本と絵画とリベラルアーツ

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【本の紹介】キム・ダスル『人生は気分が10割』

オススメ度:★★☆☆☆

「カッコいい」かどうかを基準に生きる(p.42)

 

キム・ダスル『人生は気分が10割』

 

 本書のエッセンス
・HSP向けの本
・「カッコいいか」を基準に生きる
・日本も韓国も悩みは同じ

HSP向けの本

韓国で有名なエッセイスト キム・ダスルによる、現代人がより行きやすくなるためのヒントをまとめた短編集。本書は韓国で2022年のベストセラーを記録している。

 

日本で近年HSP(過敏かつ繊細)というパーソナリティがよく知られるようになっている。この本の内容の多くはそんな気質の人向けに書かれており、日本でも売れている理由がわかると同時に、韓国においてもHSP気質の人が増えていることを伺いしれる。

 

周囲に過度に気を配ってしまい、人間関係でも気疲れしてしまっている人に寄り添うような文章は、そういった気質をもった人には刺さるのかもしれない。

 

私はどちらかと図太い性格でありHSPとはほど遠いため内容自体にあまり共感できなかった。

また元々この本の内容がInstagramに投稿されたものをまとめたという背景もあり、若干文体に「エモさ」が意識されている点が私にはあまり好みではなかった。

 

ではなぜこの本を手に取るに至ったかというと、この頃人生でほぼ初めての長期での鬱に近い状態であり、少しでもヒントがあればと書店で見つけたタイミングで藁にも掴む気持ちで即購入した。

 

「カッコよく」生きることを思い出させてくれた

先に述べた通り内容の9割は共感ができなかったが、いくつかのヒントは私が元々持っていた「強み」を思い出させてくれた。

 

「カッコいい」かどうかを基準に生きる(p.42)

アメリカの元海軍大将、ウィリアム・マクレイヴンも有名なスピーチで語っている。「世界を変えたいなら、ベッドメイキングから始めよう」。(p.216)

「やりたくないこと」から秒で終わらせる(p.242)

人生がうまくいく人に欠かせない3要素(p.248)

1. 小さな努力を重ねる

2. 根性がある

3. 根拠のない自信を持つ

 

思い返せば、私はこれらの内容をよく知っていたし、かつての自分は十分に実践できた。それゆえこれまでの人生のなかで自己を強く持てていたし、逆境の中でも心が折れることなくここまでやってこれた。

 

しかし仕事が忙しくなり、気持ちにゆとりがなくなってくると、いつのまにかこれらの重要な要素をおざなりにしてきてしまった。

これまでの人生うまくやってこれたのだから、多少おざなりにしてしてしまってもなんとかなると思っていた。

しかし実際にはみるみる成長は止まり、思うように結果を残さず、また自分に対する自信まで失うようになってしまった。

 

気付けば諦め癖がつき、どうせうまくいかない、及第点が取れればいい、誰かに助けてもらうなどと情けない、ほんとうに情けない根性なしに堕落していた。そして堕落した自分に気がついていながら、それもしょうがないなどと誤った自己肯定に甘えてしまっている。

つまり堕ちている慣れ、堕ちていることに対する感度を失ってしまっていたのだ。

 

怠惰にやって筋肉が衰えたボディビルダーが自分の鏡をみて驚愕するような、恐怖に似た衝撃がそこにはあった。この時初めて、自分自身を心の底から情けないと思った。

 

正直、メンタルの強度を失った今昔のように全力で「カッコよく」生きるのは難しいだろう。できなくなっている自分に不甲斐なさを感じる瞬間がこれから何度もあることもわかっている。

ただこのままの自分ではいたくないと思っているので、まずは朝のベッドメイキングから始めようと思った

 

 

『インサイド・ヘッド』は全世代向け笑って泣ける映画

オススメ度:★★★★★

悪いけどライリーのことを幸せにしたいの

 

『インサイド・ヘッド』

 本書のエッセンス
・話の組み立て方が天才
・単純な笑いからシリアスなユーモアまで
・ヨロコビの人格設定が秀逸

 

あらすじ

人々の頭の中には様々な感情が共存している。

喜び、悲しみ、怒り。そしてそれらの感情は成長を経るごとに増え、複雑になっていく。

12歳のライリーの頭の中ではヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカという5つの感情がライリーを幸せにするために日々指令を出していた。

 

父の仕事の都合で12年間暮らしたミネソタからサンフランシスコへ家族で引っ越したライリー。新しい土地への不安やトラブル続きで心に負荷がかかるなか、感情のリーダーであるヨロコビはライリーのためには楽しい感情が最重要であると考えカナシミを遠ざけながら奮闘する。

しかしひょんなことからヨロコビとカナシミは感情の司令部から遠く離れた記憶の彼方に飛ばされてしまう。

ヨロコビとカナシミは司令部に戻ろうとあの手この手を使うが、2人がいなくなったライリーの心は少しずつ崩れてゆく。

 

