オススメ度:★★★★☆
数年前より所々で聞くようになった「フィンテック」。
フィンテックとはFinance(金融)とTechnology(技術)を合わせて作られた造語で、主に、ITを活用した革新的な金融サービス事業を指します。
この本ではフィンテックが注目される理由から実際の金融機関への影響、フィンテックのこれからまでを知識ゼロの人にも分かりやすく解説しています。
この本をオススメしたい人
・フィンテックに興味がある社会人
・経済学部2・3年生
なぜフィンテックが注目されているのか
注目される3つの理由(p.15)
②既存の金融機関の存続を脅かす可能性を秘める
③金融包摂への期待
新しく金融サービスに参入するベンチャー企業の特徴は驚異的な速さで進化を続ける点にあります。既存の金融機関がなかなか革新できない中で、新参企業は低価格で使いやすいサービスを次々と提供しています。
またフィンテックによって、今まで金融サービスを受けられなかった人にも金融サービスが行き渡ることが期待されています。
アメリカでフィンテックが勃興した4つの理由(p.22)
②ミレニアム世代の台頭
③スマートフォンとソーシャルネットワークの普及
④企業のITシステムの変化
アメリカでフィンテックがいち早く勃興したのは、スマホが早い段階で広く行き渡ったことで多くの消費者のデータが集まり、企業のITシステムが変化するタイミングにリーマンショックによる技術者の流出・デジタルネイチャー世代がぶつかったことが原因だと考えられます。
発展の過程
フィンテックの発展の過程(p.79)
フィンテック 2.0 破壊者たちの台頭
:金融機能をアンバンドリング(分解)し提供
フィンテック 3.0 APIによる相互補完
フィンテック 4.0 金融サービスの再統合
*APIとは
APIとは、あるソフトウェアから別のソフトウェアへアクセスし、その機能を利用するシステムのことを指します。
金融ベンチャーは従来の複雑な金融機関の業務を分解することで単純化し、新しい特化型のサービスを生み出していきました。フィンテック3.0ではそれらのサービスを互いにアクセスできるようにすることで補完しあっています。
「イノベーションのジレンマ」に陥る金融機関
金融機関の機能(p.119)
②資金のプール化および投資の小口化
③資源の時間・場所を超えた移転
④リスクコントロール
⑤市場と市場での価格を通じた情報提供
⑥情報の非対称性に伴うインセンティブ問題
→これからの機能が新規プレイヤーによって代替されてきている。
既存の金融機関は「イノベーションのジレンマ」に陥っています。
「イノベーションのジレンマ」とは、既存の企業が「共食い」によるディスインセンティブゆえに技術革新の競争に敗れる様を表しています。
「イノベーションのジレンマ」について詳しくは下の記事をどうぞ
既存の金融機関がフィンテックの時代を生き抜いていくためには保守化に陥らず、常に会社を更新し続ける必要があります。
また日本国内に関しては、フィンテックに対する法整備が求められています。
感想
この本の最後の章ではフィンテックに関する最新技術や、金融のこれからについて語られています。
AIによるデータ分析、ブラックチェーンによる安全性の向上、IoTによるライフログの蓄積。これらの技術によって金融は今までにない速度で拡張していくことが予想されます。
この本を読む中で確実に世の中のシステムが変わることを実感しました。これからの世の中の変化が 楽しみである反面、まだまだ勉強しなくてはいけないことがたくさん残っていると焦りも感じさせられました。