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【絵画の解説】フェルメール「ヴァージナルの前に座る女」【ヴァージナルとは?】

ヴァージナルの前の女性が何かに気付いたようかのようにこちらを振り返って見ている。

壁にかかっている絵や身なりを見ると高貴な女性のようです。

 

この作品はフェルメールの画家人生の終盤に描かれたもので、初期のすっきりとした構図に対して晩年特有のごちゃごちゃとした構図をしています。

 

今回はこの「ヴァージナルの前に座る女」について解説していきます!

 

この絵画を見るポイント

・美しいフェルメールブルー
・壁にかけられている絵
・対になる作品

 

「ヴァージナルの前に座る女」の解説

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「ヴァージナルの前に座る女」 1670〜62年頃 ロンドン・ナショナル・ギャラリー

フェルメール作品ではしばしばこの部屋が登場しています。

この部屋は裕福であったお義母さんの家の2階だと言われています。

 

以下ではフェルメールの代名詞でもあるブルーやこの部屋に飾られている絵、対になっている作品について解説していきます。

 

*ヴァージナルとその歴史
ヴァージナルとはグランド・ピアノのような鍵盤楽器のひとつで、多くの場合チェンバロとあまり区別されずに使われています。
フランドル地方では17世紀後半にルッカース一族によって響きが長続きするよう改良され、後のチェンバロに影響を与えました。
長い間活躍したチェンバロでしたが、18世紀に音の強弱表現に長けたピアノが登場すると次第姿を消していきました。

 

フェルメール・ブルー

この絵画の色彩面で特に目を引くのが、女性が召している服やカーテンに使われているブルーです。

 

このブルーはウルトラマリンブルーという色で、ラピスラズリという鉱石を原料とする顔料が使われています。

ラピスラズリは遠く離れたアフガニスタンでしか取れず、当時は金と等価で取引されるほどの高価なものでした。

 

裕福であったフェルメールはこの色をよく使っていたため、このブルーは「フェルメール・ブルー」と呼ばれるようになりました

 

 

壁にかけられている絵

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「取り持ち女」 1622年頃 ディルク・ファン・バビューレン ボストン美術館

絵の右上に目をやると、大きな一枚の絵が飾られています。

この絵はディルク・ファン・バビューレンの「取り持ちの女」という作品で、左から売春婦の女性、リュートを持った売春婦を買う男、その仲介の女(取り持ちの女)が描かれています。

 

バビューレンはフェルメールと同じオランダの画家で、バロック美術の巨匠であるカラヴァッジョの影響を強く受けました。

 

この絵は資産家であったフェルメールの義母が実際に所有していた絵画で、フェルメールの作品に2回ほど登場しています(「ヴァージナルの前に座る女」と「合奏」)。

 

*****

 

2つの絵をよく見ていくと、「取り持ちの女」では、音楽と音楽の持つ軟派でみだらな側面が表現されています。

売春婦の金額を示す取り持ちの女の横で、男が硬貨を見せていることで一層いやらしさが強調されています。

 

対して「ヴァージナルの前に座る女」からは上品な感じがします。

美しく彩色されたヴァージナルの前で、きれいな召し物を着た女性が静かにこちらを眺めている様子は、上品さと高貴さを感じさせます。

 

フェルメールはこのように上品さと下劣さを対比させることによって音楽のもつ二面性や多義性を表現しました。

 

 

対になる作品:「ヴァージナルの前に立つ女」

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左:「ヴァージナルの前に立つ女」 1670~72年頃 ロンドン・ナショナル・ギャラリー
右:「ヴァージナルの前に座る女」 1670~72年頃 ロンドン・ナショナル・ギャラリー

 実は「ヴァージナルの前に座る女」には同時期に描かれた対になっていると考えられている作品があります。

 

それがこの左側の作品である「ヴァージナルの前に立つ女」です。

こちらの絵ではイスをヴァージナルの傍らに置き、「ヴァージナルの前に座る女」よりも年上と思われる女性がこちらを向いて見ています。

 

