本と絵画とリベラルアーツ

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【月300冊読む読書術】佐藤優『読書の技法』【感想】

オススメ度:★★★★★

「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。」

(p.58)

 

博覧強記で知られる元外交官の佐藤優氏。 月平均300冊、多い月には500冊もの本を読む佐藤氏はどのように本を読み、その内容を血肉に変えているのだろうか。この本では読み方から始まり、基礎知識の習得法や本の選び方までが語られている。

 

熟読・速読・超速読

この本のエッセンスはなんといっても熟読・速読・超速読という筆者独自の読み方であろう。すべての本を同じ読み方で読むのではなく、本の内容・目的に応じて三つの読み方を使い分けていく。ここでの速読とは一般的に言われている「流し読み」などのテクニックによるものではないことを注意しておく。

熟読…読書ノートをつくりながら3周かけてじっくり読む
速読…一冊30分で読み、その後30分かけて読書ノートを作成する
超速読…一冊5分でよむ

筆者はこの三つの方法を使い分けることで月に300冊もの本を読破している。具体的な内訳としては熟読(3, 4冊)、速読(50~60冊)、超速読(240冊~250冊)と圧倒的に超速読で処理している本の割合が多い。

たった5分しかかけない超速読では何も頭に残らないのではないかという心配があるが、実はこの超速読は十分な理解を目的として行うものではない。超速読の一番の目的は、じっくり読むべき本かどうかを見極めるという点にある。超速読で読むべきと判断された本は熟読、速読に回されることになる。

 

佐藤氏がこのような本の読み方をする背景には「時間が有限である」こと、彼が功利主義者であることがある。人が一生のうちに読める本の数は限られている。だからこそ私たちは本当に向かい合うべき本を厳選し、その本を読む効果が十分得られるよう熟読しなければならない。

『Think clearly』の著者であるロルフ・ドベリも同書のなかで生涯の中で熟読する本の数を決め、2,3度繰り返し読むことを推奨している。

 

目的意識をもって読む

この本でもっとも印象に残ったのは冒頭の引用にも紹介した

「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。」(p.58)

 という部分で、これは学術書を読むうえでの目的を端的に示されている。

 

もちろん読書には小説のように娯楽的な要素や勉強を想定しない楽しみ方もあるが(この点についても本書では触れられている。)、私が今目指している読書は知識を積み重ねていくための読書である。もし知識を蓄積するための読書であるならば、その知識を現実世界にいかしていかなくてはただの「物知り」になってしまう。

 

ただの「物知り」に陥らないためには目的意識をもって読書に臨むことが重要になる。本書でも速読する際の極意として目的意識を持つことが挙げられている。また本書では『詳説 政治・経済』を用いた勉強法が紹介されているが、この中でも

ビジネスパーソンの場合、テーマは仕事をする上で、現在もしくは将来必要なる事項がテーマとなる。今日のための外国語や歴史というような、動機があいまいなままだらだら学習することは時間と機会費用の無駄なのでやめた方がいい。(p.171)

目的意識をもって学ぶことの重要性が指摘されている。

ビジネスや勉強している際には目的意識を持つことは普通であるが、これが読書になるとついつい忘れがちになる。特に内容が難解になるについ「難しいことを知っている」という優越感ばかりが先行し、本来の意味を忘れてしまう。

 

 

私なりの読書ルーティン

本書の内容を踏まえて、私なりの読書法を考えてみた。この方法は今まで自分が実践してきた方法に佐藤氏の技法を加えて改良したものになる。完全に自分用につくったので一般性に欠ける部分があるかもしれない。

《私の読書ルーティン》
⓪読みたいテーマを考え、本を選ぶ 
①タイトル・前書き・目次・結論を読む
②その本を読む目的を考える
 →読書メモに書き込む
③目的を踏まえて本文を一読する  
 →気になった箇所・重要な箇所をコメントとともにメモする
  この時自分の意見だけでなく、前に読んだ本についても触れる
④メモした部分を再読する
 →さらにメモ・コメントする
⑤できあがったメモを再編し、ブログにまとめる
(⑥人に内容を話してみる)

