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【本の紹介】2019年の読んだ本ベスト10【ランキング】

2019年も早いもので、

あっという間に最終日になってしまいました。

今年は夏もそこまで暑くならず比較的過ごしやすい気候でしたね。

 

去年思うように本が読めなかった分、今年はたくさん読もうと思い時間を見つけては少しずつ読んできました。

 

僭越ながら今回は、私が今年読んだ本の中から良かったと思う10冊を紹介させていただきたいと思います!

 

2019年の読んだ本ベスト10

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 2019年に読んだ冊数はキリよく100冊でした!(前年比+55冊)

小説新書問わずいいと思ったものを10冊選んでランキング形式でまとめています。

 

第十位:『太陽の季節』

太陽の季節 (新潮文庫)

太陽の季節 (新潮文庫)

  • 作者:石原 慎太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1957/08/07
  • メディア: 文庫
 

 著者: 石原慎太郎

 

初めて読んだ芥川賞作品。著者は元都知事の石原慎太郎。

不良青年の厭世観と強い衝動が合わさってとても刺激的な作品でした。

若いうちに読んでよかったと思う作品のうちの一つです。

 

 

第九位:『国家の品格』

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

  • 作者:藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/20
  • メディア: 新書
 

 著者: 藤原正彦

 

2006年に大ヒットし、発行部数265万部を超えるミリオンセラーとなった数学者 藤原正彦の名著。

 

西洋的な合理論について懐疑的な見方をしています。

論理の起点となる前提が人間の“情緒”によって支えられていることに注目し、日本が再び高い情緒を身に付けることで「品格ある国家」を取り戻すことを強く主張しています。

 

伝統や愛といった非合理的なものを情緒というもので表す考え方に影響を受けました。

来年は2018年に出た『国家と教養』の方も読んでみたいです。

 

 

第八位:『反哲学入門』

反哲学入門 (新潮文庫)

反哲学入門 (新潮文庫)

  • 作者:木田 元
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫
 

 著者: 木田元

 

哲学者 木田元による哲学の入門書になっています。

反哲学とはソクラテス以降の超自然主義的「哲学」に対する、自然主義的な思想を「反哲学」のことを指しています。

 

内容は哲学史のようになっていて、哲学初心者でも分かりやすくとてもオススメです。

初めに一回読んでおいて、一通り古典を読んでからもう一度帰ってくるとより理解しやすくなると思います。

 

 

第七位:『何者』

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 著者: 朝井リョウ

 

就活を通して確立しきらないアイデンティティに悩む若者の姿をありありと描いています。

自分の心の一番奥のところが触られた感じがして読んでいてゾワッとした作品でした。

 

大学生に是非読んでほしい本です。

 

 

第六位:『あのころ』

あのころ (集英社文庫)

あのころ (集英社文庫)

  • 作者:さくら ももこ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/03/19
  • メディア: 文庫
 

 著者:さくらももこ

 

ちびまる子ちゃんで知られるさくらももこのエッセイです。

さくらももこの子供時代の話が、愉快な登場人物ともにコミカルに描かれています。

 

マンガかそれ以上にテンポよく読め、書籍でこんなに笑ったのは久しぶりでした。

面白い本部門があったらダントツの一位です。

 

 

第五位:『車輪の下』

車輪の下 (新潮文庫)

車輪の下 (新潮文庫)

 

 著者: ヘルマン・ヘッセ

 

周囲の重圧を受け、勉強漬けの生活を送り見事名門の神学校に入学したハンス少年。

まじめだったハンスだが友人との交流の中で自我が芽生え、ハンスは少しずつ変わっていきます。

 

「教育」とはなんなのか。「受験」とはなんのなのか。

考えさせられる一冊です。

 

 

第四位:『メモの魔力』

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

  • 作者:前田 裕二
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/12/24
  • メディア: 単行本
 

 著者: 前田裕二

 

2019年No.1ビジネス本とも呼び声が高い『メモの魔力』。

著者はSHOWROOM社長の前田裕二です。

 

成長するためのメモの取り方を体系化しまとめ、その意義についても存分に語られています。

“気付き”をどのようにして活かしていくかを学ぶことが出来ます。

 