感想

『インサイド・ヘッド2』を映画館で見て久々に1が見たいと思い、家族でケンタッキーをむさぼりながらディズニー+で見返した。

初めて見たときにはあまり心に残らなかったが、改めて見るとなぜ残らなかったのかが不思議なくらいの傑作であった。家族の前でなければ号泣していたと思う

 

話の組み立て方がとてつもなく上手い。

これはただ伏線を貼り、回収しているというだけではない。

伏線の貼り方が自然で、近年よくある「はいはい、ここが後で重要になるのね」といった余計な違和感を持たせない。このような違和感があると一気に覚めてしまうが(近年のピクサーだと『マイ・エレメント』がこの気があり残念だった)、このあたりが大変スマートである。

そしてそれら一つ一つの要素が全体のストーリーをきれいに組み立てており、笑いとも感動の両方に絶妙に作用している。ただうまいだけでなく鑑賞者の心をしっかり揺さぶり、「うまい映画」に陥らず「いい映画」になっている。

 

個別の話でいえば、ヨロコビの人格(?)設定が秀逸である。

ヨロコビはその名の通りライリーに嬉しい気持ちをもたらすために存在しているので、基本ポジティブでありどうすれば楽しくいられるかを常に考えている。利己主義に陥らず全体最適で物事を考えられ、ライリーのためなら努力も惜しまない。

これだけ書くとまるで完璧超人のような引用を受けるが、そんな彼女も完璧なわけではない。なかなかうまくいかない同僚のフォローにも段々と疲れの色を見せることもあるし、独善的な面もありときには行き過ぎた行動はときにグロテスクな方向に向かうこともある。ポジティブも万能でないことをこのようなかたちで示唆している。

この振れ幅が見る人に感情移入させる隙をつくり、彼女の成長を一緒に追体験することができる。

 

『インサイド・ヘッド』は全世代向けの笑って泣けるいい映画なので、もっとテレビ放送して広まってくれればいいなと思った。

 

 

 

 

【本の紹介】マルクス・ガブリエル『わかりあえない他者と生きる』【完全平等は可能か】

オススメ度:★★★☆☆

私たちの社会で分極化が進んだのは偶然ではありません。相手を見て、においをかいで、触れていないからです。(p.76)

 

マルクス・ガブリエル『わかりあえない他者と生きる』

 本書のエッセンス
・自国民と移民の完全平等は可能か?
・相互理解にオフラインのコミュニケーションは不可欠

 

感想の書き散らし

他者について考えるときは、他者を自分とまったく同じように考えなければなりません。(p.63)

2015年のドイツがシリアから数百万の難民を受け入れた際、ミュンヘン市民は歓迎の意を示すため拍手した瞬間があった。ガブリエルはこのときの態度が誤りであると痛烈に批判している。

 

ドイツが難民を受け入れた時点で難民たちはドイツにおけるすべての人権を得ており、"権利を与えてやるドイツ国民と与えられたシリア難民"という構図が生まれてしまう。そこにはドイツ国民とシリア難民の平等性がないのだ。

他者には常に自分とまったく同じ権利や尊厳を認めなくてはならない。またそういった目線で他者と接することで、接し方が変わるとガブリエルは主張する。

 

この考え方はかなりラディカルである。「もし自分が相手であった可能性を想定する」という考え方ははロールズに近いものである。

思想としては理想的であることを認めつつも、その急進性ゆえ現時点ではなかなか日本では受け入れられないかと個人的に感じた。単民族国家である日本では日本人とそれ以外を明確に区別しており、それらを同じであることに違和感を覚える。

もちろんこれは右派に顕著であるだろうが、実際には左派の大部分も感じでいるところであろう。

しかし平等の輪が広がり続けていることを考えると、100年後、1,000年後のリベラル思想としてスタンダードになっているのではないだろうか。

 

ガブリエルは相互理解において実際に会い、五感で相手を感じることの重要性を説いている。

私たちの社会で分極化が進んだのは偶然ではありません。相手を見て、においをかいで、触れていないからです。(p.76)

 

この問題は仕事していく上でも強く感じている。

いくらオンライン会議やチャットのやり取りでコミュニケーションを取っていても、実際に会って話すと印象が変わることがよくある。印象が変わるということは相手に対し誤解が生じていることの証左であり、この誤解が積み重なっていけば大きなすれ違いを生んでしまうことも想像に難くない。

たとえオンラインとオフラインで同じ内容をコミュニケーションしたとしても、印象や感覚は異なる。この差異の正体こそが、ガブリエルの主張するにおいといった非言語情報なのだろう。

 

デジタル化によって表面上の利便性は向上しているかもしれないが、本質は置いてけぼりのままになっている。

 

 

疲れた大人が『インサイド・ヘッド2』でボロ泣きしてきた

オススメ度:★★★★★

 

『インサイド・ヘッド2』

 

