何年か前よりブラックバイトという言葉を聞くようになった。
ブラックバイトとはサービス残業やパワハラなど違法性のあるアルバイトをブラックバイトに倣って揶揄した言葉で、中京大学の教授によって提唱された。
2014年にはブラックバイトユニオンという学生らによる労働組合も誕生し、その知名度が高まると同時に隠れていた問題が露呈してきている。
なぜそんなバイトが存在しえるのだろうか。
現在有効求人倍率は1.6倍を超え、長期にわたって高い水準を維持している。
売り手市場において、選ぶ権利を保持するのは労働者である。労働者が自分の条件に合う仕事を探し、自由に選ぶことができる。
企業は自分の会社で働いてもらうために労働者に対して媚を売るため労働条件を改善し、人が集まるよう譲歩していかなくてはならない。
確かに業種によって求人倍率にばらつきがあり、企業側が選ぶということもあるだろう。
しかしよほど特殊なケースを除き労働者は業種も選ぶことができるわけで、劣悪な業界は業界そのものが淘汰されていくはずである。
ところが実際はそうはなっていない。
ブラックバイトは依然存在し、労働者に対する搾取は絶えず続いている。
失せぬブラックバイト
なぜブラックバイトは存続できるのだろうか。
産業として強固だからか?利回りが良いからか?
そうではない。
ただ単に、ブラック環境で働こうとする人間がいるからである。
ブラックバイトにも2種類が存在する。
一つはバイトがその異常性・違法性を把握し、その状況に耐えながら働いている場合。そしてもう一つが違法性に気づいていないあるいは許容しているときである。
正直違法性に気づいていない、またはそれを許容しているならばとやかく言う必要はない。
たとえ残業が多く時給に換算した際賃金が著しく低かったとしても、その仕事にやりがいや楽しみを感じ、給料以外の恩恵を受けているならば問題はない。
むしろこういった企業をやり玉にあげて騒ぎ立てることは不満なく働いている労働者の働く権利の侵害にほかならず、はた迷惑になるだけである。
例えどんなに辛く劣悪な環境であっても、本人がそれを是とするならばそれは幸福な職場なのだ。
問題は異常性・違法性に気づきなぜか耐えながら働き続けている場合である。
辛い辛いと言いながら、辞めたい辞めたいと言いながら心と身体をすり減らして働いている人がいる。
そんなものやめてしまえ!
これだけ労働者に有利な就職市場において、劣悪な職場にとどまる理由はどこにあるのだろうか。やりがいや経験を勘定に入れても補完できないのであれば、すぐさまやめた方がいい。
ブラックバイトで働いている人は自分がバイトに生かされているのではなく、ブラックバイトに養分を与え生かしてしまっているということをよく理解しなくてはならない。
あなたがブラックバイトに栄養を与え続ける限りブラックバイトも成長していく。
大きくなったブラックバイトは国難にこそなれど、国益にはならない。
そのムーブメントを止めるためには、栄養の方を断ってしまうに限る。
上の記事でも言及している通り、どうしてもそこのバイトをし続けなくてはならない場合などあるだろうか。
割に合う仕事か考える
働き続けるかどうかは、割に合っているか考えることで決めることが出来る。
普通バイトの際は時給が高い低いが話題になる。
バイトを決めるときには時給が労働を上回っていれば割に合うということになるから、
これを式にすると
時給 = 賃金 / 時間 ≧ 労働 となる。
しかしこれでは重要な要素が抜け落ちている。
バイトにおける最大の負担は労働ではなく、使用者との関係や扱いなど精神面の負担にある。ブラックバイトもサービス残業といった労働に対する不満もあるが、それ以上にそのことを口に出せないストレスの方にブラックたりうるポイントがある。
すなわち、割に合うかどうか見極める式は上記の式にストレス(労働以外の不快な面すべて)を加えた以下の式で考えることが出来る。
賃金 ≧ 労働量 + ストレス
またその仕事によって自分がどれだけ得したか(どれだけハッピーになったか)を示す効用は右辺を移項して
効用 = 賃金 - (労働量 + ストレス)
と考えることが出来る。
この中で賃金と労働量は大きく増やしたり減らしたりすることが難しい。
とすると、効用を最大化していくうえで重要なポイントはストレスを以下に減らすことが出来るか、ということにある。
ブラックバイトではこのストレスが異常に大きい。
理想としてはなるべく大勢がストレスが限りなく小さい環境で働くことで社会全体の効用が大きくなる。
ブラックバイトを辞める
社会全体の幸福度を上げるためにも、ストレスをつくり出す代表例であるブラックバイトは滅ぼしていかなくてはならない。
ブラックバイトをのさばらしている根源は労働者にあり、労働者がブラックバイトに養分を供給し続ける限りブラックバイトはなくならない。
中にはブラックバイトが向いているというとんでもない体質の人間もいる。搾取されることに快感を覚え、自ら進んで労働力をささげていく。
これは先に挙げたブラックであることに気づいていない、または許容しているとは性質の異なるものである。ストレスを感じているにもかかわらずそれを快感として受け取り、搾取され続ける。経済学では認められないタイプの人間である。
この手の人間は自分では自分の利益にかなうように行動しているが、結果として社会全体の効用を下げてしまう。
社会のため、巡り巡って自分のためにもブラックバイトはやめていかなくてはならないのだ。文明国として社会全体のモラルを上昇させ行く必要がある。
大変じゃない仕事は存在しないかもしれないが、ストレスが限りなく小さいバイトは存在する。そういったバイトは金銭だけでなく心も豊かにしてくれる。
健全でストレスフリーのバイトを労働者が積極的に求めていくことが、よりよい社会づくりには欠かせないのではないだろうか。