 

昔から行われてきた読書という行為ひとつとっても、方法論を意識するかしないかでその効果は大きく変わってくる。もしあなたが今まで漫然と読書をしていたならば、ぜひこの本を読んで技法を学んでみてほしい。これらの技法を習得したあかつきには、今までよりワンランク、ツーランク上の読書体験ができるに違いない。

 

 

 

 

マルクス・ガブリエル/中島隆博『全体主義の克服』【レビュー・概要】

オススメ度:★★★★☆

今日ではデジタル革命が必要です。民主的な方法で「シリコンバレーの魔女たち」を王座から退位させなくてはなりません。(p.43)

 

 「新実在論」にて一躍時の人となったマルクス・ガブリエル。大学ではシェリングを専攻し、まさにドイツ哲学の延長にいると思われた彼だが、実はその背景には中国哲学があった。この本では中国哲学者である中島隆博とともに、ガブリエルのラディカルな議論が展開されている。

 

現代にはびこる全体主義

 現代の社会的な問題を語るうえで真っ先に挙げられるのはポピュリズムの問題であるが、ガブリエルはこの切り口はあまり有効ではないという。

彼は有効でない理由として、「ポピュリズム」自体が指し示すものが曖昧という点を挙げている。

 

ポピュリズムに代わり彼が現代社会を見るのに持ち出すのは、全体主義の問題である。

近代化は私的な領域と公的な領域に境界線を引いてきた。私的所有が規定され、労働と生活も分離された。これに対し、全体主義とは私的領域を壊すものである。日本や中国、ナチスドイツに見られたように、戦前の全体主義は国家主導で私的空間を破壊していった。家族同士であっても密告が行われ、生活から私的空間が奪われた。

 

一方で、現在進行している全体主義の核心はデジタル化である。国家に代わりIT企業が全体主義的な帝国を形成している。普段私たちはSNSに私的領域をさらけ出し、私的領域と公的領域の境界線を自ら喜んで破壊(すなわち私的領域の破壊)している。各国政府はデジタル化によって私的領域が破壊されていくのを食い止めようと躍起になっている。これが現在の大きなトレンドである。

 

またGAFAといった大手IT企業は利用者から剰余価値を搾取している点にも言及している。わたしたちがインターネットを利用すると、情報がGoogleへ蓄積されていく。Googleはこの蓄積されたデータをもとにサービスを展開し、利潤を得ている。つまり、わたしたちは知らず知らずのうちにGoogleの無給の「労働者」になっているのだ。

この現実に対しガブリエルは「デジタル革命」が必要だと主張している。わたしたちは民主的な方法をもって、「シリコンバレーの魔女たち」を王座から引きずり降ろさなくてはならない。

 

意識

多くの哲学者、科学者によって議論されている意識の問題について、ガブリエルはラディカルな主張をしている。

 

意識はニューロンの発火ではない。脳の一部をなす格子状の構造によって、意識は生まれますが、意識は脳の活動とは何の関係もないのです。(中略)意識は脳の活動ではなく、脳の数学的な構造・形式なのです。 (p.136)

 

これは一見すると脳の構造・形式を物質的に実現することで意識を人工的に生み出せるという主張にもつながりそうだが、ガブリエル自身はそうは考えていない。むしろ、その構造の複雑性により完全な再現は不可能というスタンスをとり、脳自体の完全なシミュレーションはできないと主張している。

 

 

【3本の矢とは】伊東光晴『アベノミクス批判』【失敗か成功か】

オススメ度:★★★☆☆

「安倍首相の現状認識は誤っている」

 

アベノミクスが始まってから7年以上が経つ。この間に安倍政権は戦後最長を更新し、日本経済史・政治史を振り返るうえでも欠かせない出来事となった。

この本ではアベノミクスの初めの3年間ほど(3本の矢が盛んに叫ばれていたころ)についての批判がなされている。 

 