 

第三位:『方法序説』

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

  • 作者:デカルト
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/07/16
  • メディア: 文庫
 

 著者: ルネ・デカルト

 

第三位は古典からセレクト。

「近代哲学の祖」と呼ばれる哲学者・数学者のルネ・デカルトによって書かれた、真理に至る方法が示された本になっています。

 

かの有名な「コギト・エルゴ・スム(われ思う、ゆえにわれあり)」もこの本からの出展です。

その他にも人間理性(良識)や機械論的自然観など当時としては革新的な考え方がふんだんに盛り込まれています。

 

ページ数も少なく古典にしては文も平易で読みやすいので、社会科学系の古典を読み進めようとしている人はこの本から始めることをオススメします!

 

 

第二位:『経済はナショナリズムで動く』

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 著者: 中野剛志

 

あらゆる経済政策はナショナリズムに基づいていることを示した本。

国家、近代的個人の成り立ちから、いかにして経済ナショナリズムが生まれていくのかを構造的に説明しています。

 

安直な右寄りだ左寄りだという議論から離れて、もっと広い視野で世界経済を見ることが出来るようになりました。

この本を読むことで、新聞がぐっと面白くなります!

 

 

第一位:『ノルウェイの森』

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 著者:村上春樹

 

順位をつけるにあたっていろいろと悩みましたが、

2019年読んだ本の中での一位は、

『ノルウェイの森』に決定いたしました!!

 

ストーリーは僕が幼馴染の元カノの直子、大学の後輩の緑という2人の女性の間で複雑に揺れ動く気持ちに悩み苦しみ、生きる道を見つけていくというものです。

 

ハッピーエンドの見えない状況の中で正しさを求めて生きる姿に心動かされました。

特に最後の方に出てきた緑からの手紙を読むと、今でも心臓をがっしりとつかまれたような気持になります。

 

この本を読んで自分の中にあった「正しさ」みたいなものがただの理想でしかなくて、そんなもの本当は何の役にも立たないんじゃないかという気がしてくるようになりました。

 

 

***

 

以上が今年読んだ本ベスト10になります。

今年はたくさんの素敵な本に出会えて本当に幸せでした。

 

来年も素敵な本と出会えることを祈って、年を越したいと思います。

 

 

 

マクドナルドを乗っ取った男の話『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』【映画の紹介】

オススメ度:★★★☆☆

今では毎日全人類の1%が食べているというマクドナルド。

その歴史はまさに弱肉強食、アメリカ資本主義を体現するかのようです。

そして片田舎の人気ハンバーガーショップに過ぎなかったマクドナルドが最強のチェーン店に成長したのは、一人の野心にまみれた男の存在があったからでした。

 

この『ファウンダー』はレイが怪物的な執念でマクドナルドを奪い去るまでの話です。

 

『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』

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あらすじ

主人公のレイ・クロックはアイデアマンで起業家。

仕事を色々と変えながら今はミキサーを売っている。

 

なかなかうだつの上がらない日々を過ごしていたが、ある時ハンバーガーショップから6台もの注文が入った。

気になったレイがそのハンバーガーショップを訪れてみると、そこは凄まじい回転率で人気店となっていたマクドナルドだった。

 

*****

 

マクドナルドはマクドナルド兄弟が経営しているハンバーガーショップ。もともとは映画館を経営していたが29年の不況で撤退。飲食の道に入った。

40年にはドライブインブームに乗りBBQ店を開業。最初は上手くいっていたが経費の高さから次第に横這いに。そこから徹底的に無駄の見直しを行い、30秒で提供するハンバーガーショップを作り上げた。

 

*****

 

マクドナルドの革新的なシステムに感動したレイは大規模なフランチャイズ化を打診。見事口説き落とし、マクドナルドは急拡大。

 

資金が底をつきかけてきた頃、レイは知り合ったハリーという財務コンサルタントの助言で土地のリース業務を始める。

財政難を乗り越えたマクドナルドはさらなる成長に成功。

一方でレイの身勝手なやり方にマクドナルド兄弟との関係は完全に崩壊。家庭も崩壊し冷え切った食卓で妻に離婚を告げた。

 

