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経済学部生と読む『資本論』【第一巻 第四篇 第十一章 「協業」】

カール・マルクスの大著『資本論』を通して読み解いていく企画。

使用しているのは岩波文庫版(向坂逸郎訳)の『資本論』です。あくまでここでの見解、解釈は私個人のものであり、必ずしも一般的なものとは限りませんので、その点につきましてはあらかじめご了承願います。

 

 

第一巻 第四篇 第十一章 「協業」

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資本主義の出発点のカギとなるのが今回のテーマである協業です。なぜ協業が資本主義的生産の出発点になるのか、という点に注目しながらこの章をみていきます。

 

協業の定義

まず協業の定義について。

同一の生産過程において、または相異なってはいるが関連のある諸生産過程において、計画的に相並び、相協力して労働する多数の労働の形態を、協業という。(p.254) 

家内で完結せず、ほかの労働者と一緒に働く体系を協業といいます。マルクスが資本論を描いた当時においては、同じ場所に労働者が集まることが協業の条件だと考えられていました。今でしたらリモートワークでの協業も可能ですね。

 

協業はコスト削減をもたらす

協業は二つの面で生産コストの引き下げを達成することができます。ひとつが道具・機械の節約であり、もう一方が人件費の相対的節約になります。

不変資本の価値成分は低下し、したがって、その大いさに比例して、商品の総価値も低下する。 (p.253)

 家内制手工業では各手工業者ごとにひとつの道具が必要でしたが、協業を行うことによって道具のシェアができるので、必要な道具を減らすことができます。その分コスト(不変資本)を抑えることができ、結果として安く商品を販売できるようになります。

 

次に人件費について。

ゆえに、資本家は、100の独立した労働力の価値を支払うのであって、100という結合労働力の価値を支払うのではない。(p.267)

人は協力して働くことで生産性を上げることができます。例えば、一人が生産できる量が1だとしても、100人集まることで150生産できることがあります。この場合でも資本家が支払う給与は一人1に過ぎないため、残りの分は資本家の取り分となります。

 

資本主義の出発点

従来の家内制手工業では効率的に多くの労働者を使って生産を使うことが困難でした。これがひとつの工場に集め協業を行うよう変化したことで、空間的、時間的ロスがなくなり労働全体を指揮するのも以前と比べ簡単になりました。この中で新たに中間管理職のような役割の労働者も生まれていきます。

 

資本主義的生産とは資本家が多くの労働者を雇い、労働者から剰余価値を搾取することで利潤を蓄積するシステムでした。したがって協業とは多くの労働者を一か所に集め効率的な生産を可能にした点で生産様式の転換期となっているのです。

協業とは資本主義的生産の出発点なのです。