来なかったことです。

あまりにリスニングが出来なかったので終了後友人にこんなラインを送っていました。

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どうやらこの日はプリンを食べたそうです。

 

 

2日目:理系科目

前日早く寝たおかげで、2日目はすっきりと目覚めることができました。

なんとなく上手くいく気がしてとてもいい気持ちでした。

 

いつものコンビニでいつもの昼飯セットを買い、同じように会場に向かいます。

受験の昼ごはんについてはこちらにも書いているのでよかったら参考にしてみてください。 

www.artbook2020.com

 

*****

 

2日目は理系科目になります。

理系の日ですが私は国立志望だったので朝9時半の集合でした。理系は両日ゆっくりで羨ましかったです。

 

2日目はシール貼りもビニールもないので気が楽ですね。

 

そのおかげかこの日の試験は比較的大きなミスもなく、メンタルをいい感じに保ったまま終わらせることができました。

 

こして私のセンター試験は終わりを迎えたのでした。

 

 

終わった後

終わった後は今までに味わったことのない満足した気持ちを感じました。

やり切ったという気持ちと、まだその日が半日残っているという期待感でどこかにひさびさに遊びに行きたいような気分になったのです。

この解放感がのちのち悪い影響をもたらすのですが、ここでは置いておきます。

 

高校時代の友人に声かけると多くがテスト前ということで乗ってくれませんでしたが、ご飯ならいいという人がいたので電車で2.30分かけて高校方面に向かいました。

 

 

着くとなんとなく飲みたい気持ちになってきたので近くの鳥貴族に入りました。

センター試験後の居酒屋は2浪したんだなというのを強く私に感じさせます。

 

普段はビールなんか飲まないのですが、自然と手が伸びて注文しました。

これがめちゃくちゃ美味しかったのです。

 

今まで飲んだビールの中で最高でした。

大人たちが労働の後に安い酒を美味しそうに飲んでいたのはこういうことだったんだなとそのとき初めてわかった気がします。

 

散々話を聞いてもらった後早めに解散して帰りました。

 

*****

 

受験もセンターもいろいろありましたが、最後に思うのは頑張った分くらいはなんとかなるということです。

 

最終的に第一志望の国立には落ちてしまいましたが国立には入れましたし、思い返せば自分の努力量に対して妥当だったんだろうなと思います。

 

受験も大変だとは思いますが、やった分はかえってきます。

良かろうが悪かろうがそれが自分の努力の結果だったと思って受け止めるのがいいんじゃないでしょうか。

 

雑にまとめてしまうならば、なるようになるのです。