*****

 

レイは決裂したマクドナルド兄弟から全権を買収し、完全にマクドナルドを手中に収める。

その後マクドナルドはさらなる隆盛を極めていく。

 

 

マクドナルドのシステム

マクドナルドはその名前の通り、マクドナルド兄弟によってカルフォルニアの片田舎で創業されました。

マクドナルドが人気店となった所以は、なんといってもそのシステムです。

 

兄弟が1号店を出すにあたり、厨房の配置をテニスコートに実寸大で書き出して効率性の見直しをはかるのですが、その時のセリフからもシステム構築の徹底ぶりが伺えます。

 

弟「まだ改善の余地が」

兄「どこに?」

弟「全部だ」

 

極限まで考え抜かれたシステムによりマクドナルドは人気店となります。

そしてそんな彼らのもとに"一匹のオオカミ"が迷い込みます。

 

 

レイ・クロックという男

この映画をみた人の多くが、このレイ・クロックという男を嫌いになるのではないでしょうか?

 

欲しいもののためなら嘘は当たり前。

目的のためなら手段を選ばない姿勢に人情や謙虚さを大切にする人からすれば受け入れがたい存在です。

 

そんな彼が全てを手に入れることができたのは、誰にも負けない"執念"をもっていたからです。

 

アメリカ資本主義は究極の弱肉強食です。

門地や伝統よりも、強いものが全てを奪い去っていきます。

アメリカ資本主義のなかでは安住することはできません。

常にライバルや新規参入組との争いに勝っていかなくてはなりません。

 

そして勝つことができるのは必ず勝つ気概のあるもの、執念を持っている人だけなのです。

 

 

レイは初めてマクドナルドを訪れた日からマクドナルドを必ず手に入れると決めていたそうです。

 

そしてマクドナルドにミキサーを売り込んでから7年、レイが還暦目前の年にマクドナルドの全てを手に入れました。

 

 

この映画をみて、自分には何かを必ず手に入れてやるという意思が弱いことに気が付きました。

人生で何かを手に入れようと思った時、執念をどこまで見せられるかが結果の違いを生むのだと思いました。

水野敬也『LOVE理論』はモテたい人の最終兵器【本の紹介】 

オススメ度:★★★★☆

男性のみなさま、人生でモテたいと思ったことはありますか??

この本では読む人によっては怒ってしまうような、身も蓋もないモテ理論が惜しげもなく語られています。

終始痛快な語り口で、読み物としても十分面白いです。

 

どんな本?

本書は多くの恋愛理論書を読みあさって実行してきた小説家・水野敬也の実体験に基づく恋愛理論書です。

 

男性脳にありがたいことに全て理論ごとに章立てされていて、章の最後にはまとめがついています。

時には師のような、時に自虐を交えながら今まで社会で語ることをタブーとされてきた恋愛に関する真実をこれでもかというくらい明らかにしています。

 

 

具体的なモテ理論

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では実際にどんな理論があるのでしょうか。

数多く紹介されている恋愛理論のうち、私が特に面白いと思った理論を2つ紹介したいと思います。

 

1.うわっつらkindness理論

まずは風変りの名前のこの理論から紹介します。

うわっつらkindness理論とは、女性の求める優しさとは(本質的でなくとも)見えるうわっつらの優しさだというものです。

 

 これは自分のことを優しい人間だと思ってきた男性にとってはショックじゃないでしょうか。

なんで自分はこんなに彼女のことを思っているのにあんなうわべだけの男に負けてしまうのか、その答えがこの理論の中にあります。

 

女性の考える優しさとは行動で示される見える優しさのことで、具体的には

・車道側を歩く
・足元が危ないときに手を差し伸べる
・「大丈夫?」「お腹空いてない?」と何度も聞く
・「綺麗だね」を連発する

のような行動を指します。

 

ほんとにこのなのでいいの!?と普段やり慣れていない人は思ってしまうかもれしませんが、実際に多くの女性が喜ぶのはこういった分かりやすい行動なのです。

 

本では他にも数ページにわたる具体例が紹介されていたので、自分でこういったことが気付きにくいなと思う人は目を通してみるといいかもしれませんね。

 