この2つの作品の最大の違いは、「光」にあります。

 

*****

 

太陽の光を愛するオランダ人には、光の細微な違いが分かると言われています。

とりわけフェルメールは「光の魔術師」と呼ばれるほど光を研究し、光を巧みに扱った画家でした。

 

「ヴァージナルの前に立つ女」(左)を見ると、部屋の角に人物が配置され左端の大きな窓からは自然の光が差し込んいでいます。

これはフェルメールが好んで使った構図で、多くの作品で見ることが出来ます。

 

一方で「ヴァージナルの前に座る女」(右)では同じ部屋の角ですが窓は閉ざされ、フェルメール作品では珍しく人工灯による光で部屋が照らされています。 

 

*****

 

また2人の女性の光の当たり方にも違いがあります。

 

「立つ女」(左)では女性が窓に背を向けていて、女性の顔にはあまり光が当たっていません。

夕方なのか画面も全体的に薄暗く、静かに何かが終わり夜になってしまうような、さびしい雰囲気があります。

構図も複雑で見ていると不安な気持ちになってきます。

 

対して「座る女」の方は人工灯ではありますが、人物を中心に光が当たり屋内独特の落ち着いてリラックスできるような印象を受けます。

構図はややうるさいですが、フェルメールが得意とした青と黄色のコントラストによって全体的な統一感が保たれています。

 

このように「光」を軸として2つの作品には違いを見ることができます。

 

 

まとめ

以上 「ヴァージナルの前に座る女」を鑑賞する上でのポイントをまとめると

①ふんだんに使用された「フェルメール・ブルー」
②一つの絵で音楽の二面性を表現
③「光」を軸に対になっている絵

になります。

 

 一見静かに見える絵ですが、調べていくとたくさんの秘密が隠されていることが分かります。

フェルメールの作品は「光」に注目することで何かが見えてくるかもしれません。

 

 

フェルメールや、フェルメールの作品についてはこちらの記事もどうぞ

www.artbook2020.com

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【絵画の解説】フェルメール「真珠の耳飾りの少女」【モデルの正体とは?】

真っ暗な背景の中で、大きな真珠の耳飾りをした少女が意味ありげに振り返っている。

 

今回紹介するのはフェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」です。

この絵画はその印象的な綺麗な青いターバンより別名「青いターバンの少女」とも呼ばれています。

 

今回はこの「真珠の耳飾りの少女」の魅力について解説していきます!

 

この絵画を見る3つのポイント

・表情が変わっていく秘密
・美しいターバンのブルー
・モデルの正体

 

「真珠の耳飾りの少女」の解説

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「真珠の耳飾りの少女」 1655〜66年頃 マウリッツハイス美術館

絵画の中の少女を眺めていると、止まっているはずなのに表情が移り変わっていくような不思議な印象を受けます。

何気ない日常の一コマに見えたと思えば、次の瞬間には深刻な一言を言い出しそうにも見える捉えるのが難しい絵画でもあります。

 

それではこの表情が変わっていく秘密や、少女のモデルなどについて迫っていきましょう。

 

 

表情が変わっていく秘密

光の当たり方や見る方向によって同じ絵画でも見え方が変わることはしばしばありますが、「真珠の耳飾りの少女」が他と違っているのは同じところから見ていても表情が変わっていくという点です。

 

パッと見た瞬間は普通の少女が日常の中でふと振り返っているだけですが、次の瞬間には別れを切り出す直前に見え、しかし口元に目をやると微笑んでいるように見えなくもないのです。

 

変わり続ける表情を捉えきれずに疲れ、視点を顔から逃してやると大きな真珠が変わることのない光を反射し続けています。

*****

 

この少女の表情が変わり続けて見えるのには、2つ理由があると思います。それは、

①眉がないこと。

②目の光が不自然に入れらていること。

という2点です。

 

