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【本の紹介】渋沢栄一『現代語訳 論語と算盤』

オススメ度:★★★★☆

「ソロバンは『論語』によってできている。だからこそ『論語』とソロバンは、とてもかけ離れているように見えて、実はとても近いものである」(p.13)

渋沢栄一『現代語訳 論語と算盤』

 

感想・まとめ

日本経済の父である渋沢栄一による、ビジネスマンの生き方が詰まった一冊。

ビジネスマンとして社会で成功を収めるためには、損得勘定だけではならない。成功には正しき倫理観が不可欠である。その倫理観のメタファーとして、『論語』を持ち出している。

 

逆境について

渋沢によれば、逆境は2種類に分別することができるという

①人にはどうしようもない逆境
②人がつくった逆境
①と②は換言すれば世の中の定数と変数ともいえる。
①人にはどうしようもない逆境に対し、万能な特効薬はないという。ただ唯一の策は「自己の本分」であると覚悟を決めることである。「人事を尽くして天命を待つ」とある種割り切ることとで心の平静を保つことができる。
 
一方の②人がつくった逆境については以下のように語っている。
これはほとんど自分がやったことの結果なので、とにかく自分を反省して悪い点を改めるしかない。世の中のことは、自分次第なことも多く、自分から「ああしたい、こうしたい」と本気で頑張れば、だいたいはその思い通りになるものである。(p.36)
上記よりビジネスマンの気質として自責思考がいかに重要であるかが分かる。

 

仕事に趣味を持て

仕事をするさい、単に自分の役割分担を決まりきった形でこなすだけなら、それは俗にいう「お決まり通り」。ただ命令に従って処理するだけにすぎない。しかし、ここで「趣味」をもって取り組んでいったとしよう。そうすれば、自分からやる気をもって、

「この仕事は、こうしたい。ああしたい」

「こうやって見たい」

「こうなったら、これをこうすれば、こうなるだろう」

というように、理想や思いを付け加えて実行していくに違いない。それが、初めて「趣味」を持ったということなのだ。わたしは「趣味」の意味はその辺にあるのではないかと理解している。(p.106)

ここでの「趣味」とは、目的意識と言い換えられる。

ただ単に与えられた仕事を紋切型にこなすだけでは仕事から生きがいは得られない。自分でその仕事の意味を見出し、創意工夫をもってそれに前のめりに取り組むことで初めて仕事が面白くなる。

「理解することは、愛好することの深さに及ばない。愛好することは、楽しむ境地の深さに及ばない」(p.108)

楽しんで取り組んだ者だけが、だれも見たことのない景色にたどり着ける。

 

最後に<十の格言>より特に気に入った言葉を紹介する。

声は、どんなに小さくても聞こえてしまう。行いは、隠していてもやがて明らかになってしまう。『説苑』(p.222)

S・スマイルズの『自助論』にも同様の言葉があった。弱ったときにこの言葉を思い出して頑張りたい。