2.BTO理論

これが一番身も蓋もなくて笑ってしまった理論です。

BTOとはおそらく昔流行ったドラマのGTOにかかっていて、本家では「グレイト・ティーチャー・オニヅカ」ですが、BTOは

ブサイク・ティーチャー・オノ

 だそうです。もう笑う。

 

このオノと言う人は水野氏が泣く泣く童貞をささげた相手だそうです。

ここら辺のくだりは傑作なので実際に本を読んでみてほしいのですが、とにかく悲壮感にあふれてたまりませんでした。

 

この理論は理想を高く持ってしまっていたり勇気が出ずにたじろいでいる童貞に対して、「まずはとにかく捨ててこい、恋愛はそれからだ」という強いメッセージを発信しています。

 

 

感想

同じ水野敬也の『夢をかなえるゾウ』も面白かったですが、この本も読み物としてとても面白かったです。

ひとつひとつの言葉のセンスが秀逸で、ページをめくる手が止まりませんでした。

 

書いてあることは冷静になって読んでみるとどれここれもろくでもないのですが、実際に彼女をつくるということに関していえばこれ以上はない内容になっていると思います。 

 

この本で終始主張されているのは、行動せよ、失敗せよという点です。

恋愛は行動したもの勝ちです。

とにかく行動してたくさん失敗して自分なりの答えを見つけていきましょう。

 

理論のなかで恋愛関係なく、なるほどと思ったのはハマちゃん理論の一節にあった「空気とは、その場を支配するキーマンの気分」というところです。

日本人のふんわりとした"空気"という文化を本質的にとらえられているとおもいました。

 

これ以外にも恋愛以外に活かせる理論が数多く紹介されていて、恋愛理論に興味がないひとにもお勧めの一冊になっています。

 

 

 

水野敬也に興味を持った人はこちらも合わせてどうぞ

www.artbook2020.com

 

【本の紹介】松原隆彦『文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る』

オススメ度:★★★★☆

小さい頃、毎週欠かさずドラえもんを見るのが日課でした。

ドラえもんの人気の秘訣は、魔法じゃなくて科学だからじゃないでしょうか?魔法にはない科学の「いつか本当に出来るかも」という期待が、私たちを引きつけます。

 

どんな本か?

本のタイトルにもなっている通り、身の回りの現象や宇宙の話が文系にもわかるよう数式を用いず簡単に解説されています。

序盤は株価や雲の話など身近な話が続きますが、後半は量子論の話が大半を占めています。

 

この手の本にありがちな世間で知られている現象の網羅本ではなく、特殊相対性理論と一般相対性理論の違いなど、一見するととっつきにくい専門的な内容までもを分かりやすく解説してくれている。

 

 

面白かった話4つ

①携帯電話の波長は10cm〜100cmほどあり長いため、障害物を避ける(回折)することができる。

 

②「超ひも理論」が注目されているのは、物理学の4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)を統一的に説明できる可能性が生まれるから。

しかし有効な実験方法が見つかっていないため、仮説のままとなっている。

 

③月の重力のおかげで地球の地軸の傾きは安定している。

 

④ある物理学者によれば、量子コンピューターの計算速度が速いのは多世界を使って計算しているからであり、量子コンピューターができれば多世界の存在の証明になるという。

 

感想

本の雰囲気から内容は薄いだろうと期待していなかったのですが、読みやすいながらも知らないことが多く(特に量子論)楽しめました。

量子論の話は十分に理解しきれないところもありましたが、確率の波の話はとても興味深く是非とも勉強してみたいと思います。

 

もう一つ感心したのが物理学と哲学の関係です。

ブラックホールの名付け親でもある物理学者が「人間が宇宙を観測したから、この宇宙が存在できるようになった」と主張しているというのをこの本で読んで、畢竟学問というのは突き詰めれば哲学なんだなと感じました。

 

 

政府がお金を上手にばらまく方法【経済の話】

消費増税が行われてから3ヶ月が経とうとしています。

みなさんの懐具合はいかがでしょうか?