 本作のエッセンス
・自分の中の抑圧された感情に優しくなれる
・思春期表現が秀逸
・脳内事象の具現化がうまい

あらすじ

高校入学を控える少女ライリー。彼女の頭の中には人格を持った5つの感情がおり、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリがそれぞれライリーの幸せのために感情の舵取りを行っている。

アイスホッケーの有望選手であるライリーは、高校で憧れの先輩のもとでプレイするためにキャンプに参加する。

アイスホッケーのキャンプの前日、ライリーの頭の中で突如「思春期」のアラートが鳴り、司令部に新たにシンパイ、イイナー、ハズカシ、ダリィという4つの感情が現れる。

シンパイはあらゆる可能性を想定して計画を立てるタイプで、楽観主義のヨロコビと衝突する。

シンパイはライリーの将来のために、これまでの5つの感情そして13年間培ってきたライリーらしさまでもを遠くに追いやってしまう。

 

感想

近年コロナ禍やDisney+の戦略ミスにより低迷を続けていたディズニーおよびピクサーが長い準備期間をかけて発表した『インサイド・ヘッド2』。

 

結果はスタートから大成功で、日本公開前(24/07/25)時点でこれまで長編アニメーション映画興行収入一位だった『アナと雪の女王2』を抜き歴史を塗り替えた。

これは『トップガン・マーヴェリック』や『アベンジャーズ』をも上回る数値であり、世界での人気が伺える。

 

日本でも海外での大ヒットを大々的に広告し、「大人泣き」のコピーとともに現時点で3週連続1位と記録を伸ばし続けている。

 

私も初めは見る予定が無かったが、YouTubeで予告編を繰り返し見ているうちに興味が沸き、ちょうどタイミングのいいときに日比谷のTOHOシネマズのチケットが取れたので観に行くことにした。

 

油断して見始めたが、終わる頃にはボロボロ泣いていた

 

初め涙が出た時には、なぜ泣いているのか分からなかった。悲しいわけでも苦しいわけでもない。

そして帰り道映画を思い返しながらその理由に気がついた。インサイド・ヘッドのキャラクター同様、自分の中にも舵をとっている感情や抑圧されている感情があり、自分の中で忘れてしまっていた抑圧された感情がその存在意義を肯定されて自然と涙が溢れていたのだ

大人になるにつれ忘れてしまった、またおざなりになってしまった感情が映画のキャラたちによって具現化され、その存在を再認識され肯定されたことに心が揺さぶられていたのだ。

このとき初めてキャッチフレーズの「大人泣き」の意味がわかった。

 

見た人だれもが自分に対して優しい気持ちを持てる素晴らしい映画になっているので、1を見ていない人でもぜひみて欲しいと思う。

ただの御涙頂戴映画ではなく、ストーリー構成やユーモアも秀逸なので映画そのものも十分に楽しめると思う。

 

 

【マニラ2泊突発旅行 #4】マニラ一人旅はいくらかかるか

2024年8月、フランスではパリ五輪が開催され、日本では南海トラフのリスクが叫ばれる中、私は単身マニラにいた。

ひしゃげたジプニーがクラクションを絶え間なく鳴らし、夜には痩せた野犬が跋扈するマニラで私が見てきたものを4回に分けてご紹介する第4弾。

 

【マニラ2泊突発旅行 #4】マニラ一人旅はいくらかかるか

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最後にマニラ一人旅でかかった費用を簡潔にまとめてマニラ旅行記は完了とする。

最終的にかかったのは2泊3日で14万ほどだった。

 

今回直前に航空券やホテルを取ったり、ぼったくりにあったりと余計な支出もあったため、時期や遊ぶ方にによっては10万以下で遊ぶことも可能だと思う。逆にカジノで派手に遊びたい人などはその分が追加でかかるイメージである。

あくまで一例として寛容な目で見ていただけると嬉しい。

 

マニラ一人旅行

レート:1フィリピンペソ = 約2.5円

分類 用途 金額(円) 決済方法 
航空機 往復 75,000 日本・クレカ
ホテル(2泊) 2泊 13,000 日本・クレカ
食事 1日目:飲料水(×2) 150

現地・現金

1日目:カフェのレモネード 500 現地・現金
1日目:ジョリビーのセット 500 現地・現金
2日目:市場の朝食 500 現地・現金
2日目:市場のドリンク 200 現地・現金
2日目:スターバックス 500 現地・クレカ
2日目:ハーバービューレストラン 5,000 現地・現金
移動費 Grabタクシー×5回 5,000 Grabアプリ
その他 イントラムロス観光地入場料 1,000 現地・現金
  カジノ(スロット) 3,000 現地・現金
  お土産 10,000 現地・クレカ
  ポケットWi-Fi 6,500

日本・クレカ

  LAカフェ 8,000 現地・現金
  ぼったくりガイド 10,000 現地・現金
合計 138,850  

 

 

【マニラ2泊突発旅行 #3】LAカフェの実態【2024/08】

2024年8月、フランスではパリ五輪が開催され、日本では南海トラフのリスクが叫ばれる中、私は単身マニラにいた。

ひしゃげたジプニーがクラクションを絶え間なく鳴らし、夜には痩せた野犬が跋扈するマニラで私が見てきたものを4回に分けてご紹介する第3弾。

 

