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【最高のビジネス書】中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

オススメ度:★★★★★

ラストスパートこそ諸悪の根源です。そのことを絶対に忘れないでください。(p.184)

 

中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

 本書のエッセンス
・「ラストスパート志向」が諸悪の根源
・集中力の秘訣は「界王拳」
・マルチタスクこそ、仕事が進まない理由の最たるもの

 

感想

最近読んだ本のなかで最も悩みを本質的に解決してくれた一冊。

これまでの私は、上司の「なぜ仕事が終わらなかったのか」「なぜクオリティをあげるとことができなかったのか」という問いに対して、「忙しくて時間をつくれませんでした」という何とも情けない返答を繰り返していた。しかもその言い訳のあとも仕事の量が変わるわけではないため、結果として同じ低品質のアウトプットを続け上司からの評価も自己効力感もすり減らしながら、ただただ辛さだけを感じながら目の前の仕事を消化する日々を何ヶ月もの間繰り返していた。

この本ではそんな私の現状をすべて見ているかのように、悩みの原因を言い当てその解決策を授けてくれたのだ。

 

あなたの任務は10時前に到着する電車に乗ることではない、10時に待ち合わせ場所にいることである

待ち合わせの例でいえば、大抵の人は(任務を)10時前に到着する電車に乗ることだと思っています。しかし本当の任務は、10時に待ち合わせ場所に着くことです。(p.74)

仕事の締め切りが間に合わないという話に対する悩みに対して、中島氏はそもそもの締め切りに対する意識の誤りを指摘している。

具体例として挙げられているのが待ち合わせの例で、多くの人は「10時待ち合わせ」と言われたときに10時前に着く電車に乗ればよいと考える。もちろんこの意識でうまくいく場合もあるが、実際には電車の遅延などイレギュラーな問題により間に合わなくなることも往々にして発生してくる。そうなると待ち合わせ相手に「電車には乗ったのでが…」と謝りの連絡をいれることになる。

 

しかし待ち合わせにおいて求められているのは電車に乗ったかどうかではない。きちんと時間通りに来ているかどうかである。たとえ予定通りの電車に乗っていようとも、また全速力で走っていようと、間に合わなければ相手からすれば知った話ではない。

これは仕事の締め切りにおいても同様であり、締め切りに間に合わせようと徹夜しようとも遅れてしまえばその時点でアウトである。そうではなく、確実に間に合わせるために何が必要かを考えて行動しなくてはならない。

 

ロケットスタート時間術

人は誰しも無意識のうちに不安を抱えながら仕事をしています。締め切りに間に合うかどうかを恐れているからです。ですから、取り掛かる時期が早ければ早いほど不安は小さくなります。取り掛かりを前倒しし、華麗なロケットスタートを切れば仕事のほとんどが期限の2割程度の時間で終わります。(p.159)

仕事が苦しくなるのは「終わらないかもしれない」という不安に苛まれるからである。逆に言えば「確実に終わるだろう」という確信をもって仕事に臨むことができるのであれば不安から離れ、仕事に集中でき、結果的にアウトプットを向上させることにつながる。

 

確実に仕事が終わると感じられるようにするためには、①残りの仕事に不透明な要素がないこと、②締め切りまでの期間が見積もられていること、③見積もった期間に対し十分な時間があることが重要になる。

①残りの仕事に不透明な要素がないことと②締め切りまでの期間が見積もられていることについて解消するためには、まずタスクに手を付けてみるしかない。取り組んだことのある仕事であればある程度予測することができるが、知的労働であれば全く同じ仕事であることはまずなく、多くの場合実際に着手すると思わぬトラブルが発生したり、想定上の工数が必要となることがしばしばある。

また仕事は大抵の場合受け取った時点でそんなに時間に余裕があることが多くない。したがって③見積もった期間に対し十分な時間があることの状況を作り出すためには、自分の使える期間の序盤にある程度前倒しで作業を進め、後半にゆとりをつくるしかない。

 

これらから導かれる時間法こそ中島氏の「最初の2日間で仕事の8割を終わらせる」ロケットスタート時間術である

最初の2日間でほとんどの仕事を終わらせることで不透明要素を事前につぶせ、ゴールまでの見通しが明るくなり、アウトプットのクオリティを上げるための時間を確保することができる。

この最初の2日間は「20倍界王拳」を意識し働き(とにかくイメージが大切とのこと)、マルチタスクを排除し自分のリソースを全力で注ぎこむ。

しかし実際にはこまごまな仕事がありそんなに一つに集中して仕事を進めるのが難しいということもある。集中するための時間を作り出すなら、朝しかない。朝はメールやほかの外部要因に邪魔されず仕事に取り組むことができる。やるなら朝しかないのだ。

 

また最初の2日間以外の日においてもロケットスタート時間術は有効である。それは一日のうち最初の2時間半のうちにその日の仕事のうちの8割を終わらせることである。そのように仕事を進めればやるべき仕事は午前には片付き、残りの時間を流して進めることができる。

 

ロケットスタート時間術の対極にあるのが「ラストスパート志向」であり、多くの人がこの意識に取りつかれている。締め切り直前に頑張ればいいやという意識では、ロケットスタート時間術で得られる効果がすべて逆に働くことになり、あなたの仕事は終わらなくなる。

かく言う私の完全なる「ラストスパート志向」にどっぷりとつかり、すべてがドミノ倒しのように崩壊してしまっていた。

 

「ラストスパート志向」から脱却しロケットスタート時間術で動くためには、生活リズムを朝型に変え、翌日のタスクを15分単位に分解し立て、また明日の仕事の8割をはじめの2時間半に変えること。それだけである。

実際のところ、私の仕事の仕方が完全に改良されたわけではない。今でも朝起きるのは辛ければ、締め切り直前まで仕事に追われることも少なくない。ただこのような有効な処方箋があるということそれ自体が、これまでの疲弊しきった精神を助けてくれていることは疑いがない。