 

政府は消費の冷え込み対策として、キャッシュレス決済時にポイント還元を実施し、19年度予算・補正予算合わせて4300億円を投じました。

街の店を見渡してみると、かなり多くの店舗でポイント還元が受けられ、政策が広く行き渡っていることがわかります。(地方の方はあまり行かないのですがいかがでしょうか?)

 

この政策はキャッシュレス決済の促進に一役買ったと思います。

PayPayに限って見ても8月7日時点での登録者1000万人から、わずか100日ほどでさらに1000万人増えるという驚異の普及をみせています。

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参照:https://about.paypay.ne.jp/pr/20191118/02/

 

この政策はとても良いと思ったのですが、

もっと効果的にお金をばらまくことができるのではないか?というのが私の意見で、今回のお話になります。

 

お金を上手にばらまく方法

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私が提案する政策は、インフレ目標が達成されるまで、一括補助金として全国民に一定額(有効期限付き)を電子マネーでばらまくというものです。

 

この政策では以下の4つの効果が期待できると考えています。

・電子決済が進む
・オンラインサービスの成長
・物価上昇への期待を促す
・マイナンバーの活用が進む

それでは一つずつ解説していきます。

 

 

電子決済が進む

まず第一に電子決済が今以上に普及するようになります。

 

キャッシュレス決済時のポイント還元によって今までキャッシュレス決済を使っていなかった層にもサービスが浸透してきましたが、まだまだ機械に疎い人や現金至上主義の人々まで光が届いていないのが現実です。

 

なにより慣れていない人にとってキャッシュレスサービスの登録はめんどくさいものでしかありません。

人間は私たちが思う以上にめんどくさがりです。

検索するのですら手間でしかありません。

 

そういった人々をナッジ(強制することなく行動を促すこと)してやるためには、エネルギーを与えてやる必要があります。

 

ばらまきは、めんどくさがり屋に対し登録のインセンティブを与えてやることに繋がります。

さらに有効期限を設けることで、より強いナッジを与えることができるのです。

 

 

オンラインサービスが成長する

この政策に対する批判として、機械に疎い高齢者が置いてけぼりになるのではないか?というものが考えられます。

 

この批判はまさにその通りで、補助金を受け取れぬまま受け取り期限が切れてしまう高齢者が多数生まれてしまうと思います。

デジタルデバイド(情報格差)の面で不公平が生じることは、この政策の大きな弱点であります。

 

しかし、この政策ではこの弱点をあえて残すことで、社会全体でより良い効果を狙っていきます

 

 

日本でオンラインサービスが成熟しきらない原因の一つには、高齢者が主たる消費者であるという現実があると考えます。

2018年のデータでは国内消費のおよそ半分が、60歳以上の高齢者によって占められています。(29歳以下はたったの1.5%)

 

消費の半分を占める高齢者、一方端数程度の消費量の若者。

あなたが経営者なら、どちらに向けて商品をつくりますか?

 

消費の中心が高齢者であるとき、当然ながら世の中には高齢者向けのモノやサービスが増えることになります。

高齢者向けに商品を展開するとなると、目新しかったり革新的であるものより分かりやすく昔からあるものが中心となります。

 

高齢者の顔色を伺って商売をしていれば、いつまで経っても日本のIT分野が伸びきらないのもうなずけますよね。

 

話を政策に戻します。

始めに話した通り、この政策ではキャッシュレス決済を使える人だけが恩恵を受けることができます。

すなわち、新しいサービスを受け入れられる人(主に若者)のもとに購買力を直接与えることができるのです。

 

国内の消費力の構造が変化すれば、売る側の姿勢も変わってきます。

今まで高齢者をメインターゲットにしていた企業が、設備投資を行いオンラインサービスに力を入れるようになります。

 

この政策により消費の中心となる層を若返らせ、企業には設備投資を促し、結果としてオンラインサービスを成長させることが期待されるのです。

 

 

物価上昇への期待が起こる

安倍政権はかねてより、長きにわたるデフレの脱却を目指し異次元の金融緩和を進めてきました。

その甲斐あってか2017年からは3年連続で物価の上昇を記録しています。

 

しかし上昇してるとはいえその上昇率は1%未満であり、目標である2%には及ばないのが現実です。

 

消費者であるわれわれからすると物価は上昇しないほうがありがたいですよね?