【マニラ2泊突発旅行 #3】LAカフェの実態

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マニラ屈指の繁華街マラテ地区のすこし外れに、LAカフェというカフェバーがある。

カフェの周りは夜になると薄暗く、寂しげなトルコ料理屋や音が微かに漏れ出ているカラオケ、そしてウロウロと野犬が徘徊する通りに位置している。

 

店のドアは派手なシールが貼り付けられており、その上では小さなネオンが毒々しく光っている。入るのに躊躇し、何度か店の前を通り過ぎながら周囲の様子を伺う。たまに2, 3人のアジア人男性がグループが入る他、ドレスやワンピースを着た女性の出入りも見られる。

 

意を決して入り口に立つ。スタッフにドアを開けてもらい中に入ると、これまた毒々しい色のドレスを着た10人ほどのフィリピン女性たちが入り口付近を固めている。

 

スタッフに案内されカウンターの席に着いた。

店内は1階と2階に別れており、1階はカウンター席の他、何人かでかけられるテーブル席も用意されている。2階はバンドの演奏などをやっているようである。

私が訪れた時は20時を少し回ったころで、1階席はほぼ満席という賑わいだった。

テーブルに備え付けのメニューはなく、スタッフにお願いすると出してくれる。とりあえずカラカラに乾いた喉を潤したかったので、目に入ったバドワイザーを注文し、周囲の様子をウォッチする。

一人で飲んでいる姿もチラホラ見られるが、大半は友人同士で来ている組が多い。国籍は日本人を中心に、韓国人、中国人と見られる男性もいる。白人はごくわずかしかいなかった。年齢は30代〜50代がボリュームゾーンのようである。

それぞれの客には1, 2人のフィリピン女性が一緒に飲んだり、これから話そうと話しかけたりしている。フィリピン女性の年齢層は20代が中心で、中には40代くらいだと見られるベテランもいた。

フィリピンの女性はみな二重で目が大きく綺麗な多いなと改めて感じた。

 

周りを見渡していると、近くにいたフィリピン女性が話しかけてきた。びっくりしてあまりよく顔を見られなかったが、20代前半で愛嬌のある顔をしていたと思う。

一緒に飲んでもいいかと聞かれたが、まだビールも到着しておらず店内の雰囲気に慣れていなかったので一旦お引き取り願った。

 

その後はビールが来るまでひっきりなしにフィリピン女性が訪れてきた。大体話すことは同じで、何歳か、どこから来たのか(日本と言うとどの女性も反応が良かった)、何しにフィリピンに来たのか、マニラでは何を見たのかといった話を繰り返しした。

基本的に彼女らとの会話は英語で行われるが、中には日本語を話すことができる女性もチラホラいた。彼女らの母国語はタガログ語のため、傾向として若い女性ほど英語・日本語が苦手で、ベテランになればなるほど語学に長けている人が多い。彼女らの一部は日本のフィリピンパブ等から引き上げてきた人なのだろうと思われる。

 

15分から30分ほど話し女性をリリースするときにはチップを要求してくるので、200ペソ(=約500円)ほど渡すと静かに店のどこかは消えていった。500ペソ(=約1,250円)要求してくるガメツイフィリピーナもいた。

 

また料金の話でいえば、女性たちに奢ったドリンクも当然個人の会計につくので注意が必要である。ビールが一杯500円程度なのに対し、女性に奢るドリンクはノンアルコールで1,000円くらいする。

支払いはキャッシュオンリーなので、奢る予定のある人は多めにペソを持っていくのがいいだろう。店内にもATMが配置されていたが、その場でお金を下ろすのは誰に見られているかわからないのでやめた方が無難である。

 

女性たちの目的はズバリ売春である。

先に述べた通り店にはアジアを中心にさまざまな国の人がいるが、もっぱらターゲットは日本人男性のようである。

客に日本人男性の組みが多くいるときには彼女らは流動的に動いているが、私がいたタイミングではどうやら他に日本人男性がいなかったようで、周りには光に群がる夏の虫のごとく女性が集まっていた。

そのようなシチュエーションだと男性として悪い気はしないが、他の日本人男性が来店しサッと自分の周りからはけていくところを見ると、なんとも現金な人々だなと可笑しくなった。

 

そういうわけで、いくらか会話が弾んだ女性の中には直接的に売春を持ちかけてくる人も少なからずいた。

彼女らの言値によれば相場は4,000〜5,000ペソ(=10,000〜12,500円)のようで、交渉の余地があるとするならばここからマイナス1,000ペソ程度が本来の相場なのではないかと思う。

 

周りの宅に聞き耳を立てていると結構交渉が成立しているところもあるようで、嬉しそうに腕に手を回しながら店外へ抜けていく男女もしばしば見られた。

さらに衝撃的だったのは成立した組に対して自分も混ぜろとかかんにトライする女性もおり、彼女らの執念には驚かされた。

 