アベノミクス:3本の矢とは

3本の矢とは2013年に「日本再興戦略」で全体像が発表されたアベノミクスの政策運営の柱である。アベノミクスという言葉自体は第一次安倍内閣からあり、2012年11月の衆議院解散あたりに朝日新聞が使用したことがきっかけで使われ始めた。

 

3本の矢は①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略の三つからなっている。①大胆な金融政策とは俗にいう「異次元の金融緩和」のことで、インフレを達成するために市中にお金を流し続けることを指す。②機動的な財政政策は、南海トラフ地震に備え大規模な対策(10年間で200兆円)を行う「国土強靭化計画」をはじめとする一連の財政出動を指す。そして三つめの成長戦略は民間の技術革新促進のため規制緩和を行うものである。

 

アベノミクス批判

この本のタイトルからもわかる通り、筆者である伊東教授はアベノミクスについて懐疑的な見方をしている。もう少し正確に言うと元日銀副総裁であった岩田規久男教授への批判が中心となっている。

 

まず一つ目の矢である金融緩和についてみていく。政府はこの金融緩和によって有効需要を増加&物価上昇を期待していた。そして確かに物価上昇は起こった。

しかし筆者はこの物価上昇を「異次元の金融緩和」によるものではないと指摘する。筆者によれば物価上昇は大きな円安によって輸入品価格が上昇(つまり原材料が上昇)したため「コストプッシュ」という形で価格が上昇したのであり、金融緩和の帰結ではないとする。

また日本の株価上昇は、リーマンショック後各国は低金利政策によって株価上昇を遂げた中、残った市場であった日本に外国ファンドが資金を注入したのが原因であり、アベノミクスの成果ではないと話す。実際にデータをみると日銀が「異次元の金融緩和」を発表した時期よりも前から株価の上昇が始まっていたことが分かる。

 

次に2本目の矢である財政出動だが、政府は10年間で200兆円規模の予算を組んで「国土強靭化計画」にあてると話していたが、筆者は実際にはそんな予算は現実的に組みえないと話す。

 

最後に三本目の矢である民間投資の喚起であるが、これは民間で技術革新が起こることを期待した政策であり、技術革新が起こる方法を有しているわけではない。政策そのものに具体性が見られないのだ。あくまで他力本願の政策であり、実現されるかどうかは不透明であると筆者は指摘する。

 

 

感想

この本の中だけでは説明が足りていないと感じている部分(例えば、アベノミクス以前から株価上昇が始まっていたと話すが、アベノミクスが実際にどの程度株価に影響を与えたのかという計量的なデータは示されてない)などはあったが、全体としてケインジアンの立場として適切な批判であったと感じた。

 

ただ終盤は安倍首相の政治的スタンス(筆者はこの部分を第四の矢と表現している)批判が中心となり、経済の話から離れてしまったのが残念であった。伊東教授はこの本から読み取れる中だとやや親中寄りであり、中国大使を務めた丹羽宇一郎氏の名前もたびたび上がっていた。

 

 

 

初心者がPython基礎認定試験に1発合格した勉強法【勉強時間・難易度】

しばしば受けようかどうかと思い立っては放棄してを繰り返してきたPython3 エンジニア基礎認定試験ですが、先日やっと受験して合格することができました。

 

エンジニアでも理系でもない私ですが、とりあえず一回で合格することができました。微力ではありますがこれから受験される方の参考に少しでもなればと、まとめることにいたしました。ほかのサイトではあまり書かれていない勉強時間の内訳など、なるべく具体的に記述するよう努めてあります。

 

というわけで今回の記事は完全初心者向けに書かれています。プロのエンジニアの方や理系で専門に勉強しているという人にはあまり参考にならない内容になっていると思います、その点ご容赦くださいませ。

 

 

 