そもそもなぜ政府は物価の上昇を目指すのでしょうか。

その理由を2つ解説したいと思います。

 

①デフレスパイラルに陥る

まず一つ目は、デフレ下においては消費が冷え込むというデメリットがあります。物価が下がるということは企業の儲けが減ってしまうことに繋がります。儲けが減った企業は社員の給料を減らすか、悪いときにはリストラをします。

社員というのは私たちのことであり、つまるところの消費者であるので、デフレは結果として消費の減少につながってしまいます。

これをデフレスパイラルと言います。

 

②国の借金が増える

これはあまりピンとこないかもしれません。

しかし経済学の基本理論であり、重要なポイントでもあります。

 

この部分を理解するのに最大のポイントは、物価の変動によってお金の価値が相対的に変化することにあります。

 

1万円には1万円分の価値がありますね。

しかし物価が変動すれば、1万円で買えるものの量は変わってしまいます。

 

今では50円ぽっちではほとんど何も買えませんが、1941年ごろの日本では教師の初任給が50円だったと言われています。今の感覚では考えられない水準です。

 

なぜこんなことが起こるかといえば1941年当時から物価が大幅に上昇したからです。

物価が上昇すれば、相対的にお金の価値は下がります。

 

すなわち、インフレによってお金の価値が下がり、デフレによってお金の価値が上がるわけです。

 

借金の話に戻すと、デフレが起こった場合には借金が相対的に増えてしまうことになります。

そうすると、現在1100兆円もの借金を抱える日本にとってデフレはとんでもない痛手になるわけです。

また実質金利も物価が下がった場合上昇してしまいます。

 

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こうした理由から、政府はできるだけデフレを抑えインフレに誘導しようとします。

 

では、どうすればインフレが起こるのでしょうか?

 

インフレを起こす上で重要なのは、国民がこれから物価が上がるだろうと予想することです。

 

その仕組みは、まず物価が上がるとすると企業の利益が増えます。企業が儲かるようになれば社員の給料が上がると予想されます。給料が上がれば、需要も上がります。需要が増えると、物価も上がるのです。

 

つまり、物価が上がると人々が予想することで、本当に物価が上がると経済学では考えます。

 

 

政策について再び考えていきましょう。

私が提案した政策は、インフレ目標が達成されるまで、一括補助金として全国民に一定額(有効期限付き)を電子マネーでばらまくというものでした。

 

ここでのポイントは、インフレ目標が達成されるまで金をばらまき続けるというところにあります。

 

金が直接ばらまかれている状況は、給料が増えている状況と同じです。給料が増えれば、需要(購買力)は増加すると考えられます。(考えられるということが大切なのです。)需要が増えると予想することは物価上昇への期待が膨らむということになります。

 

こうして膨らんだ物価上昇への期待によって、本当に物価が上昇すると考えられるのです。

 

まとめると、ばらまき→実質所得の増加→需要の増加→物価の上昇ということになります。

 

 

マイナンバーの活用が進む

この政策の難関は、導入するのに技術と管理コストを要するという点です。

私も国が一括して個人のデータを上手く操作し管理する能力を持っているとは到底思えません。

 

だからこそ、これを機に本腰を上げて個人データを効率よく管理する手段を構築すべきではないでしょうか。

この政策はマイナンバーを価値あるものにする大きなチャンスになると思います。

 

ここでスムーズにマイナンバーと補助金の交付を結びつけ不祥事なく管理することができれば、国のデータ管理の信用が一気に上がるはずです。

 

マイナンバーがうまく普及させられれば国の税収も増え、全体にいい効果をもたらすでしょう。

 

 

まとめ

以上が私が提案した政策、インフレ目標が達成されるまで、一括補助金として全国民に一定額(有効期限付き)を電子マネーでばらまくというものの解説でした。

改めてまとめますとこの政策よって、

①キャッシュレス決済導入に対して強いインセンティブを起こすことによって電子決済がより普及する。
②若者の購買力が上がりオンラインサービスが成長する。
③実質所得の向上によって物価が上昇する。
④国のデータ管理システムが更新されマイナンバーにも意味が与えられなおす。