そして表情が変化する上で特に重要な点は、②の目に入れられた不自然なハイライトにあります。

 

*****

 

フェルメールは「光の魔術師」と呼ばれるほど光を研究し、その扱いに長けた画家でした。

 

フェルメールは光を扱う上で、光が「写実的であるか」よりも、「見る側に与える印象」を重視 しています。

 

例えばこの絵画の真珠の周りをよく見てみると、本来真珠は影になってしまう場所にあり、光が反射するのは不自然だと分かると思います。

 

あえて真珠にハイライトを入れることで、この絵画に面白みを足しています。

 

同様に、目にも不自然な光の粒が描かれています。 本来反射すべきところからズレたところにハイライトを入れることでフェルメールは少女の表情に揺らぎを演出したのです。

 

 

美しいターバンのブルー

フェルメールの絵画を見ていくと、よく美しい青と黄色がセットで使われていることに気がつきます。

 

「真珠の耳飾りの少女」でも、美しい青がターバンに使われていますね。

個人的にはしばしば使われている赤が好きなのですが、特に面白い話もないのでここでは置いておきます笑。

 

 

このブルーはウルトラマリンブルーといい、日本語でいうところの群青色にあたる鮮やかで美しい青をさします。

 

ウルトラマリンブルーは「海を越えてきた青」を由来としています。

この顔料は欧州から遠く離れたアフガニスタンでしか取れないラピスラズリという鉱石を原料として作られていました。

当時は金と等価で取引されるほどの高級画材で、裕福であったフェルメールがよく好んで使っため「フェルメール・ブルー」とも呼ばれています。

 

 

モデルの正体

最後にこの少女のモデルについて考えていきます。

 

一説にはフェルメールの娘のうちの一人とも言われていますが(フェルメールには11人もの子供がいた)、トローニーだというのがより一般的な説です。

 

トローニーとは、特定の人物をモデルとするのではなく、想像で人物を描いた作品のことです。

 

実際の人物を描く際には、その人の名誉や尊厳を守ったりと画家に一種の制約が課されます。

描かれる方もせっかく描くならちゃんと描いて欲しいと思うものです。王族や貴族ならなおさら制約が厳しくなりますね。

 

一方トローニーであれば画家がある程自由に人物を描くことができます。

この絵の少女が正面を向いていないのも、少女がトローニーであると考えられる理由の一つです。

 

 

まとめ

「真珠の耳飾りの少女」を鑑賞する上でのポイントをまとめると

①「光の魔術師」だからこそ出来た、目に不自然なハイライトを入れることで表情が変わって見える仕組み。
②ターバンの青は貴重な「フェルメール・ブルー」
③少女の正体はトローニー

になります。

 

このように絵画の秘密を知ることでより鑑賞が楽しくなってきます。

もし「真珠の耳飾りの少女」を見る機会がありましたら、参考にしてみてください!



作者であるフェルメールについてはこちらで詳しく解説していますので、合わせてどうぞ。
www.artbook2020.com

 

 

 

【名画】2020年オススメの展覧会5選【西洋絵画】

2019年はミュシャ展やゴッホ展など西洋絵画系の特別展がとても豊作の年でした。

私も大好きな西洋絵画をたくさん見ることができて大満足の一年でした...!

 

2019年も終わり、

1月は展覧会がひと段落してしまう季節で寂しいばかりです。

 

さて去年とはうってかわって今年は日本をテーマにした特別展が多く開かれます。

2020年はオリンピックイヤーなので外国人観光客を意識しているのかもしれません。

 

そんな2020年ですが、西洋絵画でも是非とも見ておきたい特別展・展覧会があるので私がオススメしたいものを5つほど紹介したいと思います!