初心者がPython基礎認定試験に1発合格した勉強法

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Python3エンジニア基礎認定試験とは

Python3 エンジニア基礎認定試験は一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会による民間の資格試験です。Pythonの勉強を始めた人や、将来的にPythonを使って仕事をしたいと考えている人向けの資格となっています。

 

試験内容はPython3の基礎文法を問うものが中心となっています。

コンピューター上に表示されたコードを見てどのような出力結果になるか考える問題や、一部穴抜けになっているコードに指定された出力になるよう穴に当てはまるコードを選ぶ問題などが出題されます。

 

問題は全40問ですべて選択式です。一問25点の1000点満点で700点(7割)が合格ラインになります。合格率は70~80%で基本的には通すための試験だといえそうです。

 

概要

文法基礎を問う試験

受験料金(外税)

1万円 学割5千円

問題数

40問(すべて選択問題)

合格ライン

正答率70%

受験日

通年

受験場所

全国のオデッセイコミュニケーションズCBTテストセンター

 

 公式HPはこちら

www.pythonic-exam.com

 

試験の難易度:易

合格率や合格ラインの低さ、初歩的な内容が中心となっていることから試験の難易度は低いといっていいでしょう。 

 

次の項で必要勉強時間についても触れますが、基本的には働きながら、学校へ通いながら隙間時間勉強するだけで合格できると思います。

 

初心者が合格に必要な勉強時間:およそ30時間

他のサイトで解説されている内容や私自身の体験を踏まえて必要勉強時間は30時間ほどだと考えられます。まったくの初心者の目安時間ですので、経験者や現役でPythonを使っているという人は短い時間で合格できると思います。

 

私が勉強した時間の内訳は以下の通りです。

使った教材

勉強時間

Progate 学習コース PythonⅠ-Ⅴ

300分

Pythonスタートブック[増補改訂版]

450分

Pythonチュートリアル第3版

750分

合計時間

1500分(25時間)

 

 

合格した実際の勉強法

Python基礎認定試験は『Python チュートリアル 第3版』のみが出題範囲として指定されているので、極論この本だけ見ておけば合格できます。ただ私はプログラミング自体の基礎的な知識を全く持ち合わせていなかったので、より初心者向けの教材から段階を追って学習しました。

各教材の説明は次の項で行いますので、ここでは学習全般にかかわることを書きたいと思います。

 

<最初>

まず資格勉強をはじめるにあたり、自分のレベルがどれほどか知るために模擬試験を受けることにしました。模擬試験は以下のサイトで無料で受けることができます。(簡単な登録が必要となります。)

diver.diveintocode.jp

 

この模擬試験は本番と全く同じ形式となっていて、とても使いやすいです。試験を受ける方は必ず登録するようにしましょう

ちなみに私の最初の点数は300/1000点でした。

 

<基本的な勉強法>

プログラミングの基本的な勉強の仕方は写経をすることです。写経とはテキストなどの教材を自分で実際にタイプすることを指します。テキストは見ているだけでは絶対に覚えられません。必ず自分で打って、地道に定着させていきましょう。

私はこの方法で300/1000から875/1000(合格ラインは700)まで上げ、一発合格することができました。

実際に使った教材については次の項をご覧ください。

 

<テスト直前>

テスト直前にはひたすら出題範囲である『Python チュートリアル 第3版』の読み返しと、模擬試験で間違えたところの確認を行っていました。

自分がどこがわかっていて、どこが覚えられていないのか普段から明確にしておくことがテスト前に点を伸ばすコツになります。

 

 

使った教材 

勉強時間の部分で勉強に使った教材のあらましは紹介されていますが、ここではそれぞれのよかったところ、悪かったところを紹介します。

教材のわきに書かれている数字は教材を使う前と使った後の模擬試験の点数の変化です。こちらも一つの指標として参考にしてみてください。

 

1. Progate(300 → 425)

最初に使ったのはProgateというオンラインの教材です。

 