というのが私の考えです。

正確なデータやモデルに基づいたわけでもなく、あくまで私の拙い知識の中で生まれた一意見です。

未完成ではありますが、もし経済を考える上で参考にしてくだされば幸いです。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

【本の紹介】村上春樹『スプートニクの恋人』【あらすじ・感想】

オススメ度:★★★★☆

自分が自分じゃない、あるいは自分が完全でない感じることありますよね。この欠けた気持ちを埋めようとするのが恋愛なのでしょうか。

 

あらすじ

「つまりね、記号と象徴のちがいってなあに?」(p.44)

 22歳の春にすみれは生まれて初めて恋をした。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。そしてぼくもまた、初めからすみれに恋をしていた。

 

すみれが恋したのはミュウという17歳年上の既婚女性だった。性欲さえ知らなかったすみれだったが、ミュウと出会いともに行動をしていく中で彼女の中のいろいろなものが開花していく。

8月のある日、すみれはミュウの仕事に同行しギリシアの小島に訪れていた。しかし何日か経ったある朝、すみれは姿を消してしまう。まるでこの世界からすっかりいなくなってしまったように。ぼくも日本から飛んでいき一生懸命探すが気配すら見つからない。すみれはどこへ消えていまったのか。

 

心の内面と外面、あちらの世界とこちらの世界の境界線が溶けてしまうような不思議なラブストーリー。

 

 

感想

 なんとなく村上春樹の恋愛小説が読みたくなって、積読の中から引っ張り出してきました。はじめは期待していた恋愛小説とはずれていて失敗したかなと心配しましたが、読んでいるうちに村上春樹の小さな世界に引き込まれていきました。

 

舞台は普通のこの世界であるはずなのに、小説で展開される世界は閉じられていて、現実世界からは独立した世界であるかのような印象を受けます。どこかのサラリーマンがいつもと同じように出勤し働き疲弊している横で、村上春樹の全く時間の進み方の違う空間があるようで、読んでいるとふんわりと浮いているような気分になってきます。私はこの感覚がたまらなく好きになりました。

 

"元気だよ、春先のモルダウ川みたいに"(p.48)や"あなたはときどきものすごくゆさしくなれるのね、クリスマスと夏休みと生まれたての仔犬が一緒になったみたいに"(p.80)のような村上春樹独特の表現もとても気に入りました。

 

 

www.artbook2020.com

 

 

【本の紹介】デイル・ドーテン『仕事は楽しいかね?』【あらすじ・要約】

オススメ度:★★☆☆☆ 

アメリカで大人気のコラムニストが書いたビジネスマン向けの自己啓発本です。いい事は書いてあるのですが、内容の薄さは否めなかったので★2にしました。

 

この本をオススメしたい人

・単調な仕事に辟易している人

 

あらすじ

吹雪で閉鎖された空港で、私は一人の老人と出会った。老人は矢継ぎ早に私にプライベートな質問し、適当に答えていると彼は「仕事は楽しいかね?」と聞いた。

私はつい自分のキャリアや仕事に関する愚痴を老人にぶちまけます。目を輝かせて話を聞くその老人は、実は有名な発明家であった。

 

私は老人との対話の中で、仕事をしていく上で本当に大切なものに気づかされていきます。

 

 

老人が伝えたかった事とは【要約】

老人が多くの例を挙げながら言わんとしていたのは、「完璧など存在しない」「絶えず試行錯誤を繰り返し、常に自分を更新していく事」です。

 

章題を見ていくと、

3. 試してみることに失敗はない
8.君たちの事業は、試してみた結果失敗に終わったんじゃない。試すこと自体が欠落していたんだ。 
14. きみが「試すこと」に喜びを見出してくれるといいな
と、一貫して試すことを重要視していることがわかります。あらゆる状況は改善する余地があり、常に試し変えていくことで現状を打破できるのです。

 

 

感想

ストーリー仕立てで読みやすく内容も分かりやすいのです。ただ、聞き手である「私」に気付かせようとやや周りくどい説明になっているので、全体的に冗長な印象を受けました。

言っていることはもっともで、読むのに時間もそんなにかからないので気になる人は一度読んでもいいかもしれません。