オススメ度:★★★☆☆
不思議なことに、そのあとは、もう立ち止まらなかった。(p.95)
原田マハ『本日は、お日柄もよく』

本書のエッセンス
・スピーチの極意
・女性の王道サクセスストーリー
あらすじ
老舗製菓メーカー「トウタカ製菓」の普通のOLである二ノ宮こと葉は、片思いしていた幼馴染の結婚式で「言葉のプロフェッショナル」と呼ばれる久遠久美と出会う。
久美のスピーチに衝撃を受けたこと葉は、頼まれていた職場の親友の結婚式のスピーチを成功させるべく、久美の依頼人となる。
久美に素質を見抜かれたこと葉は、次第にスピーチライターとして歩みを進めていく。
しかしこと葉の前に大手広告代理店の敏腕コピーライター・和田日間足(わだかまたり)が立ち塞がり、二人の対決の舞台は次第に大きくなっていく。
感想
親しい友人が結婚式をするという知らせを聞くと、スピーチを任されないかすこしドキドキする。
スピーチする側はとんでもないプレッシャーがかかり不安に駆られる一方で、オーディエンスサイドはたいして気に留めない。膨大な時間をかけて準備しても、うまくいくことはまれであり、ひどい時には哀れみさえかけられる。
つまりスピーチは割に合わない役割だなと感じていた。
この小説のなかで主人公のこと葉が親友の同僚の結婚式で友人代表のスピーチをするシーンがある。
話始めるまですこし溜め、しんと静まる会場。読んでいるだけで緊張感の伝わってくる中、こと葉は冒頭から惹きつけ、次第に盛り上がり、最後には感動に持っていく"テクい"スピーチをする。
ふっと、会場の空気が変わった。ざわめきが遠ざかった、その瞬間。
あ。いまだ。
「・・・正直な、感想を言わせてください。」
口から、自然に、言葉がすべり出した。
不思議なことに、そのあとは、もう立ち止まらなかった。(p.95)
文章からテンポや息遣い、会場のボルテージまで感じられ、まるで歌を聴いているような感覚に驚いた。
そしてリスクしか感じていなかったスピーチにこんな可能性があるのかと気付かされ、自分にもこんな話ができたらさぞ興奮するだろうと武者震いがした。
もちろん主人公であること葉が仲間と共に困難を超えながら成長していく王道のサクセスストーリーそのものも(ベタすぎると感じつつ)よく出来ていたが、私が何よりも心を掴まれたのは引用した部分のに続くスピーチであった。