教材はまず簡単なスライドで説明を受けた後、自分で手を動かしてプログラムをしていくという手順になっています。途中で分からなくなったり、間違えてしまっても正解のコードと自分のコードを比べてどこがおかしいか教えてくれるので初心者でも安心して進めることができます。挫折しやすい勉強のしはじめを乗り越えるのにはとてもいい教材です。

よくない点としては自分で環境構築せずに済んでしまうため環境構築のやり方がわからないことです。初心者のうちは環境構築がネックになることも多いので、その点は物足りないなと感じました。

 

月額980円(税別)でPython以外にも多くのコースが使い放題になるので、何か新しい言語を始めようというときにはとっかかりとしてとてもいいと思います。もし本などほかの教材からはじめて挫折したという経験がある人は一度使ってみてください。

prog-8.com

 

 

2. 『Pythonスタートブック〔増補改訂版〕』 (425 → 575)

次に使ったのは『Pythonスタートブック〔増補改訂版〕』という本の教材です。

 

この本は0からPythonの勉強を始める人に向けてPythonの基礎文法について網羅的に書かれています。この本の素晴らしいところはページが見やすいことです。

プログラム言語のテキストというとひたすらコードが書かれていて説明がちょびっとというものも数多くありますが、この本は各章が小さなステップに分かれていて、説明も多いのでつまづくことなく進めることができます

 

私はこの本に書かれているコードはすべて写す形で学習していきました。わからないところがあってもとりあえずは打ち込んで動かしてみて、それから説明とコードを照らし合わせて内容の理解を深めていきました。

多少わからないところがあっても、とりあえずはゴリゴリ進めていくのがいいと思います。最初の悩みなどは案外進めていくと解決することがあります。

 

Pythonの勉強を始めるなら、この本でまず間違いないです。

 

 

3. 『Python チュートリアル 第3版』(575 → 750)

*2021年9月より第4版対応に変わりました

最後に使ったのが出題範囲となっている『Python チュートリアル 第3版』です。

このテキストは直接出題範囲に指定されており、実際このテキストに載っているのとほぼ同じコードが試験で問われます。ぜひとも手元に置いておいた方がいいと思います。

 

この本はまったくの初学者には読むのがつらいです。だれでもわかるように書いたとまえがきにありますが、正直私は最初全然読めませんでした。

この本を使う前にぜひとも上で紹介したような教材を使うことをオススメします。

 

使い方としてはほかの本と同様に写経をしていくことになります。この本自体は有名なので、もしわからないことがあるときにはネットで探してみるのがいいかもしれません。

*2021年9月より第4版対応に変わりました(リンクは第4班になっています)

 

まとめ

どの程度みなさまの役に立てたかわかりませんが、とりあえず初心者の目線からPython基礎認定試験についてできる限りのアドバイスを並べてみました。

プロの方からすると効率が悪かったり、逆に足りないということもあるかもしれませんが、あくまで一つのモデルとして考えていただけるとありがたいです。

 

すこしでもこの記事が勉強の役に立てれば幸いです。

 

 

www.artbook2020.com

 

【NHKで話題】マルクス・ガブリエル『未来への大分岐』【感想・まとめ】

オススメ度:★★★★☆ 

 

目覚ましいスピードで技術革新・経済成長を遂げる世界。この世界はこれからどのような方向へ向かうのでしょうか。資本主義や民主主義はこのままのかたちでこれからも続くのでしょうか。

  

概要

NHK『欲望の資本主義』シリーズで話題の哲学者マルクス・ガブリエルを筆頭に、3人の学者による独自の社会観が語られている。

 

聞き手はカール・マルクスの研究をおこない経済思想を専門とする日本人教授。対談形式ではあるが聞き手に十分な見識があり、中身の詰まった内容となっている。

対談形式によって『時計の針が巻き戻るとき』よりも丁寧に話が進められており、「新実存主義とは何か」をざっくりとつかむのに向いている。 

『未来への大分岐』というタイトルどおり全体的に政治・経済の話が中心となっている。この本をストレスなく読むうえで、政治・経済、時事の最低限の知識はほしいところ。

 