*2020年1月で終了してしまうものは除きました

 

 

2020年オススメの特別展・展覧会

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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

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会場:国立西洋美術館(東京都)

開催期間: 2020/03/03(火) 〜 2020/06/14(日)

開館時間:9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)

休館日:月曜日(但し3/30、5/4は開館)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展|国立西洋美術館

 

まずオススメしたいのが今年の一番の目玉ともいえるこの「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」です。

幅広いコレクションで知られるロンドン・ナショナル・ギャラリーから61点が初来日します。

 

この特別展のオススメしたいポイントは、フェルメールやゴッホなど、誰もが知っている画家の作品が見られるということです。

作品もルネサンス期から印象派までが年代順に配置されており、西洋絵画の歴史をたどっていくことができます。

 

普段美術館にあまり行かない人でも、きっと楽しめると思います!

 

 

見えてくる光景 コレクションの現在地

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会場:アーティゾン美術館(東京都)

開催期間: 2020/01/18(土) 〜 2020/03/31(火)

開館時間:10:00〜18:00(祝日を除く金曜日は20:00まで)

休館日:月曜日

(詳しくは公式HPをご覧ください)

開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」 | アーティゾン美術館

 

みなさんはアーティゾン美術館という名前を聞いたことがありますか??

もしこの名前を聞いたことがなくても、ブリヂストン美術館なら聞いたことがあるかもしれません。

 

実はこのアーティゾン美術館はもともとブリヂストン美術館だったのがリニューアルオープンしたものなんです!

しかもオープンが20年の1月18日と、今ホットな美術館になっています。

 

このアーティゾン美術館が開館を記念して開催するのがこの「見えてくる光景展」です。

 

この展覧会ではマネやルノワールなどの印象派を中心とした数々の作品を見ることができます。

 

 

クロード・モネ—風景への問いかけ 

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会場:アーティゾン美術館(東京都)

開催期間: 2020/07/11(土) 〜 2020/10/25(日)

開館時間:10:00〜18:00(祝日を除く金曜日は20:00まで)

休館日:月曜日

(詳しくは公式HPをご覧ください)

アーティゾン美術館

 

こちらも同じくアーティゾン美術館による展覧会です。

 

モネの作品を多く所有するパリのオルセー・オランジュリー美術館協働のもと、国内外から集まった約140展もの作品を見ることができる大展覧会となっております。

 

この展覧会ではモネの代表作「睡蓮」に因んだ映像作品も公開されるそうです。

 

モネが盛り沢山の絵画展になっているので、印象派に興味がある方は要チェックです!

 

 

画家が見た子供展

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会場:三菱一号館美術館(東京都)

開催期間: 2020/02/15(土) ~ 2020/06/07(日)

開館時間:10:00 ~ 18:00

(祝日を除く金曜、第2水曜、4/6と最終週平日は21時まで)

休館日:月曜休館
(但し、祝日・振替休日の場合、開館記念日4/6、会期最終週6/1と、トークフリーデーの3/30、4/27、5/25は開館)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

 

 

ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年

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会場:国立新美術館(東京都)

開催期間: 2019/12/04(水) ~ 2020/03/16(月)

開館時間:10:00 ~ 18:00(金・土曜日は20:00まで)

休館日:火曜日(ただし、2月11日(火・祝)は開館、2月12日(水)は休館)

(詳しくは公式HPをご覧ください)

展覧会公式ホームページ|ブダペスト国立西洋美術館&ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト ― ヨーロッパとハンガリーの美術400年[日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念]

 

 

カラヴァッジョ展

会場:国立新美術館(東京都)

開催期間: 2020/10/21(水)~ 2020/11/30(月)

開館時間:10:00 ~ 18:00(金・土曜日は20:00まで)

休館日:火曜日

(詳しくは公式HPをご覧ください)

www.nact.jp

 

 

 

 

 

【宅浪の思い出3】宅浪とつらさ・寂しさ【体験談】

私は2年間浪人のうち1年間を自習室で、もうもう1年を自宅で過ごしました。

その時に感じたつらさや寂しさについて話したいと思います。

 