そんなこんなで会話の相手を変えながら2時間ほどビールを楽しんだ。

注文で若干厄介だったのは追加注文するために担当のホールスタッフを探さなくてはいけないことで、なかなか見つからずに困っていると話してた女の子が大声で探してくれることもあった。

オーダー履歴は手書きで書いて卓上の筒に入れておいてくれる。履歴が明瞭でいいと初めは思ったが、字が汚すぎて読めなかったので実際ぼったくられてもわからなかったと思う。

 

22時を回ったあたりで治安も心配になってきたので帰ることにした。

支払いは酔っていて正確には覚えていないが1,500〜2,000ペソ(約4,000〜5,000円)くらいだったと思う。このほかにチップを渡しているので実際にはもう3,000円強ほど使った。

 

帰るとき危ないから車で帰ったほうがいいと忠告されたが、2分ほどの距離だったので酔い覚ましがてら歩いて帰ってしまった。ちなみにホテルはリヴェラ・マンション・ホテルである。

当時は大丈夫だと思って歩いて帰ってしまったが、あとで冷静になってから22時過ぎの繁華街をほろ酔いで歩くのはあまりに平和ボケしているなと反省した。

 

ホテルに着くと、別の日本側客がフィリピン女性を連れて戻ってくるところと出くわした。

女性は身分証明書をホテルのセキュリティに提出して特に引き止められることなく中へ入って行った。

日本のホテルでは宿泊者以外を中に入れるのは御法度だが、調べてみるとフィリピンではホテルの部屋自体の料金を払っているため人を入れるのは特段問題ないのだという。

エレベーターの張り紙を見てみると未成年を連れ込んではいけないと書いてあったので、逆説的に成人していれば問題ないのだろう。

 

なんの参考になるか分からないが、せっかく珍しい場所に行ったからということで私の体験を書き残しておいた。

これらはすべて実際に起きたことを元にして書いているが、みなさんがLAカフェを訪れる場合には自己責任でということを最後に強調しておく。

 

【マニラ2泊突発旅行 #2】 スラムとカジノのはざまで

2024年8月、フランスではパリ五輪が開催され、日本では南海トラフのリスクが叫ばれる中、私は単身マニラにいた。

ひしゃげたジプニーがクラクションを絶え間なく鳴らし、夜には痩せた野犬が跋扈するマニラで私が見てきたものを4回に分けてご紹介する第2弾。

 

【マニラ2泊突発旅行 #2】スラムとカジノのはざまで

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けたたましいクラクションが聞こえ目を覚ます。

ジプニー独特のクラクションで、ここがマニラであることを思い出す。

昨晩はシャワーを浴びると寝不足と疲れがどっと出たようで、泥のように眠ることができた。

 

カーテンを開けるとしとしとと雨が降っており、マニラが雨季であることを再認識させられる。

 

今日の目的は2つ。バクララン市場とカジノホテルのオカダ マニラである。マニラの庶民の生活と金持ちの生活をみたいと思ったのが選んだ背景である。タクシーで行こうとも思ったが、調べると市場経由でカジノまで1時間ほどで歩けそうだったので散歩を兼ねて歩くことにした。

 

地元民の街を歩く

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朝の繁華街はお祭りのあとのようだった。

あれだけ賑わっていた店々の前から人は消え、通りは通勤のバイクとジプニーばかりになっている。

 

1日目は車移動で気が付かなかったが、繁華街のすぐ側に現地民の住宅や市場がある。

軒先で魚や野菜が売り買いされ、小さな食堂でマニラ市民が食事をとっている。四方からは絶えず物音や声が聞こえてくる。お世辞にもきれいな街だとは言えないが、子どもや若い人が多く活気が感じられる。

小さな子どもが雨の中タライに水を溜め楽しそうに水遊びをしていた。その光景はまるで昭和の日本を見ているようだった。

 

せっかくなのでここらの食堂で朝食を取ることにした。

店先に作り置きのおかずが並べられており、好きなものを選んで器によそってもらうのがマラテ地区のスタイル。オススメを尋ねると豚肉と白菜のスープだというのでそれをもらい、追加で豚の角煮のようなものとプレーン ライスとコーラを頼んだ。値段はおよそ500円ほど。

スープは優しい塩味で、豚肉もごろっと入っていて美味しかった。角煮も濃い味でよかったが、米がちょっと受け付けなかった。

よく美味しい米を「米が立っている」と表現することがある。これはまさにそれの反対であった。固めながら米同士が融合しており、解凍に失敗した冷凍ご飯のようだった。

これまで自分は好き嫌いなくなんでも食べられるタイプだと思っていたが、米が美味しくないのだけは厳しいとわかった。インディカ米自体は好きではあるのだが。。

 

食事を終えまたバクララン市場に向けて歩き出すと、本格的に住居ゾーンに入った。雨がザーザーと降っているが、軒先にはおかまいなしに衣類が干してある。

家はバラックのようで、ビニールで雨風をしのいでいるところもあった。住民から謝謝と話しかけられたので、ジャパンと返しておいた。

 

