オススメ度:★★★★★
冷や汗をびっしょりかいて目を覚ますんだ。僕たちはいったい何を創ってしまったんだろうって。うちの子供たちは、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われるような顔をする。(p.80)
アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』
一億総スマホ依存社会
鬼才スティーブ・ジョブズが世に放ってから急速に普及し私たちの生活を変えたスマートフォン。2023年現在では日本のスマホ普及率は驚異の96.3%となり、スマホなしでの生活を想像する方が難しい状況にまでなっている。
その利便性によって生活の質を向上させてくれる一方で、SNS・ソシャゲ依存症など人生を蝕んでいく側面も併せ持つ。
なぜ私たちはスマホを手放すことができないのであろうか。本書ではその理由と開発者側の気持ちが記載されている。本書のゴールはスマホを手放せない理由を知ることによって自分の行動を俯瞰し、スマホ依存症を抑止することである。
「かもしれない」が大好きな脳
私たちがSNSの更新や新着チャット、次のショート動画を気になって仕方がないのは、これらが私たちの「かもしれない」を促し快楽物質であるドーパミンを分泌させるからである。
ドーパミンの最重要課題は、人間に行動する動機を与えること。(中略)
たいていの場合、着信音が聞こえたときの方が、実際にメールやチャットを読んでいるときよりドーパミンの量が増える。(p.74)
SNSが更新されているかや返信が来ているかに関わらず、更新されているかもしれない・返信が来ているかもしれないという期待がドーパミンを分泌させ私たちをスマホに向かわせる。更新数や返信は有限だが期待は無限であるため、私たちは絶えずスマホに手を伸ばし続ける。
SNSの運営はこの事実を理解したうえで、さらに期待を煽ろうとあの手この手を使ってくる。
フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。(p.78)
ついスマホに手が伸びそうになったときには、この事実を思い出す必要がある。今スマホを見る必要があるのか?目的無くただ期待に踊らされていないか?と。スマホを触る前に自分に一言自問し、自制していくことで依存症から脱却することができる。
スマホは便利だが、演出された期待によって人生を奪われるのはあまりにもったいない。利便性は必ずしも幸福に直結するわけではない。
スマホの危険性を十分に解いた後、著者は現代人が元気になれるこコツを伝授している。
ほとんど全員が元気になれるコツがいくうかある。睡眠を優先し、身体をよく動かし、社会的な関係を作り、適度なストレスに自分をさらし、スマホの使用を制限すること。(p.235)
現代人であれば誰しもがスマホ依存症になるリスクを抱えている。この本を手元に置いておくことで、スマホ依存症になりかけたと感じた際に抜け出すきっかけになるだろう。