宅浪のつらさ・寂しさ

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社会からの断絶

宅浪で一番つらいのは社会との関係が断たれることだとじゃないでしょうか。

 

私は基本的に一人でも全然大丈夫なタイプなのですが、さすがに1年間部屋から出ないような生活ななると人も恋しくなってきます。 

 

予備校に通っていれば塾の友達や講師との交流があるかもしれませんが、宅浪だとほんとに話すのが親くらいになります。

 

親と話すと言っても、毎日同じ繰り返しの浪人生、話す内容はこれといってありません。楽しみといえば日替わりの夕食くらいです。

髪を切りに行くと行くたびに「ひさびさに人とちゃんと話したなあ」と思っていました。

 

たまにはネットの人と話したりもしましたが、これも人と話しているのかスマホと話しているのか分からなくなってきます。相手がロボットでも気付かなかったんじゃないでしょうか。

やはり直接会うのと何かを介して話すのではどこか違いがありますね。

 

 

テレビや新聞もほとんど見ないと、世の中にも疎くなっていきます。

おかげでこの期間の流行の曲なんかはすっかり抜け落ちているので、大学に入ってからカラオケにいって浦島太郎のような気分になりました。

 

カラオケといえば2浪しただけで同級生とジェネレーションギャップを感じてしまい少々寂しい気持ちになりました。

みんな歌おう尾崎紀世彦。

 

 

宅浪と友人

この断絶を救ってくれるのは旧友しかありません。

 

特に一緒に宅浪している仲間は強い味方です。

一緒に社会から断然されてくれます。

 

サラリーマンが汗水たらし、小学生がリコーダーを吹いている時間によく友人と川沿いをひたすら散歩しました。

おそらく人生で2度と通らない道ばかりです。

何キロも歩いて、帰りは電車で帰りました。

 

浪人中の散歩は人生で他に味わうことのできない不思議な感じがします。

日本の中にいるはずなのに、社会の一員でなくて、自分がいるのかいないのか分からなくなってきます。

それでいて同じ浪人の友人と歩いていると孤独感を感じないのでどこか知らない世界を歩いている気がしてくるのです。

 

友人と会う効果は他にもあります。

浪人している仲間と話していると、強烈なモチベーションは与えられなくとも、お互いに落ちるところまで落ちないように監視し合うようになります。

 

私がセンター後にポケモンにどハマりした際は咎めながらも一緒に中古ゲーム屋を回ってくれました。

 

「ダメじゃん」と思うかもしれませんが、もし友人がいなければネットオークションで無限に買い続けていたと思うとありがたい限りです。

 

 

友人と会うことで孤独感が和らげられ、ドロップアウトすることなく踏みとどまることができました。

 

人間一人だと何しでかすか分からないので、宅浪中も最低限の(よく選んだ上で)人間関係を維持しておくことをオススメします。

 

 

 他の浪人時代のはなしはこちら

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【宅浪の思い出2】宅浪時代のバイト

私は2年間宅浪していて、はじめの1年を自習室、2年目を自宅に篭っていました。

 

宅浪時代の話はこちらでつらつらと書いているのでよかったらどうぞ。

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宅浪時代のバイトの話

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バイトをはじめよう

予備校に通っていなかったとはいえ、2年間浪人させてもらって1年目には月に1万円かかる自習室まで契約してもらった親には申し訳ない気持ちがあります。

 

そこで、2浪目が決まってまもなかった4月上旬あたりからバイトを始めることにしました。

 

フルタイムで働くほどの気力はなかったので、生活リズムをつくるという意味合いも兼ねて朝の時間帯だけ入れるところを探しました。

 

近くを探したところ、自転車で20分ほどのところにあるスーパーがちょうど朝の時間帯を募集していたので早速申し込みました。

時給は当時で1000円ほどです。

申し込むとすぐに連絡が来て、面接のため呼ばれました。

 