 

相対主義批判

多様性の広がりとともに、相対主義も支持を伸ばしています。相対主義とは普遍的な概念など存在せず、人はそれぞれ異なる考え方を持ち、そのすべてを否定できないという考え方です。平たく言えば、みんな違ってみんな正解ということです。

 

ガブリエルは相対主義者を痛烈に批判しています。

 

 相対主義者は、違う場所の違う文化的条件のもとで生きている人のことを、自分とは全然異なった他者としてみなすようになる。究極的には、他者のことを人間ではない存在として、考えることになるのです。(p.152)

 

倫理的・政治的意味における価値(いわゆる人権)はすべてわたしたちが「人間であること」に基づいています。他者の非人間化は、その価値の否定に帰着します。

人を人として見なくなった人間は、他者を差別・排除・暴力することをいとわなくなってしまいます。すなわち、相対主義は普遍的価値を否定してしまうのです。

 

数学者の藤原正彦も著書のなかで相対主義を否定するような主張をしています。以下は『国家の品格』からの引用です。

 

美的感受性があれば、戦争がすべてを醜悪にしてしまうことを知っていますから、どんな理由があろうともためらいます。故郷を懐かしみ涙を流すようなひとは、他国の人々の同じ想いをもよく理解できますから、戦争を始めることをためらいます。(p.156)

 

相手も自分と同じ人間であることがわかっている、すなわち相手と自分は「同じ」であるという考え方は、相手に対する暴力を思いとどまらせます。これは相対主義とはまったく反対の考え方です。

 

注意したいのは、ガブリエルはすべてが同質であると主張しているわけではないということです。

ガブリエルの相対主義批判というのは、相対主義で考えるとすべての思想を等しく扱わなくてはならなくなる。すべての思想を等しく扱うということは、ヒトラーをも肯定することになる。しかしヒトラーは間違っている。この矛盾より相対主義は成り立たない、というの彼の主張です。

 

まとめると、相対主義は人を人として見なくなる危険性をはらんでいる。他者の非人間化は差別・排除・暴力を生む。これらをなくしていくためには「相手を人間としてみる」ことが重要なのです。

 

 

 

大学生のための成長できる《日本経済新聞》の読み方

大学生や就活生になると「日経新聞を読め」と言われるようになります。

 

まあ読んだ方がいいだろうと、とりあえず読んでみたものの「どこを読めばよいのかわからない」「一応読んではみたけれど内容が頭に残らない」という感想を持つ人がおおいんじゃないでしょうか。

 

実際日経新聞はほかの新聞と比べると骨太で、今まで経済にあまり触れてこなかった学生がいきなり読むにはやや敷居が高いところがあります。

 

では日経新聞を読むために経済を勉強しなおしたり、あるいはもっと他の簡単な新聞から読み始める必要があるかといえば、そんなことは全くありません。

しかし、新聞の特性をしっかり押さえて正しく読めば、事前知識がない学生でも日経新聞を読み理解することができます

 

今回は日経新聞について、学生はどこに注目して読めばいいのか、そして読んだあとどう活かしていけばいいのかについてわかりやすく解説しました。


*今回は日本経済新聞の朝刊について扱います

*情報は2020年2月25日時点のものになります

大学生のための成長できる《日本経済新聞》の読み方

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日経新聞のどこを読めばよいのか

日経新聞はその日によって変わりますがおおよそ30~40の面で構成されています。もしこれを隅々まで読もうとすれば、それだけで半日が終わってしまうでしょう。

当然ながら大学生はこれを全て読む必要はありません。本当に必要なところだけを確実に取り入れていきましょう。

 

大学生が日経新聞を読むうえで見ていく欄は以下の通りです。

①MARKETS
②一面
③きょうのことば
④全見出し
⑤二・三面(総合面)

