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【本の紹介】さくらももこ『ももこの世界あっちこっちめぐり』

オススメ度:★★★★★

 

さくらももこ『ももこの世界あっちこっちめぐり』

著者:さくらももこ(1965~2018)

静岡県清水市生れ。静岡英和女学院短期大学卒業。新卒入社したぎょうせいを2ヵ月で退職し、漫画家となる。代表作に漫画『ちびまる子ちゃん』『コジコジ』、エッセイ『もものかんづめ』『さるのこしかけ』などがある。

 本書のエッセンス
・さくらももこによる世界旅行エッセイ
・同行者は夫・ガイド、ときどき父ひろし
・素直な感想が面白い

 

感想

さくらももこは格好つけない。だからこそ、彼女の言葉が虚栄ではなく、心から出たものだと信じられる。

 

グルメレポーターの「おいしい」は信用ならないが、さくらももこの「おいしい」は信用できる。

ましてやそのさくらももこが以下のように表現したということは、どれだけ素晴らしいのだろうと想像させられる。

ベネチアの空はくっきりと青く、レストランの庭の各テーブルから人々の話し声や笑い声だけがさざめいている。そんな場所で本場のスパゲッティを食べる幸せは、死ぬ間際にまで思い出してしまいそうだ。(p.38)

読んでいるだけでイタリアへ行き、このレストランで食事がしたくなってくる。死ぬ間際に思い出すほどの食事とはどれほどのものか、読みながらよだれが出た。

 

もちろんさくらももこのエッセイを読んでいて一番出るのは笑みである。言うまでもないが、とにかく表現が面白い。

 

本人や周りの人々が変わっているだけでなく、普通の人ならなんともない光景も、さくらももこ節でクスッと笑える一文にしてしまう。

そんな文章が随所に突然放り込まれているので、予期せぬタイミングで出会うと外で読んでいてもつい笑ってしまう。

オッサンが描いた絵は、「お土産プレゼント」のコーナーに載っているので気に入った方はぜひ応募していただきたい。(p.135)

無名とは言え、パリで気に入り作品をプレゼントにまでした画家をオッサン呼ばわりしていてしっかりと電車内で笑ってしまった。

 

時々本が読めなくなるスランプに陥ることがあるが、そんなときでも星新一とさくらももこだけは楽しく読むことができる。

さくらももこの新作がもう読めないのはとても残念だが、まだ出会っていないエッセイたちを大事に読んでいきたいと思う。