ひさびさにしっかりと髭を剃り、髪を整えるとなんだか自分がまともな人間になった気がします。

長らく宅浪していると社会から隔絶されている感じがするのです。

 

浪人の話は素直に話し、面接はあっさり通りました。

本来であれば後日採用か不採用かな連絡をするそうですが、かなり私のことを気に入ってくれたようでその場で合格にしてくれました。

これで晴れて無職からフリーターもどきに昇格です。

 

それからしばらく経って、研修のため別の店舗に行きました。

その時の研修は私の他に若い女性が一人で、初日の研修は座学でした。

 

面接前にある程度会社については調べていたので退屈でしたが、時給が発生していたので真面目に聞いているふりはしておきました。

 

3時間ほど会社の概要やポリシーを聞いて、簡単な挨拶練習をしてその日は解散でした。

 

 

猛烈に辞めたくなる

研修を終え家に帰ってくると、久々の外出に疲れてすっかり眠りこけてしまいました。

 

ガッツリ睡眠をとり起きたのはその日の夕方です。

研修だけで1日が終わってしまいました。

 

目が覚めて、落ちかけた太陽を見ながらふと猛烈に思いました。

 

「バイトやめよう」

 

決算すると上司のいるはずの時間帯をねらってその日のうちにスーパーに突撃しました。

 

一度も一緒に働くことのなかった同僚に上司の所在を聞き、上司のもとに一直線に向かいました。

正直めちゃくちゃ怖かったですがなぜか興奮してアドレナリンどばどば出ていたので耐えられました。

 

上司と対面すると上司は嫌な知らせを感じ取ったのかとてつもなく苦そうな顔をしました。

一瞬告白することが躊躇われましたが、ここで言わなければしばらく言えないと思い思い切って言いました。

 

「ほんと申し訳ないんですが、辞めさせてください。」

 

上司は深いため息をつくと、私の分かり切ったハリボテの言い訳を一応聞いてくれました。

 

特に怒られることも引き止められることもなく、重々しい雰囲気の中で契約解消の手続きは進められていきました。

静かに書類を探す上司は一瞬で少しだけ老けたようでした。

 

その節はすいません。

 

対照的に私の心中は晴れ晴れしていました。

短い間でしたが私の心を拘束していた鎖から解き放たれ、自由の身になったかのようです。

そして同時に私が社会に向いていないなと痛切に感じました。

 

こうして清々しい気持ちになった私はそれからしばらくは勉強に集中することができました。

めでたしめでたし。

 

 

辞めて今思うこと

速攻で辞めてしまった私が言えることかば分かりませんが、受験中に無理して働く必要はないと思います。

 

もちろん金銭的な事情などがあり働かなければいけないという人は仕方がありません。

 

ですが、衣食住に事欠くレベルの貧困でなければ、浪人時代の時間は勉強に投資すべきです。

バイトして小銭を稼ぐくらいなら、今この大切な瞬間を勉強に全振りするべきなのです。

 

どんだけ一生懸命働いたところで浪人生のバイトでは1000円ちょいしかいきません。

だったら、この貴重な時間を勉強に投資し、未来に期待する方が得策じゃないでしょうか。

 

 

最後に、迷惑をかけた皆様本当にすいませんでした。

【本の紹介】マーシャ・ガッセン『完全なる証明』【感想・書評】

 オススメ度:★★★☆☆ 

ミレニアム問題であるポアンカレ予想を解いたロシア人の天才数学者ペレルマンにスポットライトをあてたフィクション作品。訳は『フェルマーの最終定理』で有名な青木薫氏。

ソ連の数学(教育)事情なども描かれていて、共産圏の雰囲気の一端も知れたのが興味深かったです。

 

この本をオススメしたい人

・数学や科学が好きな人
・ソ連における優秀な児童の教育が知りたい人

 

感想

数学者で天才というと、集団行動の苦手な変わったタイプの人を思い浮かべますが、ペレルマンはまさにこのタイプです。

 