ショッピングモールのように大資本が入り強制的に発展させられたところがある一方で、バラック家屋のように経済発展の恩恵を受けられていない領域もまだまだ残っている。

外資の資本が入ることで発展する側面がある一方で、弱い経済圏を大資本が食い荒らし、元からいた人の生活は豊かにならない分断が生じていることにグロテスクさを感じた。

 

マニラ最大の市場 バクララン市場

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1時間ほど歩きバクララン市場に着いた。

市場は思った以上に広く、メインの通り以外にも枝分かれする形で広がっていた。商店ではマニラ市民向けの衣類や文房具のほか、観光客向けに置物などが売っていた。平日だが場所によっては子どもが店番しているところもあった。どの店主たちも基本モチベーションは高くなく、客が来ると重い腰をあげなんとか対応していたのが日本とは対照的であった。

道端のスピーカーからは音楽が(おそらく勝手に)爆音で流れ、ときには日本の音楽も流れていた。

 

天気は雨が上がってきたと思えば急激に日がさしてきたり、突如スコールのような大雨が降ったりと雨季らしく大荒れだった。晴雨兼用傘を持ってきていてとても助かった。

 

フード系のお店が多く並ぶ小道に入ったとこで、冷たいものが欲しくなった。店前で掃除をしていたお兄さんにソフトクリームを頼んだところまだやっていないと言われてしまった。

別のお店でヤクルト入りフルーツソーダ(65ペソ=約160円)を飲むと、冷たさと爽やかさで少し体力が回復した。

日陰ではおじさんたちがチェスをさしていた。

 

バクララン市場のそばにバクララン教会があったのでついでに寄ってみた。

綺麗で広い敷地を持つ教会は市民の憩いの場となっており、キリスト教がフィリピンの文化として機能していることが肌で感じられた。

誰でも自由に入り休むことができるので、バクララン観光で疲れた時にはよってみてもいいかもしれない。

 

バクラランをあとにし、カジノに向かった。街並みの変化も見たかったので、ホテルから市場同様、カジノへも歩いて行くことにした。

しかしこれが失敗の元だった。

 

ホテルからバクラランまでは市民の市場があったり、住居があったりまた多くの人が行きかっていたので見どころがあった。一方カジノがあるエンターテイメント・シティは湾岸沿いにつくられた人工開発地域であり、大きな道路の傍に大きなホテルや建設中の建造物があるだけで歩いてみられるところはほとんどない。

車がビュンビュン走る広い道路の横を、心を無にしてひたすら歩く。

 

いつしか雲は消え去り、眩しいくらいの日差しが全身に突き刺してくる。水分を多く含んだ湿潤な空気は身体にまとわりつき、汗が滝のように溢れてくる。

不足した水分を補おうとペットボトルの水を飲むが、出ていく汗に追いつかない。体を潤し切る前にもっていた水は尽きてしまった。

 

それでもなんとか1時間弱歩き、巨大なカジノホテルであるオカダ・マニラが見えてきた。

 

オカダ・マニラでカジノに初挑戦

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オカダ・マニラは日本のユニバーサル・エンターテイメントが運営する、アジア最大級の統合リゾート施設である。その規模は東京ディズニーランドをも凌駕し、マニラの商業地区であるエンターテイメント・シティの1/3にも匹敵する。

名前は当リゾートのオーナーである岡田和生氏に由来する。岡田氏はパチスロとパチンコ機の製造で財を築き、1999年には日本の長者番付で1位にまで上り詰めたことのある大物である。

 

その豪壮なつくりに、外観と内観を見た時でそれぞれ言葉を失った。

外観は曲線で構成されていながら調和が取れており、上にいくに連れ段々に小さくなる構造と黄金に輝くガラスはまさに現代のピラミッドのようである。背後が海で近くに大きな建物もないため、近づくとオカダ・マニラ以外になにも目に入らなくなる。

 

巨大な入り口には狛犬が2つシンメトリーに鎮座しており、中に入ると荷物検査になっている。高級ホテルであるため厳格な警備員がいるかもとビクビクしていたが、実際にはとてもフレンドリーな対応をとってもらえた。急に話しかけられ何かと思ったら、カバンにつけていたミッキーのペットボトルホルダーを可愛いと褒めてもらえた。

 

荷物検査を抜けると、目に飛び込んできたのは湖かと見間違うほどの巨大なプールときれいなレストラン街だった。

ホテルは中央のプールを取り囲むようにガラス張りになっており、どこのレストランからもプールを見ることができる。レストランはファストフードから高級料理まで幅広く並んでおり、この中では毎日いても食べるものに飽きることはないだろうと思った。

なぜか通路に日本のUFOキャッチャーもあり、パチモンか微妙なラインのサンリオやポケモンの景品が入っていた。

 

