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【絵画の解説】ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」【聖書をわかりやすく解説】

 ベラスケスといえばスペイン・ハプスブルク家お抱えの宮廷画家として有名で、その作品はプラド美術館で多く見ることができます。

 

今回はそんな彼が宮廷画家になる前の、弟子修行から独立してすぐに描いた「マルタとマリアの家のキリスト」についてそのモチーフからわかりやすく解説していきたいと思います!

 

今回のポイント

・マルタとマリアの家のキリストとは?
・「ボデゴン」とはなにか

 

ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」

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「マルタとマリアの家のキリスト」 1618年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー

 

マルタとマリアの家のキリストとは?

この作品は新約聖書の一説(「ルカ福音書」第10章38節~42節、「ヨハネ福音書」第12章1節~8節)をモチーフにした作品です。

 

*マルタとマリアの家のキリスト
キリストは旅の途中、マルタとマリアという姉妹の家を訪れた。マルタはキリストをもてなすために忙しなく働き、一方のマリアはキリストの足元に座りキリストの話に聞き入っていた。
マルタは妹のこの様子に腹を立て、キリストのそばによると「私の妹は私にだけもてなしをさせている。手伝ってくれるようおっしゃってください。」と訴えた。
ところがこれを聞いたキリストはこう返した。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに悩み心を乱している。しかし必要なことはただ一つである。マリアは良いほうを選んだ。それを取り上げてはならない。」
 
この話の中でマルタとマリアはそれぞれ「実践的生活」と「観想的生活」を象徴しています
 
 
「実践的生活」や「観想的生活」とは、古代ギリシアから伝わる人間の徳のことです。「実践的生活」とは困っている人を助けたり、奉仕したりと実際に行動する活動を指します。一方の「観想的生活」とは、行動するのではなくただひたすらに神と向き合い続けることで徳を積む反世俗的な生活を指します。
近代以前の西洋世界では「観想的生活」が「実践的生活」に優越していると考えられてきました
 
ここでキリストが指摘している“良いほう”とは、観想的生活において神の言葉にひたすらに耳を傾ける行為をさしています。この話では神の言葉がいかに重要かを表現しているのです。

 

 

「ボデゴン」とはなにか

この作品が描かれたのはベラスケスが11歳から始めていた弟子修行を終え、独立した直後のことになります。

 

このころのスペインでは厨房の野菜などを描くボデゴン(厨房画)とよばれる静物画がしばしば描かれていました。独立したころのベラスケスもこのジャンルに挑戦し、いくつかの作品を残しています。今回紹介している「マルタとマリアの家のキリスト」も宗教画の要素を併せ持ちながら、同時にボデゴンの一種だと考えられています。

 

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ベラスケス「卵を調理する老婆」 1618年 スコットランド国立美術館

 

おわりに

今回の作品は宗教画と厨房画の2つの要素を持つ面白い作品でした。

特に宗教画についてはモチーフがわかっていると一段と作品を楽しむことができます。ぜひこの絵を見る機会があればこの記事をもう一度読み直していただけるといいと思います!

 

 

今回紹介したベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」はロンドン・ナショナル・ギャラリー展で楽しむことができます!!

もし今回この作品に興味を持たれましたら実際に見てみることをおススメします!!

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

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会場:国立西洋美術館(東京都)

開催期間: 2020/03/03(火) 〜 2020/06/14(日)

開館時間:9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)

休館日:月曜日(但し3/30、5/4は開館)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展|国立西洋美術館

 

 

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www.artbook2020.com

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