 

これらは大学生ならすべて読まなくてはならないというわけではなく、そのとき取れる時間に応じて数字の若い方から目を通していくとよいという意味合いで並べてあります。

これらに加えて好きな記事をいくつか読んでいくと平均的な読書スピードの人で1時間ほどで収まるようにつくってあります。

 

それでは次の項から一つ一つ解説していきます。

 

MARKETS

まず必ず毎日目を通すべきなのがMARKETSです。

MARKETSは一面の左下あたりに位置し、日経平均株価、日経アジア300、円・ドルの三つの指数が載っています(日曜・月曜は休み)。

 

日経平均株価には日本の経済状況がリアルタイムで現れます

悪いニュースがあれば下落しますし、逆に期待的な情報が流れたときには上昇します。

つまり、この欄は日本経済をもっとも端的に表しているのです。

 

しかし、いきなり日経平均株価を見たところで結局その数字がいいのか悪いのか、変動幅が大きいのか小さいのか判断できませんよね。

 

だからこそ、MARKETSは毎日目を通さなくてはならないのです。

 

毎日見ていると数字の動きがなんとなくわかってきます

「今日は動きが小さいな」「昨日は悪いニュースがあったから明日は大きく下がりそうだな」といった感覚が毎日見ているだけで自然と身についてきます。

 

もちろんその数字の本当の意味は経済学を学ばなくては正確にはとらえることはできません。

それでも平均株価を把握しておくことは、経済を肌で感じられるようになるための一歩になるはずです。

 

その日の記事を読んで、次の日の株価の上がり下がりを予想するのも経済感覚をとらえるいい練習になるでしょう。

 

一面

読まない人はいないと思いますが、興味のいかんに関係なく読むようにしましょう。

 

一面トップはその日のなかでプロが最も重要だと選んだ記事が載っています。日経新聞において重要かどうかの指針は、どれだけ経済に影響を与えるかということです。食事でいえばメインにあたりますので、これを取りこぼすわけにはいきません。必ず読みましょう。

 

日経新聞は基本的にその日から読み始めた人でも理解できるように書かれているので全く知らないという言葉は少ないと思いますが、中には聞いたことがない金融用語や海外の政策が出てくるかもしれません。

そういった新たなワードに出会ったときには是非自分で調べてみてください

 

一面に出てくるレベルの出来事というのは経済に大きな影響を及ぼす大きな出来事ですから、今後も繰り返し出てくることが多いです。場合によってはその日の別の記事の中で詳しく解説されていることもあります。

経済のトレンドを確実に追っていくためにも、わからない言葉や制度は積極的に調べていくようにしていきましょう。もし興味をもったときにはそれに関連する新書なんかにあたってみるのもオススメします。

 

 

きょうのことば

個人的にぜひおすすめしたいのが三面に掲載されている「きょうのことば」です。

 

「きょうのことば」ではその日のニュースから分かりにくい用語や新たなことばを簡潔説明してくれています。一面で出てきた用語が解説されていることが多く、特に新聞を読みはじめたばかりの人は読むことをおススメします。

 

 

全見出し

全ての記事に目を通すのは難しいですが、できれば見出しだけには目を通しておきましょう

新聞の見出しはよくできており、見出しを読むだけでも記事の中身をつかむことができます。

 

見出しを毎日見るメリットとして、重要なニュースを興味をもって発見することができるということがあります。

 

毎日新聞の見出しをチェックしていると、大きくは報道されていないけれど、繰り返し掲載されているニュースに出会うことがあります。もし関心がなかったニュースだったとしても、繰り返し掲載されていることに気付いた時点では少し興味を引き付けられているといえます。

このような発見は非常に幸運です。今まで興味がなかったことがらに興味を持て、かつそのニュースは重要であるわけです。

 

見出しを毎日眺めることで自分の興味の領域を広げ、かつ重要なニュースを見つけることができるのです。

 