これまで見たことのない豪華さに目を丸くしながら2周ほど建物内を散歩し、せっかくなのでカジノに挑戦することにした。

日本でもギャンブルは一切やったことなく、ぶっつけ本番でやったことないテーブルゲームにチャレンジするのは気が引けたのでスロットマシンを試してみることにした。

 

スロットマシンと一言で言ってもかなりの数と種類があり、とりあえず何が違うかを確認しながら徘徊する。見て回るうちに少しずつ違いがわかってきたが、それ以上に印象的だったのは多くのスロットが中国向けに作られていることである。

スロットの絵柄やテーマ自体が赤を基調としたドラゴンや福に関するものが多い。

確かに言われてみればホテルの客の大半が中国人家族で、日本人や西洋人はチラホラとしか見かけなかった。やはりこの時代アジアでお金を持っているのは中国人なのだとひしひしと感じた。

 

賭け金の小さいスロットマシーンを見つけ、腰をおろす。とりあえず様子見で500ペソ(=約1,250円)を入れてスロットを回してみたが、一瞬で溶けて消えた。目押しもないので、ただお金を消費するためにボタンを押していったという感じだった。

追加で500ペソ入れてみたが結果は変わらずで、結局面白みの分からないまま人生初カジノは終わった。

 

VIPエリアにはラフな格好でありながらお金を持ってそうなアジア人がパラパラとスロットやテーブルゲームに興じていた。みな時間を持て余しているようで、楽しんでいるのか時間を潰しているのかわからない感じだった。

それにしても、人生の成功者が行き着く先がパチンコとはなんだか寂しいものだなとも感じた。

 

疲れてたのでオカダ・マニラ内のスタバで一休みし、次の場所に向かった。スタバは世界どこでも同じ雰囲気だった。

 

 

巨大ショッピングモールでお土産を探す

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夕飯にはまだ早い時間だったので、近くにある巨大ショッピングモールMOA(Mall of Asia)へ寄り、お土産を見ることにした。

そう遠く無い距離ではあったが、 エンターテイメント・シティの移動に徒歩は不向きだと昼間に痛いほど分かったので大人しくGrabタクシーを使うことにした。

ホテルの外でタクシーを待っていると、ボーイがタクシーが来たら呼ぶからエントランスで待っていてよいと案内してくれた。こういったサラッとした気遣いはやはり高級ホテルなのだと思ったと同時に、半分冷やかしに来た貧乏人がこのような扱いをしてもらい申し訳なさも感じた。

 

MOAは日本のイオン・レイクタウンと同じような感じだった。というか前のショッピングモール同様日本のチェーン店も多く進出し、視界にユニクロ、ニトリ、無印が揃った時には脳がちょっとした混乱を起こしていた。

特出すべき点としては子供が多いためか子供向けのお店が多く、店内には大きなメリーゴーランドまであった。

モールの規模に対し本屋の規模が小さいのも気になった。フィリピンではあまり紙の本を読む文化がないのだろうか。

 

暇だったので飲食物のスーパーマーケットにも行ってみた。建物ワンフロアまるまる食料売り場となっていて、生鮮食品から輸入品まで幅広く揃えられていた。

袋麺ゾーンには日本の袋麺も多く並べてあった。しかし5食入りのサッポロ一番は500ペソ(=約1250円)と超高額で驚いた。このスーパーは庶民のためというより、高級住宅街に住む富裕層向けなのであろう。あとはフィリピン駐在の日本の商社マンなどが買いに来るのだろうか。

 

17時を過ぎ、ゆっくりと日が傾いてきた頃お腹も空いてきた。

ここまで行き当たりばったりで食事をしてきたが、せっかくマニラに来たので美味しいフィリピン料理を食べたくなり、ガイドブックや多くのブログでも紹介されていたレストランに向かうことにした。

 

レストランまでは例にもれずGlabタクシーで移動した。夕方のマニラは一番道が混雑する時間帯で、15分の予定が40分ほどかかった。

 

相変わらず運転の荒さには肝が冷やすが、だんだんとマニラの交通ルールが単に無秩序なのではなく、彼らが暗黙で共有しているリズムがあることに気がついてきた。

車線変更する際にどのタイミングまでに入れるか入れないかの判断をするか、交差点で歩行者が渡ろうとしているときどのタイミングで行けば良いかなど、日本人とは違う彼らの感覚があり、それらにしたがっているためにスレスレでも事故らず済んでいるのだ。日本人が日本人のリズムや暗黙知の共有して生きているように、フィリピン人にもまた彼らのリズムがあるのだった。

 

それにしても危ないなと車体の隙間を抜けているオートバイを横目に、となりでは仕事を終えた土木作業員が軽トラの荷台に乗り資材の影で太陽を遮りながら帰っていた。

 

人気のフィリピン料理レストランで旅を締めくくる

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向かったのはマニラの夕日を見ながら食事ができることで人気の「ハーバービューレストラン」である。

