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【本の紹介】竹内薫『99.9%は仮説』

オススメ度:★★★☆☆

「そんなことありえない」と頭ごなしに否定するのではなく、「限りなく黒に近いかもしれないけど、これもやっぱり仮説のひとつだ」と肯定的に捉えるべきなのです。(p.203)

 

竹内薫『99%は仮説』

著者:竹内薫(1960~)

東京都生れ。サイエンス作家。東京大学理学部卒業後、マギル大学大学院博士課程修了。『怖くて眠れなくなる科学』、『体感する数学』など著者多数。

 

キャッチーなタイトルでついつい手に取ってしまいたくなるこの本。そのタイトルの本質を一言で言えば懐疑主義にとても近い。

人間の知覚や科学が全能でないという前提を置いた上で、どのように振る舞うのがベストかを説いている、

 

すべては仮説に過ぎない

この本ではまず世の中のすべての主張が仮説に過ぎないという主張からスタートする。

世の中の常識や科学といった「定説」は現時点で有力視されている仮説に過ぎない。過去を振り返れば、天動説は崩れ、宇宙空間にエーテルは存在せず、つぶれないと言われた山一證券が倒産した。これらすべては当時の「定説」であったはずだが、結果として崩れ去っている。すなわち、現在の定説も超歴史的な事実であるとは限らずいつか覆される可能性がある。

 

弱い懐疑的態度で生きる

定説を受け入れるということは思考停止と同義である。とはいえデカルトの一切懐疑のような態度で生きるのは苦しすぎる。ではどのような態度で生きることが求められるのであろうか。

「そんなことありえない」と頭ごなしに否定するのではなく、「限りなく黒に近いかもしれないけど、これもやっぱり仮説のひとつだ」と肯定的に捉えるべきなのです。(p.203)

脳死で受け入れるわけでも一切を否定するのでもなく、常識や定説と言われているものでももしかしたら違うのかもしれないと弱い懐疑的態度で生きることで視野を広げ、柔軟な思考を可能にする。考えに生き詰まったときに、当たり前だと思っていた前提を疑う態度を身に着けていれば突破口になるかもしれない。

 

またこれは人間関係にも転用可能で、他者が自分と違った前提を持っていることを理解することで協調していける。