社会主義であったソ連は教育に対しても平等を重んじていました。

そうした反個性的な環境の中で"特別"であったペレルマンは恩師たちに守られながら才能を開花させていきます。

 

「人生は自分で切り開いていくものだ」としばしば言われますが、天才の道はその才能に惚れ込んだ人々によって整備され、ペレルマンは数学だけに関心をもったまま、ひらかれた道を歩み続けます。

 

さすがにこのレベルの天才を見ると、人間が生まれながらにして平等というのはあまりに無理がある気がしてくるのです。

 

 

本棚を見て自分を知る

今年もブックオフでウルトラセールが開催されました。

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先月から欲しい本リストを作り、巡るブックオフを決め、とにかく楽しみで楽しみでしょうがありませんでした。

 

増税があったとはいえいまだに1冊100円以下で本が買えるというのは学生身分にはありがたい限りです。

ときには「ほんとにこの本100円でいいんですか!?」という本まで置いてあるので、ブックオフに行ったときには隅々まで確認するようにしています。貧乏性ですね。

 

いざブックオフで本を探していると、あの人さっき別のコーナーでも一緒だったなあと気になる人がいます。

話しかけたい衝動に襲われることもありますが、マナー違反な気なするので我慢します。

せめてフォロワーさんなあらなあ。

 

ちなみに今回の成果は以下の通り。

ジャレド・ダイアモンドの本の下が110円コーナーだったのは激熱でした。

この10冊で3700円くらいでした。すごい。

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#本棚晒す

ウルトラセールが開催され、読書垢界隈の人の本棚も充実したようで #本棚晒す がまた盛り上がりを見せています。

#本棚晒す とはその名の通り自分の家の本棚の写真を貼りつけてつかうハッシュタグで、膨大な蔵書を持つ人ほどいいねがつくようです。


 

本好きな人にとって本棚というのは不思議な魔力を感じるようで、人の家に行っても本棚をついつい見てしまうという人が多いようです。

 

私の友人の家で古典を見かけて「こやつ、やるな」と評価が上がったことがあります。

本棚は人を写しますね。

 

 

私の本棚は今のところ読んだ本が150冊くらい、積ん読100冊くらいで構成されています。

50冊位がハードカバーで、あとは文庫本か新書です。

 

#本棚に晒す に投稿するための写真を撮りながら、ふと自分の本棚と自分自身に乖離があるなと思いました。

 

というのは、私が普段読んでいる本が"私"に近いとすると、積まれている本は本来の自分からするといくらか高尚な気がするのです。

 

私の本棚は上の方が積ん読で、読むと下の段に移動させるように置いてあります。

積ん読の中央に目をやると、岩波文庫の作品が鎮座しています。

社会科学系は最近買ったものも多いですが、岩波の<赤>や<青>に分類される本の多くは1年もその場所から動いていないものばかりです。

言ってしまえばインテリアになってしまってる本です。

 

そんな長らく取り出されていない本棚の中央に放置された岩波文庫の本たちを見ていると、「結局自分はインテリ振りたいだけで、その本棚は矮小な自分の見栄にすぎない」と思うようになってきました。

 

 

本棚にいる理想の自分

一度は自分の自己顕示欲にガッカリもしましたが、考えてみればそんなに本棚に見せたい自分ばかりが並んでいるのも悪くないなという気がしました。

 

というのは、「自分でお金を出して本を読むつもりで買ったならば、それが結果的に自己顕示欲を満たすためであっても虚構ではないんじゃないか」と思えたからです。

別にヘブライ語の聖書を飾っているわけでもなければ、読めない字体の古事記を置いているわけでもありません。

 

むしろなりたい自分がある程度見えている分、自分にとってプラスである気さえします

 

 

人の本棚を見ると、その人の知らない一面を見ることができますが、同様に自分の本棚を眺めることで自分についてもう一度考えられるんじゃないでしょうか。