本と絵画とリベラルアーツ

本と絵画の解説

美術館を早足で逆走している人がいたら私です。

美術館の途中に設置されている椅子に座って他の来館者の様子を見ていると、同じ絵の前や空間でも人によって行動が様々で見ていてなかなか面白いです。

うんちくを語りながらゆっくり歩く老夫婦や、寝付いたばかりの赤子を起こさぬように静かにベビーカーを押す母親など、それぞれが思い思いに鑑賞を楽しんでいるのが分かります。あらためて美術というのが万人に解放されたものであるということを感じます。

 

このように美術館のまわり方は三者三様であり、正しいまわり方というのはあるわけではありません。最低限のマナーさえ守れば、あとは自分の自由に行動することができます

 しかし、正しいまわり方は無くとも、美術館をまわる上で失敗というのはあります。それは楽しみにしていた作品を十分に楽しめなかったり、後で思い返したときに特に印象に残っているものがなかったりという場合です。せっかく美術館まで出かけて、何も残らないようではもったいなすぎますよね。

 

この様な失敗の最大の原因はペース配分にあります。

美術館は普通、一度入場してしまえば自分のタイミングで退場するまでは無理に追い出されるといったことはありませんので、時間的な制約は少ないように思えます。しかし実際は集中力や体力の限界からいつまでも鑑賞していられるわけでもありません。私の経験上、美術館で集中力を保ったまま鑑賞できるのは90分くらいが限度だと思っています。これを超え、120分近くなってくると絵を見ても感想がどんどん薄くなっていくように感じます。

一般的な美術展では100点前後の作品が展示されていることが多いです。これを前から順番に見ていこうとすればとても90分では収まりきりません。無理に90分で全部の作品を見ようものなら、一つあたりの鑑賞時間は1分以下になり、後で思い返したときに何も残っていない可能性が高いです。

 

では、最後まで集中力を切らさず、好きな絵をじっくりと鑑賞するためにはどんなまわり方をするのがベストでしょうか。

私のオススメは、先に最後まで早足で作品を眺めて気になった作品は作品一覧かなにかに印をつけておき、あとから戻って好みの作品を鑑賞するという方法です。展示によっては最後まで行くと時間がかかりすぎる場合もあるので、その場合はテーマごとに目当ての作品を見つけておくというのがいいと思います。

この方法のいいところは自分が本当に見たい作品の数をある程度把握してしまうことで、時間配分がしやすくなるということです。時間にゆとりをもって鑑賞することで、作品に集中することができ、より良い感想やアイデアが浮かんできやすくなります。また展覧会の全体のテーマを把握しやすくなるというメリットもあります。

この方法で心配されることとして、じっくり鑑賞する作品が減ることによって隠れた名画や作品に気づきにくくなるのではないかという点があります。確かに一枚一枚丁寧に見ていく中で発見される魅力もあるかもしれません。

しかし、本当に自分にとって魅力的な作品というのは向こうから語りかけてきて、一目で引き込まれるものです。多くの場合最初にあまりピンとこない作品というのは、そのあといくら鑑賞したところで印象に残る作品でないことが多いです。名画とは、多くの人々の心をとらえるものですが、それが必ずしもあなたの心にも当てはまるとは限りません。このようなことは往々にしてあるものです。

このまわり方は、あなたにとって印象深い作品を見つけることにも適した方法ではないでしょうか。

 

今回は効率よく、展覧会で素敵な作品に出合う美術館のまわり方を紹介しました。もし今まで展示の最後まで集中力が続かないという方がいらっしゃいましたら、ぜひこの方法を試してみてはいかがでしょうか。