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【映画の感想】オードリー『ローマの休日 4Kレストア版』

オススメ度:★★★★★

 

『ローマの休日』

 

あらすじ

あるヨーロッパの王位継承者であるアン王女は、欧州中を親善旅行で周り、最後の地としてローマを訪れる。

しかしローマのでの歓迎舞踏会の夜、窓から楽しそうな大衆のダンスパーティーを眺めると、自分の不自由さを嘆き宮殿から脱走する。

ローマの街へと飛び出したアン王女だったが、次第に主治医に投薬された鎮静剤が効き街中で眠ってしまう。

 

アメリカ系の新聞記者で賭け帰りのジョー・ブラッドリーが道で眠るアン女王を見つけ、放っておけないとしぶしぶ家でベットを貸してやる。

しかし次の日の朝、彼女がアン王女だと分かると、スクープのため彼女と一日過ごすことを決める。

 

アン女王とジョーはローマの街を自由に歩き、楽しむ。広場でジェラートを食べたり、カフェでシャンパンを飲んだり、そして真実の口に手を入れたりと。

ジョーは楽しみながらも自然に友人のカメラマンのアービングを合流させ、女王の街中での行動を撮影させる。

 

その夜、アン女王は街の床屋で教えてもらったダンスパーティーに行きたいと言い、一行は向かう。大衆のダンスを楽しむ女王であったが、そこに女王の存在に気がついた守衛たちが集まり、乱闘騒ぎとなる。

ギリギリのところで逃げ切った女王とジョーは一旦部屋に戻る。

 

楽しい時間はいつまでも続かない。

アン女王は帰る決心をし、二人は車で宮殿に向かう。そして宮殿近くの路地でアン王女は「私が車を出てどこへ行くか見ないで欲しい」と伝え、二人は抱擁とキスを交わし二人は別れる。

 

次の日、ジョーとアービングのもとに上司がスクープ記事の様子を聞きに来るが、ジョーは「そんな記事はない」と伝える。上司が怒り帰ると、今度はアービングに「写真は好きにしていい」と力なさげに話す。

 

2人はそのまま、アン女王の宮殿での記者会見に参加する。

ジョーの正体を知らなかった女王は驚きつつも平静を保つ。壇上の女王とジョーは視線を交わすと、二人は目の奥深くに涙を浮かべる。

アービングは挨拶の際に写真を女王に手渡し、ジョーと女王も最後の挨拶を済ませる。

 

そして女王が奥に戻ると、ジョーは名残惜しそうにしながらもゆっくりと部屋と後にする。

 

感想

『ローマの休日』製作70周年を記念して、2023年8月25日(金)より全国の映画館で映像を綺麗にした4Kレストア版が公開された。

「ローマの休日 製作70周年 4Kレストア版」特設サイト

 

『ローマの休日』は言わずもがな誰もが知る名作で、オードリー・ヘップバーンを一躍スターにした作品でもある。

 

4K版を観るにあたり、私の心境としては映画鑑賞というより有名な観光地を見るときのそれに近いものであった。つまりそれそのものが優れているから見ると言うよりか、有名だから、みんなが知っているからという浅薄な動機であった。

 

しかしこのような浅薄な動機は開始5分で吹き飛ばされた。

冒頭アン王女に諸名士が謁見する場面、同じ挨拶を無限に繰り返すアン王女は退屈から、ドレスの中で靴を脱ぐと、その靴がドレスから溢れ出てしまう。後ろから出てきた靴に気がついた侍従たちはギョッと目を丸くする。

この場面だけでもアン王女の性格とオードリーの美貌と演技力にぐっと惹きつけられる。

この時点で私の姿勢は観光から鑑賞へと移り変わっていた。映画としての面白さにあっという間に引き込まれていた。

 

この映画はユーモア・ストーリー・音楽どれをとっても素晴らしい。しかしこの映画の中でも卓越しているのが、圧倒的な演技力である。

 

ストーリーの分類としては「ラブロマンス」と入ると思うが、この映画の中で愛を言葉にして伝えるようなシーンは存在しない。

行動の結果として、愛が存在することが分かる。

 

愛の言葉に限らず、大事なシーンでは言葉ではなく演技で語るような場面が多い。この無言の演技が圧巻である。

何も語っていないのに、気持ちが自分の内面に直接投影させているくらいに感じられる

言葉で語るときよりも、心情の機微がみごとに表現されている。

 

何度でも見返したくなる、すべての人にお勧めしたい名作であった。