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【給料の期待値】北野唯我『転職の思考法』

オススメ度:★★★★☆

20代は専門性、30代以降は経験をとれ。(p.38)

北野唯我『転職の思考法』

 本書のエッセンス
・給料の期待値=人的資本 × 技術資産 × 業界の生産性
・20代は専門性、30代以降は経験をとれ
・転職というオプションがキャリアを強くする

 

サラリーマンになり1年が過ぎた。

何も分からない中、がむしゃらにずっと頑張ってきたが、ようやく周りのことが見えて来た気がする。

 

右往左往と考えながら、次に見つけるべきは「強いキャリア」だと考えるようになった。

「強いキャリア」を考える中でいくつかの本を読み、その中で森岡毅氏の『苦しかったときの話をしようか』に出会った。

この本の詳細は以下に譲るが、読む中で衝撃的だったが転職をオプションに加えるというキャリア観である。

www.artbook2020.com

これは「転職をしろ」とは少し異なる。

転職をすることが目的なのではなく、今の会社を続けることも転職することも並列されたオプションとして扱うことを推奨している。

無意識に今の会社で働くことを前提にしていた自分にとって、これは衝撃的かつ自省させられるメッセージであった。

 

転職したことがない自分が転職するイメージをつける目的で、この本を手に取った。

 

市場価値の考え方

今の会社に留まることと転職することを同列に扱うためには、両方のオプションをとった際の影響と結果を正当に評価できることが前提となる。社内に留まり続けた場合のイメージや影響は付きやすい。

一方で転職したことのない人間や一つの会社に長く居続けた人間取って、今の自分がどれほど市場価値があるか図ることは難しい。

その会社では「できる人」と評価されていても、一歩会社の外に出れば「市場価値のない人」になることは往々にしてある。

このような事態に陥らないためには、会社のなかでの評価がすべてでないことを認識し、市場での評価がどのように行われていくのか、評価の変数は何であるかを知る必要がある。

 

市場価値の方程式

ずばり、市場価値=給料の期待値は以下の式で決まる。

給料の期待値 = 人的資本 × 技術資産 × 業界の生産性(/人)

人的資本とはコネクションのことである。ビジネスは意外と「貸し借り」で動いており、若手のうちはあまり意識されないが、40代になると重要なファクターになる。

人的資本は急には拵えられないため、早いうちから意識して動いておく必要がある。

 

20代は専門性、30代以降は経験をとれ。

次の技術資本は「専門性」と「経験」から成る

「専門性」とは職種に結びつく能力で、営業や経理、エンジニアなどそれぞれの職種で存在する、垂直的なスキルである。ハードスキルとも呼ばれる。

一方の「経験」は職種と結びつかない能力で、マネジメント能力などがこれにあたる。ソフトスキルがこれに近い。

 

技術資本において、キャリアを積んでいく上では時期と順番がポイントになってくる。

20代は専門性、30代以降は経験をとれ。(p.38)

一般的には年齢が上がれば上がるほど転職でも専門性が求められるようになることから、30代こそ専門性が重要なように思われるが、実はそうではないという。

 

なぜなら「経験」はだれにでも回ってくるものではないからだ。

リーダーとしての経験、新規事業の経験は当然社内のエースと呼ばれる人に集中する。つまり「専門性」がある人間にだけ、「経験」がめぐってくる。

したがって、20代で「専門性」を身に着けたうえで、30代で「経験」を回してもらえる戦略がベストになるのだ。

 

最後に、給料というのは畢竟業界で決まる。これはその人間が優秀かポンコツかといったこと以上にダイレクトに影響してくる。

こういった意味でも、斜陽産業や業界に身を置くのは止めた方がいいだろう。

 

転職実践編

ここからは実際に転職を実践した際に抑えておくポイントを列挙していく。

私はこれまで転職したことがないので、今後転職することに決めた際の備忘として残しておく。

 

会社選びの3つの基準
①マーケットバリュー
②働きやすさ
③活躍の可能性

上記の3ポイントを言い換えれば、将来性があり自分が活躍できることが重要であるということになる。①のマーケットバリューとは、簡単に言えば"イケてる"社員が集まっているかという部分にあたる。転職の議論では①②が対立として語られることが多いが、実際には①②は長期的には両立する。

②③を転職活動の中で見極めるためには、面接にあたって人事に直接伺うのがよい。そのうえで自分がその会社の中核事業においてバリューを出せそうか(スキルややりたいこととマッチしているか)、転職の場合には中途社員が活躍できる土壌があるかを確認する。

また本書では加えていいベンチャー企業の見分け方についても言及している(p114)。

 

いいエージェントの5か条
①懸念点含めFBくれる
②キャリアを軸にアドバイスしてくれる
③回答期限や年収の交渉ができる
④粘り強く新たな案件を探してくれる
⑤太いパイプを持っている

エージェントは就職を決める点にインセンティブがあるため、利害関係の構造として100%就活者の味方になりえない。

それでもエージェントにより良し悪しはあり、それを見分ける基準として上記の5か条は役に立つ。

 

終身雇用が崩壊し転職が当たり前になった今、受け身の転職ではなく攻めの転職がキャリアを成功に導くカギとなる。これからもサラリーマンとして生きていく人にとって必読だと思った。