マニラの夕日は釧路、バリ島と並び世界三大夕日の一つとも言われ、真っ赤に燃えながら沈んでゆく夕日は見るものに忘れえぬ感動を与える。

もちろん私も夕日を楽しみに訪れていたが、残念ながらその日は夕日が落ちる方向に大きな雲があり、晴れてはいたがその絶景を味わうことはできなかった。

 

海に向かって伸びる桟橋の上に建てられたようなレストランは、どの席からでも海を見ることができる。観光客だけなくマニラ市民にも人気なようで、家族で楽しそうに食事をする姿を多く見られた。

 

予約無しで行ったため入れるか少し心配であったが、平日のためかすんなり席に通してもらえた。

 

メニューは写真付きでわかりやすく、肉料理や麺料理、寿司も選ぶことができた。

私はミミガーの炒め物とフィリピン風焼きそば、ウェイターのおすすめであるシーザーサラダそしてフィリピンの代表的なビールであるSMB(サンミゲル)をオーダーした。

 

すぐにビンのサンミゲルと氷の入ったグラスを持ってきてくれた。グラス付きには少し驚いたが、冷蔵設備の整備が遅れていた東南アジアではビールに氷はよくあることらしい。

高温湿潤な気候の中でベタベタに汗をかいた身体に、キンキンに冷えたビールが注がれていく。

サンマゲルはスッキリと飲みやすく、海からの風も相まって爽やかな気持ちになった。

 

浅瀬で水遊びをする人や、遠くの船や雲を見ながら料理を待つ。しかし待てども待てども料理は来ず、気が付けば自分より後にオーダーした他の卓で料理が届き始めていた。さすがに30分を過ぎたあたりで様子が気になり、先ほどのウェイターに状況を確認する。

初めは優雅な気持ちで海を眺めていたものの、次第に空が暗くなり風が強くなってくると、料理がこないことに神経を持っていかれるようになってきた。

ウェイターは確認しますと言い、サラダだけでも先持ってきてくれれば嬉しいなと思っているところ、10数分後に一気に料理が運ばれてきた。やはりオーダーが通っていなかったようであった。

 

料理が来たころには風は一層強くなっており、フォークやスプーンはカタカタと揺れ、紙もバサバサと激しく音を立てなびいていた。

顔にもガンガン海風が当たるのが気になるが、空腹も限界に達していたのでとりあえず食べ始める。

 

人気店というだけあり、料理はどれも美味しく、日本人好みの味である。

 

ただ食べていく中で困ったことが3つあった。

一つ目はとても量が多いということである。どの料理も大皿で運ばれてきており、だいたいそれぞれ3人前くらいはある。そもそもこのお店は家族連れや友人グループで訪れることを全体としているようで(席の配置も概ねそうなっている)、料理も取り分けて食べる全体なのだろう。値段もやや高めだなと感じていたが、3人で分ければ妥当な金額ではある。

二つ目は3皿ともかなりオイリーであることである。味はとても美味しいのだが、炒め物も焼きそばもサラダもたっぷりの油でコーティングされているので、食べているうちに胃がもたれてくる。特にミミガーの炒め物は鶏皮くらい油が出てきており、だんだんと辛くなり途中で手が止まってしまった。

最後は風の問題で、日が落ちてからというもの風威は強まるばかりで、店内の照明も大きく揺れている。ときにサラダの葉が飛んでいってしまうこともあり、さすがに食べにくいなと感じていると、ほかの席でカーテンを下ろしているところが目に入った。

なんだ、カーテン下ろせるのかとわかり、すぐにウェイターを呼びカーテンを下ろしてもらう。すると散食事を妨害してきた忌々しき風はパタリとなくなり、意外快適に食事をすることができた。

 

量と油に圧倒されながらなんとか食べられる分を食べ、若干のギルティにごめんなさいをし会計をして出た。

食べログにはクレジットカードが使えるとあったが、ウェイターに確認したところ現金オンリーだと言われたので注意が必要である。

料金はビール3本と料理3皿で5,000円ほどだった。3人で食べに行けば一人2,000円くらいになると思うので、コスパ的にも悪くない店であった。

 

店を出ると、まばゆい光線と激しい音楽が聞こえてきた。どうやら近くでライブをやっているようである。横では客のいない物売りが、所在なくライブの光を眺めていた。

 

歩行者のほぼいない大きな道路を一人で歩きホテルに向かう。

残り少なくなったペソを最後に使ってしまおうとついでに昨日も訪れたバー・LAカフェに寄り道し、少し酔いのさめつつあるほてった身体に再びサンミゲルを流し込んだ。

 

あっという間の2日間だった。

直前に思いつきで航空券をとり、ほぼ何も準備をしないまま飛行機に飛び乗りここまできた。

初日のイントラムロスではぼったくりガイドに遭い、二日目は貧しい中暮らす人々の生活と金持ちの道楽の対比を見た。

もちろん今回見ることができたのはマニラのごく一部に過ぎない。しかし初めての1人海外旅行で味わえた光景と後半はいつまでも記憶に残り続けるだろう。