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【本の紹介】山出保『金沢を歩く』【金沢の由来】

オススメ度:★★★★☆

金沢には、昔もあれば今もある、まるでバームクーヘンのようなまちなのです。(p.203)

山出保『金沢を歩く』

 

長年金沢で市長を務められた山出氏による新書。

金沢という街の特徴・歴史・伝統・風土が分かりやすくコンパクトにまとまっている。

読めば読むほど金沢に興味が湧いてくる良本。

 

兼六園

金沢最大の名所である「兼六園」は、歴代金沢藩主たちによって長い時間をかけて現在の形に整えられた。

兼六園は、十七世紀の中頃、加賀藩主によって金沢城の外郭に造営されました。五代目藩主前田綱紀が手がけ、十三代藩主斉泰によって現在とほぼ同じ形になりました。歴代藩主により、長い年月をかけて形づくられてきたのですが、作庭における基本的な思想は一貫していたようです。その思想とは神仙思想。大きな池を穿って大海に見立て、その中に不老不死の仙人が住むといわれている「蓬莱島」を配しています。藩主たちは、長寿と永劫の繁栄を庭園に投影したのです。(p.20)

この文章だけでも、歴代藩主や神仙思想に対する好奇心が刺激される。不老不死の仙人が住む島とはどのような姿をしているのか、実際に見に行きたくもなった。

ちなみに「兼六園」という名前は宋時代の中国の書物に由来しており、すぐれた庭園が持つ6つの要素(ただしそれぞれは対立関係にあり、一般的に同時に兼ね備えることはできないとされる)を兼ね備えているとして、江戸時代の老中である松平定信が命名したとされる。

 

金沢の由来

もともと尾山という地名であったこの土地は、前田利家によって「金沢」と改められた。その由来となったのは、「芋ほり藤五郎伝説」に登場する金城霊澤という沢(水洗い場)である。伝説の内容自体もとても面白いので、本書をぜひ確認いただきたい。

金城霊澤は兼六園の南東端にあるので、ぜひ兼六園を訪れたときには合わせて見に行きたい。

 

本書ではこのほかにも、これだけ多くの歴史的遺産が残っている背景や、古きものだけでなく新しいもの(例えば21世紀美術館に代表される現代アート)をどのように共存してきたかが語られている。

金沢の観光案内としてはもちろん、都市デザインについて興味がある人にもオススメしたい。