 

二・三面(総合面)

 今まで紹介した読むべき箇所からは少し重要度が下がりますが、二・三面も重要な要素がたくさん詰まっています。社説もこの面に載っています。

 

二・三面は総合面です。日経新聞の総合面は経済・政治のなかから大切なものをピックアップして解説してあります。一面の記事の詳細が解説されていることもあります。

 

もし時間が許すならば二・三面も一通り読んでおくと社会トレンドに強くなるでしょう。

 

 

おわりに

以上日本経済新聞を読むうえで留意すべきポイントを解説しました。

 

オンラインメディアが台頭してしばらくが経ちました。

オンラインメディアは情報のスピードや量、ニッチな分野の充実で紙媒体を凌駕しています。

 

一方で情報の選択が読者に大きく委ねられているオンラインメディアは情報バイアスを生み出してしまう危険性もはらんでいます。

質の高い情報を満遍なくひろっていくためにも、新聞を読む価値はまだまだ残っているのではないでしょうか。

 

日経新聞読むべき記事

①MARKETS
②一面
③きょうのことば
④全見出し
⑤二・三面(総合面)

 

 

ディズニーの「美女と野獣」はサイコパスだらけ!?

「美女と野獣」といえばディズニーを代表する名作の一つです。

1991年制作でありながらいまだに根強い人気を誇っています。2017年には実写化もなされ、こちらも大ヒットしました。

 

そんな「美女と野獣」ですが、ストーリーを冷静に見ていくと主要登場キャラクターがどれもサイコパスじみていることに気が付きます。

 

一体このおとぎ話のどこにそのような狂気的な要素があるのか解説していきたいとおもいます。

 

 

ディズニーの「美女と野獣」はサイコパスだらけ!?

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ベル

物語の主人公でディズニープリンセスのひとり。

天然で心優しい性格として描かれているが、ときにその天然さが度を越している。

恐怖におびえていたはずの野獣に歯向かってみたり、野獣に「絶対に入るな」と言われていた部屋に何度留められても好奇心から入っていってしまう。好奇心が強すぎて他の感情がバグっている。

 

オープニングテーマの「朝の風景」では町の人に"少し風変り"と紹介されているが、実際には単なる町のやばいやつのひとりなんじゃないだろうか。

 

 

野獣

この作品のプリンス。人を見かけで判断し、内面を見ようとしない傲慢な性格から魔女に野獣の姿に変えられてしまった。

 

野獣として長い時間を過ごしたためか看過できないレベルまでこじらせてしまっている。ベルを初めて晩餐に誘う際には「来たくれば来ればよい、まあ来なくてもいいけどな」と思春期の中学生のようなセリフを吐いた。(しかし来ないと怒る。)

後半はだいぶ人間らしくなったが、序盤のコミュ障っぷりは見ていて辛かった。

 

 

ガストン

町一番の美女であるベルとの婚約をもくろむ色男。

 

自信過剰でなんでも自分が思うようにならないと気が済まないという傲慢な性格をしている。人の家に勝手に上がり込み本の上に汚れた靴を乗せるなど横暴がとどまることを知らない。

 

男らしさを売りにしているくせに命乞いをしたあと隙を見て反撃するなど姑息な一面を持つ。男らしさ一貫性があればもう少しいい男だったのだけどもね。

 

 

モーリス(ベルの父親)

ベルの父親で、奇天烈な発明家。町の人からも変な人という評価を受けている。

 

娘を思う気持ちはとても伝わってくるが、それを実行するにはポンコツすぎる。作中何一つ役に立っていない。

ベルの天然は父親譲りの模様。

 

*****

 

 物語で細かい部分を気にしたらきりがありませんが、たまに少し自分が物語の一住人だと考えてキャラクターたちを見ると意外な発見をすることがあります。

 

もし「美女と野獣」を見る機会があった際にはこのような点にも注目してみると面白いかもしれませんね。